"夏椿”とも呼ばれる沙羅の白い花が咲いている
ツバキ科、ナツツバキ属に分類される、こう書くといささか興が削がれるけれど、"夏椿"という名前にしても一般に呼ばれる"沙羅の花””沙羅双樹”という呼び名にしてもこの花の美しさをが好きな人がどれほど多いかが分かる。
また”さ”という音の響きが、6月の雨の季節には爽やかで、名前を言葉にしてみても花の雰囲気を損なうことがない。
"さ"に続く母音の"あ"も綺麗だ。
音については古代の万葉人は少し今とは違った発音もあったようだが
柿本人麻呂の有名な
小竹(ささ)の葉はみ山もさやにさやげども我は妹思ふ別れ来ぬれば(2-133)
という歌もある
"さやげども"は"乱るとも”という表記もあるそうだが"さ"音の響きから”さやげども”と覚えている方がなんだか清澄な相聞歌の雰囲気に相応しい気がする。
そんなことで、この沙羅の花は沙羅双樹に因んでよくお寺の庭に植えられ、瑞々しい苔の上に白い花が散っているさまが、朝咲いて夕方には散る、ものの哀れを秘めた趣のある風情が感じられる。