ビールを飲みながら考えてみた…

日常の中でふっと感じたことを、テーマもなく、つれづれなるままに断片を切り取っていく作業です。

NTTとソフトバンクが打ち出した海外戦略の違い

2012年11月23日 | ネットワーク
3連休で時間ができたので、ソフトバンクの2013年3月期 第2四半期の決算資料を眺めて見る。まぁ、相変わらず、ウソか誠か、実感としてどうなのか、データ引用の仕方が上手いだけなのか、そのあたりの見極めが難しいわけだけど、あまりにもシンプル過ぎるこの回答は凄い。(言い訳ができるように)回りくどい言い方ばかりのNTTと比べると、どうせ張るならこっちだよね、となってしまう。

今日、確認したかったのはそんなプレゼン方法ではなくて、NTTとソフトバンクの次の戦略について。

特にソフトバンクについては、米携帯キャリアであるSprintの買収の話があり、その海外展開についても注目が集まった。「契約者数でDoCoMoを抜いた!」(そりゃそうだ…)と勢いよく語られたりしたものの、業界関係者の間では疑問符がつく意見も多い。と、同時に守勢に立たされているNTTだけれど、同じく2013年3月期 第2四半期決算では「新たなステージをめざして」ということで、海外戦略をはじめとした今後の戦略について語られている。この両者、日本の通信事業を担っているにも関わらず、全く違う観点から海外戦略を考えている。

まずソフトバンクの場合、これまでも上位レイヤー部分ではアジアのサービサーと提携や出資を進めていたのだけれど、何と言っても「Sprint」の買収が最も注目される戦略。決算資料から読み解くと、アメリカは移民などもあってこれからも人口増加が見込め(2050年:3.1億→4.0億人へ)、国内市場も拡大する(名目GDP、2050年:15.1兆ドル→38.3兆ドル)。さらにはLTE画普及しているモバイル先進国である、と。で、何故、Sprintかというところはあまり説明になっていない(笑)んだけれど、要はvodafoneの6倍も収益を上げられるようにした実績があるから大丈夫、ということになっている。

これをあえて経営戦略的に見直すならば、モバイル先進国で今後も拡大していく市場があり、日本で培ったモバイル通信事業を立て直すノウハウを活用することで、アメリカ市場でのモバイル通信事業を拡大していくということになる。つまりKFS(KeyFactor of Success)は「事業再建能力」であり、だからこそ不振の通信事業者を買収したのだ、と。

これに対してNTTが進めている海外戦略はどうか。

NTTが打ち出した戦略の柱は2つ。1つは「『グローバル・クラウドサービス』を事業の基軸に」するということともう1つは、「ネットワークサービスの競争力を徹底的に強化」するということ。ここで注目されるのは「クラウド」には「グローバル」がつき、「ネットワーク」にはついていないことだろう。

実際、国内での通信事業者の事業環境は似たりよったりだ。人口減少、少子高齢化、国内産業の空洞化…どれをとっても国内インフラ産業にとっては明るい未来はない。とはいえ、通信事業は各国の国策とも絡む問題であり、海外に進出するといってもそう簡単に出来るものでもない。

つまりNTTが打ち出しているのは、様々な規制や通信事業者間のしがらみにとらわれる「通信インフラ」の部分での海外進出ではなく、規制の少ない「データセンター」や「クラウド」といった部分について、海外を含めた成長エンジンにしていこうということだろう。

特に今後、クラウド上にサービスが集約されていくことになれば、事実上インターネットが「インフラ」となり、フレッツやXi、企業のVPNは「土管」となる可能性が高い。ましてインターネットを通じて提供されるクラウドサービスが、各レイヤー毎にモジュール化されたサービスの組み合わせで提供されるのだとすれば、集約効果が高く、規模のメリットが働きやすい「データセンター」「IaaS」「PaaS」「セキュリティ」といった基盤を中心に世界標準を目指そうということなのだろう。

NTTにはNTTデータやNTTコミュニケーションズといった事業会社があるとはいえ、この領域について必ずしも長けているとはいえない。オペレーション能力だけならコンピューターメーカー系のクラウドもあるだろうし、何よりもGoogleやAmazonが競合となる。まぁ、それでM&Aを進めていくということなのだろうが、果たして上手くいくのか…

国内通信市場の限界が見えつつある中で、1番勢いのあるソフトバンクは同じ事業の「横展開」を目指し、1番シェアを抑えているNTTが「縦」に事業領域を拡大することで世界展開を目指そうとする。各社の戦略が大きく違うところに、突破口の見えなさが感じられる。


SOFTBANK 2013年3月期 第2四半期 決算説明会
NTT:新たなステージを目指して

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