見つけてきた初版本の(文庫だけれど)題名が気に入って、というか気になって。
ミステリといえるようないえないような、面白い、じんわりと怖い、という短編集だった。
「陰のある短編集」にしたそうだ。
マスカット・グリーン
馴染んだ夫婦におせっかい女が噂を耳に入れる。そういえば夫は理由をつけて新しい万年筆なんかを持っている。夫婦の間はちょっとしたことで揺れる。
腹中の恐怖
お母さんは息子の様子がおかしいと気がつく。女の写真を隠し撮りして溜めていた。息子に聞くと好きなだけだという。その彼女が結婚して妊娠した。息子は異常に喜んで機嫌がいい。
微塵隠れのあっこちゃん
ものにすっぽり埋まって遊ぶのが好きだった。子供の頃は弟に落ち葉で埋めてもらった。あつ子はデザイン事務所に勤めている、代理店の嫌な奴はクライアントが満足すれば自分の手柄、まずいと現場のせいにする。あれこれあって、ええい微塵隠れだ。という話。余談が面白い。
三つ、惚れられ
社内の人間関係は思わない展開をする。あっけらかんに見せて底意地の悪い女もいる。
よいしょ、よいしょ
以前、ちょっとした物を書いて賞をもらったことがある。そのときの雑誌が出てきたが詳しいプロフィールが載っていた。今頃になってそれが仇になった。息子に絡む意外な展開。
元気でいてよ、R2-D2
喫茶店で友達相手にしゃべる女、話題は四方に広がり、面白いがうらさびしい、R2-D2に似たコーヒーメーカーにも声を掛ける。
私引っ越すのよね、理由がベランダにのびてきた木のはがアフロになってきたので散髪するように頼んだが、大家さんがばっさり切ってしまった。見おろすと大きな丸い切り株が白い。
…… そういうわけだよR2-D2
とは書いてないが、そんな話。一人称で喋り捲る女がなぜか身近に感じる。
さりさりさり
仕事で忙しくしている姉の家に居候をする。でも猫がドアを掻く音で目が覚めていたが、姉の家にはそれがない。
ざくろ
ざくろの木ってあの世とこの世のさかいにはえているんだって。
ペルセポネーはざくろの実を食べた。少しだったのであちらに行っている時間も短い、それが冬になったんだって。
でもおばあちゃんはいろんなことが分からなくなってきた、今は60歳、ホントに私はおばあさんになっているのだろうか、今はいつなのここはどこなの。
スイッチ
雑誌の編集者が、産休をとって子育てをしている。一人の老大家から名指しで原稿をもらった、そうして彼はすぐに亡くなった。
果てしない育児の時間にスイッチが入った。いい本を出そう。
「腹中の恐怖」は面白い、人間の心の奥にある怖さが他人事ながら読ませる。
中でも「さりさりさり」にある昔話の、「蛇と蟹」の恩返しは怖い。
すぐ読めるが、感じるところはジンと怖い、人の生きる陰にある恐怖のつぼが押される。
***
《今度の「スターウォーズ」のね、BB-8だけど。体が回るのに頭が滑り落ちないのね。》
「あぁ磁石でしょう」
何でだろうとサイトまで調べた私って、、、黙っておこう。
《すぐ読める薄い文庫 大作戦》実行中で、積んであるのを横目にこれで知らない作家も読めると思ったらすこしよんで止めたくなるのも多い。この作戦は忍耐大作戦かも。