文理両道

専門は電気工学。経営学、経済学、内部監査等にも詳しい。
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書評:もしも、あなたが「最高責任者」ならばどうするか?Vol.1

2015-11-26 11:42:00 | 書評:ビジネス
もしも、あなたが「最高責任者」ならばどうするか?Vol.1(大前研一監修/シリーズ総集編) (ビジネス・ブレークスルー大学出版(NextPublishing))
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 ビジネス・ブレークスルー大学で毎週ケーススタディとして出された事例を集めた、「もしも、あなたが「最高責任者」ならばどうするか?Vol.1」(ビジネス・ブレークスルー大学総合研究所編著:ビジネス・ブレークスルー大学出版)。

 本書は、経営上の課題を抱えた企業等を取り上げ、もし自分が最高責任者だったとしたら、どのように舵取りをしていくかを考えてみようというもの。収められているのは8つの事例。それぞれ、その企業等の強み、弱み、取り巻く環境等を分析して、そこから導かれる今後の事業展開例を示している。

 「はじめに」で学長の大前研一さんも述べているように、本書は、「正解」を覚えるようなものではないということは、いくら強調しても足らないだろう。最近は、塾などの影響か、なんでも人に「正解」を教えてもらうのが当たり前だと考えている人間が多いように思える。しかし、ビジネスの世界では、「正解」などあるはずもなく、実に様々なものが、戦略オプションとして考えられるのだ。合理的にやったからといっても成功する保証はなく、エイヤーでやってもうまくいくこともあるのだから、経営というのは実に難しい。しかし、最高責任者というのは、逃げることは許されず、自分の責任で、経営判断を行わなくてはならないのだ。

 そうはいっても、KKDでやるよりは、きちんと経営環境を分析して、戦略を立てた方が、成功する確率は高くなるだろう。だから、このような本により、どうやって戦略を立てるやり方を学ぶことは大切なのである。しかし、立てる戦略には、絶対に成功するというようなものは存在しない。本書には、一応の戦略案は示されてはいるが、これは、公開されているデータから導かれた、あくまでも一つの試案なのである。また、中に入らないと見えないようなことも、実は結構あるものなので、仮にこれらの試案を採用するにしても、どの程度有効かどうかについても、更なる検証が必要だろう。

 だから、本書の存在価値は、事業戦略を立てるためのフレームワークを提供してくれることと、そのために必要なデータは、どのようなものを調べれば良いのかといったことを教えてくれるというようなところにある。

 本書に示された事例はそれぞれ独立しているので、頭から読んでいく必要はないだろう。自分が気になる企業や自分の属している業界の企業などを先に読めば、一層の興味を持って読めるのではないかと思う。しかし、他業種から得られることもあるだろうから、一応は全部に目を通して、考えてみることをお勧めしたい。

 そのうえで、向学心の強い仲間とのディスカッションをしたり、自社について、同じような分析を行ってみたりすれば、あなたのビジネスマンとしても力量は格段に伸びるに違いない。大切なのは、覚えるより、自分でやってみて、考えることだ。もう一度繰り返すが、本書は「正解」を覚えるためのものではない。あくまでも、どのように考えていくかという、思考をガイドするための手引書なのである。

☆☆☆☆

※本記事は、書評専門の拙ブログ、「風竜胆の書評」に掲載したものです。

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