文理両道

専門は電気工学。経営学、経済学、内部監査等にも詳しい。
90以上の資格試験に合格。
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書評:猫のように生きる

2013-03-31 08:39:21 | 書評:その他
 なんでも自分の思ったように人が行動しないと気にくわない。自分の基準で、物事を測り、それと合わない場合には、爆発してしまう。そんな人間は意外に多いのではないだろうか。世の中は、お釈迦様の昔から四苦八苦。思うようにいかないのが当然だ。自分の基準が絶対だという、自分中心の考えから抜け出せない限り、悩みも煩悩もどんどん積もっていくばかりだろう。

 なぜ、人は自分中心の考えから抜け出せないのか。それは、物事に対して執着があるからだろう。何事にも囚われず、天地の間を自由に生きる。そんなことができたらいいだろうなあと思わないだろうか。なかなか難しい生き方なのだが、禅とは、そのような境地を目指すものだと思う。「猫のように生きる」(二玄社)は、元曹洞宗官長、元大本山總持寺管首の板橋興宗さんが、自らの修行人生、寺での生活や生き方の指南などについて語ったものだ。これを読んで、ただちに、禅の達人になれる訳ではないが、板橋さんの言葉には、自由に生きるためのヒントが多く詰まっている。

 板橋さんは昭和2年生まれ。海軍兵学校から東北大学に進み、卒業後禅門に入る。その後宗派の中で頂点まで上り詰めた人なのに、いわゆる抹香臭さは感じられない。言われることも、なかなかお茶目だ。「どうして結婚したのか」という問いには、<がまんできなかったの>(←何を!?)と答え、「長いお経を覚えるのは大変そうです」ということに対しては、<私はまだひとつも暗記していないのです>と言われる。しかし、それこそが禅の本質なんだろう。

 ああしなくてはいけない。こうでなければいけない。そういった考えは、周囲と軋轢を生み、悩みや苦しみを生みだす。誰のせいでもない。自分の心のせいだ。そんな考えは、禅の思想とは対極を成す。<仏に逢うては仏を殺し、祖に逢うては祖を殺せ>とは「無門関」に記された言葉だ。それがたとえ仏や祖師の言葉でも、そんなものに囚われずに、死と生との境も超えて、自然のままに自由に生きる。そんな生き方をしてみたいものだ。板橋さんは、<悩みはないねえ><悩みってどんなものなのかも、もう忘れちゃったね>とのことである。本書を読めば、そんな境地の入り口なりと辿りつけるかもしれない。

※本記事は、「本の宇宙」に掲載したものの写しです。(書影もそちらに)


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