1945年8月6日、広島はまさに地獄絵図だった。著者は、大阪生まれだが、生後まもなく広島に転居し、そこで被爆した。著者は被爆前から気管支に持病を持っていたようで、被爆から8年後に、気管支の手術中に亡くなっている。
最近、ロシアが核を使うとほのめかしたことが話題になっているようだが、もし万が一核が使われたら、地獄が再び訪れることになるだろう。核使用は、明確な戦争犯罪である。判断能力のある人に対しては屁理屈はつけられるかもしれないが、核は無差別に民間人の命を奪う。赤ん坊や幼児の命を奪ったことは、どう言いつくろったにしても犯罪としか言いようがないだろう。
本書を読めば、原爆の悲惨さが想像できるだろう。なにしろ著者はその目で見ているのだ。それは、著者の思想的な背景とは何の関係もない。すでに戦後80年近くたち、その当時の記憶を持っている人も多くは鬼籍に入ってしまった。核兵器を使うと脅かしている人間でさえも、実際に使われたらどうなるかを体験したことはない。もう少したったら、私たちは、このような作品を読んで、核兵器の悲惨さを想像するしかなくなる。もし核兵器が使われたらどうなるか。私達は、ずっと訴え続けないといけないのだろう。
☆☆☆☆