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わたしの美術館展(横浜美術館)
美術
/
2005-08-14
横浜美術館には9500点もの収蔵品があるそうです。昨年『横浜美術
館コレクション・私が選んだこの1点』を募集し、その中で人気が高
かった作品を中心に構成されたのがこの『わたしの美術館展』です。
何だかいい名前だと思いませんか?
展示されている絵の脇には、その絵を推した人のコメントも紹介さ
れています。年代も性別もばらばらな人たちのコメントに、いろい
ろな思いがあるのだなぁ...コメントには思い出話が多いのですが、
そうした個人的な記憶に残れる作品は幸せなのだろうと思いました。
また、そうした言葉は主催する側の美術館の人たちにも励みになる
のではないでしょうか...
残念ながら私はこの募集企画を知らなかったのですが、いわば一般
の鑑賞者を企画に関わらせる展覧会、面白い試みだと思います。
会場は以下の六つのテーマで構成されます。
・『はぐくむ』近代日本画を紹介
・『はばたく』横浜ゆかりのアーティストを紹介
・『であう』日本と西洋文化との出会いを示す作品
・『みつめる』近代ヨーロッパ美術
・『ゆめみる』シュールレアリスム
・『生きる』現代美術のという六つのテーマで構成されま
『はぐくむ』では中村岳陵の『砂浜』、砂浜の上の淡くて青い空が
とても明るく気持ちよい。砂の上に点在するオレンジや水色や紫の
小石がかわいらしいアクセントになっています。岳陵の作品では東
京国立近代美術館の『気球揚る』、あの作品も空がきれいでした...
隣の菱田春草『夏汀』、向かいの安田靫彦の『窓』。『窓』は洋風
の窓辺の緑が爽やかな空気を感じさせてくれました。
『はばたく』では國領經郎の油彩『轍』、水を求めているのでしょ
うか、どこまでも車の跡が残る砂浜を歩いていく二人の女性と遠く
に見える大きな船。また、暗い夜の街の酒場が描かれていた『ヨコ
ハマ・ナイト』、絵よりも何よりも大正時代に付けられた、そのハ
イカラな名前に痺れました。
『みつめる』にはモローの小さな水彩『岩の上の女神』、モローは
文化村で昨日観たばかり
ですが、この作品は緻密に描き込まれ系の水彩
画。顔近づけてぢっと見つめていました。持って帰りたい衝動。脇
に紹介されている杉並区在住の五十代の男性の言葉がふるっていて
『こんな美女を恋人にしたい』...正直ですねぇ、お客さん...でも、
右手に蛇を絡ませるような女性ってどうかなぁ...う~む、まぁ、い
いかも。
『ゆめみる』の作品は
昨年のコレクション展
でも印象に残っている
ものが多く展示されています。それ以外の作品ではダリの『ガラの
測地学的肖像』...これは筆触が分からないように描かれた小さな絵
です。背後から描かれた肖像、とても美しいのですが首筋あたりの
緑がちょっと空恐ろしい...また、マックス・エルンストの『少女が
見た湖の夢』、これは初めて観たときから忘れられない絵です。私
がもし横浜美術館のコレクションから一枚を選ぶとしたら、きっと
この絵にしたのではないかな...、湖の周りに姿を隠した動物たち...
また、デルヴォーの絵も白昼夢のようでとても好きです。それは、
きれいに描かれた女性の裸に惹かれているのが多分にあります。そ
んな作品に寄せられた女性の、人生の岐路で一歩を踏み出すきっか
けになりました...というコメントに、同じ絵でも人によって様々な
思いや感じ方があるのだなと、とても不思議な気持ちになりました。
『生きる』には金村修の『京浜マシン・ソウル』、横浜の写真も撮
っていたのだな。メタリックで小汚いモノクロの街...また、宮崎進
の麻の布を貼り付けた作品のざらりとした手触り...
ブランクーシの『空間の鳥』や、イサム・ノグチの彫刻作品はいつ
観てもよい。形が洗練されていて無駄なところが感じられません。
一方、コレクション展の写真コーナーに展示されている荒木経惟の
『写狂人日記』は夾雑物の集積です。リバーサルフィルムを細かく
貼り付けたパネルを蛍光灯の光に透かすと夥しいイメージが現れま
す。あらゆる色を捕らえているかのような光の洪水の中に『
センチ
メンタルな旅・冬の旅
』をめくる笠智衆の姿を見つけました。ほん
の十五年前まではご健在だったのだな...
・
わたしの美術館展
は 8/31 まで...
コメント (
2
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|
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«
ギュスターヴ...
札幌美術紀行(...
»
コメント
Unknown
(
はろるど
)
2005-09-01 22:23:58
こんばんは。
私も先日見てきました。
デルヴォー、最近私の中で赤丸急上昇中の作家なもので、
その作品を見られただけでも収穫でした。
>脇に紹介されている杉並区在住の五十代の男性の言葉がふるっていて『こんな美女を恋人にしたい』...正直ですねぇ
面白かったですよね。
それにしても作品のそばに感想を付ける試みというのは、
美術館としては随分冒険だったのでしょうね。
とっても新鮮でした。
P.S先日ご紹介いただいた李のレクチャーも合わせて聞いてきました。
拙いですがまた後日にでも色々書いてみたいと思います。
改めまして、教えて下さりありがとうございました。
Unknown
(
lysander
)
2005-09-02 22:25:23
はろるどさん
コメントありがとうございます。
> 感想を付ける試みというのは、美術館として
> は随分冒険だったのでしょうね。
> とっても新鮮でした。
ですよね。
私にも書かせてよ!という感じです(^^)
> 李のレクチャーも合わせて
それはよかったですね!!!
私は御大自ら講演される 9/23 に行ってみよ
と思います。以前、私のブログで紹介した李
さんの詩集はいまひとつでしたが、芸術家と
しての李禹煥はとても好きなので、期待の展
覧会です。
折角なので、はろるどさんのためにサービス
ショットをアップしておきました(関係項)。
これはよかったですよ。
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私も先日見てきました。
デルヴォー、最近私の中で赤丸急上昇中の作家なもので、
その作品を見られただけでも収穫でした。
>脇に紹介されている杉並区在住の五十代の男性の言葉がふるっていて『こんな美女を恋人にしたい』...正直ですねぇ
面白かったですよね。
それにしても作品のそばに感想を付ける試みというのは、
美術館としては随分冒険だったのでしょうね。
とっても新鮮でした。
P.S先日ご紹介いただいた李のレクチャーも合わせて聞いてきました。
拙いですがまた後日にでも色々書いてみたいと思います。
改めまして、教えて下さりありがとうございました。
コメントありがとうございます。
> 感想を付ける試みというのは、美術館として
> は随分冒険だったのでしょうね。
> とっても新鮮でした。
ですよね。
私にも書かせてよ!という感じです(^^)
> 李のレクチャーも合わせて
それはよかったですね!!!
私は御大自ら講演される 9/23 に行ってみよ
と思います。以前、私のブログで紹介した李
さんの詩集はいまひとつでしたが、芸術家と
しての李禹煥はとても好きなので、期待の展
覧会です。
折角なので、はろるどさんのためにサービス
ショットをアップしておきました(関係項)。
これはよかったですよ。