美術と本と映画好き...
徒然と(美術と本と映画好き...)




近頃はシュルレアリスムというんだな...

さて、横浜美術館はシュルレアリスムの作品を多く収蔵していて、
その常設展を観るのがここを訪れる楽しみのひとつです。そのシュ
ールレアルな収蔵品を多く含む企画展が『シュルレアリスムと美術』
展、宇都宮美術館、豊田市美術館と周ってきた最後の巡回展です。
今回は思いがけずにとらさんとお会いして、企画展から常設展まで
ご一緒させていただきました。

残念ながら作品リストがなかったので、思い出すままに...

デ・キリコやクレーといった、シュルレアリスムに影響を与えた作
家の作品がいくつか。クレーはシュールとは違うように思うのです
が、昨年のクレー展で観た作品もいくつか。宇都宮美術館が収蔵し
ている『上昇』はとても好きなイメージです。

ミロもシュールなのか...実は苦手なのですが、今回、展示されてい
るブルーの色彩はよかった。ミロの作品は音楽との関連で語られる
事も多くありますが、何も聴こえず。とらさん曰く「われわれのカ
ラオケレベルでは...」言葉もございません...(^^;

あと、ピカソの作品が展示されていたのも以外でした。シュルレア
リスムはふところが深いなぁ...

マックス・エルンストの小さなコラージュは少し悪夢的です。黒い
頭巾に白い杖をかかげた僧侶の列や、崖っぷちで刃物を振り上げる
少女...小さなイメージについつい目を凝らします。マグリットの仕
立て屋のイメージ、鳥の頭をした仕立て屋が男の肩にメジャーをあ
てています。

オスカル・ドミンゲス『無題-デカルコマニー』、デカルコマニー
と題されてはいるものの、その右手に描かれた仏像の横顔のような
イメージは具象的、ごつごつした石を感じさせる質感もなかなか。
そういえば、このデカルコマニーって、オスカル・ドミンゲスが始
めた技法なのだそうです。
デカルコマニー (wikipedia)

『ガラの測地学的肖像』は横浜美術館の宝。ダリのこの精緻な作品
にはいつも引き込まれます。隣には下絵。遠くに塔を臨む下絵の完
成を見たかったような気もしつつ、ガラにしぼった小さな作品で良
かったのだろうなぁ...という気もしつつ...

お目当てのシュールな油彩画...

マグリットの『大家族』は宇都宮美術館の収蔵、マグリットはあま
りにそのイメージが流布しているので通俗的な印象も持つのですが、
曇った画面を切り取る鳩の、青空のイメージはやっぱり素敵だなぁ...
ダリの作品もそうですが、シュルレアリスムの絵描きさんの空に惹
かれることがよくあります。どんなに奇抜なイメージであっても、
空は空として描かれている、そんなささやかなことが私には面白い。

ダリの空は暁、英雄的昼、夕暮からなる『幻想的風景』です。この
三幅対は久しぶり。遠く離れて暁と夕暮の雲を見比べるもよし、近
づいて砂浜に消え入りそうな人影や、柱に描かれた精緻な蟻やら不
思議な人物像に目をやるもよし。

エルンストの『少女が見た湖の夢』、これは学生時代に初めて訪れ
た横浜美術館で、もっとも印象に残った作品のひとつ。なので、横
浜美術館収蔵の作品でもっとも好きな作品はどれかと言われたら、
迷いながらもこれをあげます。対抗はモローの小さな水彩画かな...

エルンストと言えば『喜劇の誕生』は初めて観た作品。何かを語り
たそうな、少し苦しげに見える仮面の表情。どこかひっかかりまし
た。彫刻の『王妃とチェスをする王』は形が決まっています。とも
に豊田市美術館収蔵の作品。

ポール・デルヴォーも好きな画家ですが、『3つの骸骨』は初めて
かな。エルンストの『子供のミネルヴァ』も初めてだと思います。
特に後者は子どもの描いたようなやさしい雰囲気。上述の作品とも
どもエルンストの作品にもいろいろあるのだな...

これだけの作品は一館だけの展示では見せることはできないでしょ
う。そういう意味でもよい企画だと思います。二月に聞きに行った
シンポジウムを思い出しました。こういう連帯はどんどん広げて行
くといいと思います。

初めて意識した作家さんではロベルト・マッタの『ハート・プレー
ヤー』、高度に発達した感覚器で遊びに興じる人物を描いた作品。
1945年の作品。ちょっと恐ろしい...
# そんな日が近所に来ているような気も...

