森羅万象、政治・経済・思想を一寸観察 by これお・ぷてら
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中道の憂鬱- 公明党の場合
社民党と公明党は、政権というものを軸にして考えると、ちょうど立場が逆転してしまいました。前者は連立し政権入りし、後者は、選挙に破れ野党になったのです。ただし、政権内での両党の重みは、それこそ雲泥の差ほどの違いがある。公明党のほうが、はるかに重い。なぜなら、公明党の議席は、連立の不可欠の要素であって、それを欠いては自民党が政権を握りつづけることは不可能であったわけですから。それに比べると社民党の位置なんて、民主党にとってどうってことない。社民党の現在は、07参院選前後の状況を見極めた小沢の臭覚にほとんど拠っているといっても過言ではないでしょう。参院選とその後の今年の衆院選での民主党の議席増は、つまり大幅な得票は、今日までの構造改革路線にたいする強い反発の意思も込められていたというのが大方の見方であって、社民党と連立を組むのは、それにたいする一つの応答でもある。ただ、今でも民主党は、選挙に支持されたのだからという、傲慢とも思える態度に出ることがしばしばありますから、今後、社民党との連立の位置づけは状況次第ということになるでしょう。前エントリーでのべたように民主党の絶対多数こそ小沢が目標としているものですから、それが来年、参院選で仮に達成されれば、社民の連立離脱の可能性は格段に大きくなるとみてよいでしょう。そうでなくとも、すでに米軍基地移転問題では、格好だけでも社民党に配慮をせざるをえないわけで、やっかいだし、逆に、そろそろ連立に加えた矛盾が現れているとみなければなりません。
政権交代をはさんで社民党と公明党は、異なる意味で憂鬱をそれぞれ抱え込んでいるとみてよいでしょう。昨日、ふれたように、社民の場合は本来の同党の政策、主張と政権の対応におけるジレンマに今、直面している。連立に留まれば、今後もそれは続くでしょう。そこから生まれ出る憂鬱です。だから、たまらずこんな意見も党内から出てくる(参照)。
反基地の立場を社民党の生命線だと考える人にとってすれば、当然の意見だといえるでしょう。社民党は連立継続か、破棄か、それが早晩、問われる。
一方の公明党。自民党には恩を売ってきた。強い立場にあった。選挙協力で、学会票なしでは自民党の議席獲得もままならないケースはいくらでもありました。それだけでも、自民党に圧力をかけることはいくらでもできたはず。はずというのは、公明党の主張で規定される局面より、自民党に公明党が同調してきたことのほうがはるかに多いのは誰の目にも明らかだからです。構造改革も一緒になってすすめてきました。同罪です。だから、選挙で同党にも手厳しい審判が下りました。
自民党との関係でいえば、公明党を欠いてはそもそも政権の基盤そのものがない状況にまで、自民党はゆきづまっていたわけだから、公明党はもっと強い要求をしても可能だったといえますが、まあ冬柴が数期にわたって国交相にしがみついていたことが目立つくらいのもので、この意味では公明党はおくゆかしいともいえる態度ではなかったでしょうか。裏をかえせば権力につくことがとりあえずの同党のステップだったのだろうと推測されます。
したがって、そうであるのなら、公明党にとってとりあえず自民党はおいしい政党ではなくなったということです。そして、自民党にとっても,従来のような公明党との選挙区ごとの協力が成立する可能性も、また、成立しても当選する可能性も、極端に今現在では低くなっていると想定できます。つまり、自民党もまた、公明党との選挙協力を勝利のための推進力にする条件はほぼ失っているといえます。
今後、公明党にとっては、今でもおそらく権力(につきたいという)欲は衰えているようには思えないので、それを可能にする条件探しが当面の難問になるでしょう。もう一つの中道、公明党の憂鬱はここにあります。
私はこれまでの公明党の政策も、その思想も理解できなかった。そもそも一時期、強調された人間的社会主義も、いまや語られることはないが、それを理解できなかったし、人間的社会主義という体系は明らかにできるようなものなのか、それ自体を疑ってきた。が、公明党は政権について以降、(その思想にもとづく)福祉の公明党も蔭を潜めたのでした。自民党となれあってきたのです。
元に話を戻すと、自らの理念すらひとたび政権につけば、かなぐりすてるほどのプラグマティックは他にないかもしれない。あえてあげれば最近の小沢の転身ぶりが相似するでしょう。このプラグマティックな態度はおそらく今後も続くでしょう。したがって、来年の参院選にむけて、民主党との関係をどのようなものにするのか、これが問われる。
政局は、来年の参院選にむけて、民主党が07参院選、09衆院選と同様に大幅な議席を獲得するとすれば、新たな段階に以降する。衆院選で単独過半数が実現しているから、仮に参院で圧倒的な多数を占めると、民主党の強権はさらに深化する。ある意味で(一党の圧倒的多数による)翼賛的な体制が構築される。改憲の条件すらできあがるわけです。
そんななかで、公明党がこういう風潮に抗することができるのか。
その可能性は、これまでの行状からきわめて薄いと私はみます。
(「世相を拾う」09273)
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