最後の部屋はシュールなのかなぁ...と思いつつ、高松次郎の文字通
り『赤ん坊の影』や、鏡を使ったトリッキーなミケランジェロ・ピ
ストレット『窃視者』あたりは面白いと思いました。こちらもとも
に豊田市美術館収蔵。

常設展ではマン・レイの撮った芸術家たちのポートレイトが展示さ
れています。シュールな作品が好きな方は必見でしょう。ここら辺
までくると館内はとても静か。おかげさまでとらさんに美術館での
遊び方を教わることができました...(^^)

シュルレアリスムと美術展 (横浜美術館) - 12/9

おまけ
わたしの美術館展(横浜美術館)の感想
・二月に聴きに行ったシンポジウム『大型美術館はどこへ向かうのか』

コメント ( 10 ) | Trackback ( 0 )



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コメント
 
 
 
シュールな展覧会のシュールな記憶 (とら)
2007-10-01 06:23:20
lysanderさん、朝起きて夢見心地の中でこの展覧会のことを考えていたら、いろんなことを思い出したので、自分の記事に書き加えました。シュールな記憶はシュールな状況で思い出すのだということを実感しました。
 その後で、lysanderさんからTBが来ているのに気づきました。両者の記憶を重ね合わせるとあの場の雰囲気が出てきそうです。ありがとうございました。
 
 
 
Unknown (遊行七恵)
2007-10-01 12:44:32
こんにちは
>近頃はシュルレアリスムというんだな...
ウケました。
超現実主義、の言葉の意味がずれてきましたね。
「現実を超える」から「メッチャ現実的」という意味に転換したようです。
フランス語の表記も多少変わったようですが、これが本当の意味でのシュールな現実なのかもしれませんね。
なんとなくそんなことを思いました。
 
 
 
Unknown (KAN)
2007-10-02 00:52:29
宇都宮美術館所蔵品が来てるんですね。ゼヒ行かなくては。
 
 
 
Re: シュールな展覧会のシュールな記憶 (lysander)
2007-10-02 01:30:50
とらさん
こんばんは

> 朝起きて夢見心地の中でこの展覧会のことを考えていたら、
この展覧会をきっかけに、怪しい夢などご覧になりませんでしたか...?

私がこうしてものを書くときは、大抵、アルコールを燃料とした
自動筆記なので、あらゆる文章がシュールかもしれません...(^^;
 
 
 
Unknown (lysander)
2007-10-02 01:38:03
遊行さん
こんばんは

> > 近頃はシュルレアリスムというんだな...
> ウケました。
笑われてしまいましたか...(^^;

ちょっとウィキペディアを見てみたのですが、
もはや遠い世界の話のようです...
# 感覚的に捉える言葉を言葉によって定義することが
# いかに難しいことか...

シュールの用例なんて、それ自身がシュールですもの。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B7%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%83%AB

> 「こうして部長の思いつきに振り回されるシュールな一日が終わった」
何だそりゃ?
 
 
 
Unknown (lysander)
2007-10-02 01:39:41
KANさん
コメントありがとうございます。

> 宇都宮美術館所蔵品が来てるんですね。ゼヒ行かなくては。
地元横浜開催でもありますし...(^^)
 
 
 
日本人画家 油絵 (油絵 花(http://www.meigakan.com/))
2016-11-02 10:44:55
あなたの大事な家族や、ペットの肖像画、
残しておきたい近所の風景などを、

あなたの想いと一緒に、
後世に残すことができるようになります。
 
 
 
ゴッホ 名画 (油絵 祝い(http://www.meigakan.com/) )
2016-11-23 12:51:54
本作は元々サロンに出品するために画家が(エドゥアール・マネの同名の代表作に着想を得て)制作していた『草上の昼食』が6メートル超の大画面であった為に間に合わず断念し、改めてサロン出品作として4日間という短期間で描かれた作品で、小説家であり印象派芸術の擁護者でもあったエミール・ゾラは本作を「此れは紛れも無く、写実主義を超えた、あらゆる細部を描写する繊細な理解者の、男らしい男の作品である」と評した。

meigakan@yahoo.co.jp
 
 
 
ブリューゲル 通販 (www.meigakan.com/)
2016-12-07 11:46:29
公開当時より圧倒的な支持を受けた、彫刻家ミケランジェロ初期の傑作『ピエタ』。
akan@yahoo.co.jp
 
 
 
ブリューゲル 通販 (www.meigakan.com/)
2016-12-07 11:47:19
公開当時より圧倒的な支持を受けた、彫刻家ミケランジェロ初期の傑作『ピエタ』。
meigakan@yahoo.co.jp

 
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