セピア色の映画手帳 改め キネマ歌日乗

映画の短い感想に歌を添えて  令和3年より

「回転」(1961年)と「妖精たちの森」(1971年)

2017-12-27 00:33:48 | 映画感想
 ヘンリー・ジェイムスの怪談「ねじの回転」を映画化したものと、その前日譚。

 「回転」(「The Innocents」、1961年、米)
   監督 ジャック・クレイトン
   原作 ヘンリー・ジェームス 「ねじの回転」
   脚本 ウィリアム・アーチボルド   トルーマン・カポーティ
   撮影 フレディ・フランシス
   美術 ウィルフレッド・シングルトン
   音楽 ジョルジュ・オーリック
   出演 デボラ・カー
       マーティン・スティーブンス
       パメラ・フランクリン
       メグス・ジェンキンズ

 20世紀初頭、ロンドン郊外にある大邸宅に新任の家庭教師ミス・ギデン
スが赴任してくる。
 広い屋敷には僅かな家政婦と両親を亡くしたフローラが居るだけだった、
やがて、学校を放校させられた兄マイルスが戻りギデンスは熱心に二人に
愛情をかたむける。
 が、屋敷内外で知らない男女を見るようになる、家政婦のグロース夫人に
問いただすと、庭師のクィントと前任の家庭教師が居たが、少し前に二人と
も亡くなって、そんな筈はないと。
 やがて、子供たちの中に彼女の知らなかった性格が見えてくる・・・。

 予告編 https://www.youtube.com/watch?v=aOsF0S65RR0
    (円谷プロ、20世紀FOXに訴えられなくてよかったね)

 果たして彼女を追い詰めているものは幽霊なのか、幽霊に憑依された子
供たちなのか、それとも彼女の妄想が子供たちを追い詰めているのか。
 この物語は中年手前のミス・ギデンスの視点で語られていきます。
 厳格な家庭で育ち、婚期を逃した子供好きな女性ギデンス、男女の愛も想
像でしかなく実体験がない。
 この仕事を引き受けたのも、子供好きがあるにせよ、後見人・依頼人であ
るマイルス、フローラの叔父にボ~とときめいてしまったから、普通の女性な
ら彼の冷酷さに席を立つだろうに免疫のない彼女は承諾してしまいます。
 その抑圧された性欲が死んだ前任者と庭師の爛れた関係を知り、妄想に
陥る。
 死んだ二人が子供たちに乗り移り愛を語らい嬌声を上げているいると。
 悲劇的な結末があるにせよ、この物語に正解は描かれていません、いず
れの理由もあいまいなまま。
 ちょっと白黒を付けたがる人には不向きかもしれない作品、でも、僕は面
白いと思うし、ゴシックホラーの古典名作との評判に間違いはないと思いま
した。
 只、僕は前日譚である「妖精たちの森」を憶えていたから、初見の人のよう
な想像力を持てなかった、そこが残念。
 ※彼女、子供のマイルスとのキスシーンが二つあって、どちらも頬ではなく
  唇なんですよね、特に最初のキス、おやすみのキスだった気がするけど、
  普通なら咎めるだろうに、されるがまま。

 H29.12.24
 DVD

 「妖精たちの森」(「The Nightcomers」、1971年、英)
   監督 マイケル・ウィナー
   脚本 マイケル・ヘイスティングス
   原作 ヘンリー・ジェームス 「ねじの回転」
   撮影 ロバート・ペインター
   音楽 ジェリー・フィールディング
   出演 マーロン・ブランド
       ステファニー・ビーチャム
       ベロナ・ハーベイ
       クリストファー・エリス
       ソーラ・ハード

 如何にしてマイルスとフローラは、あのように育ってしまったのか。
 庭師クィントと前任の家庭教師の爛れた関係とは。
 「回転」では意図的に曖昧にされていたものを、創作によってネタばらしして
いくという身も蓋もない作品。(笑~兄妹が姉弟に、年齢も「回転」とは違い思
春期直前という感じに変更されてます)
 怪談の前日譚ですから後味がいいとは思えません、この作品自体はホラー
ではありませんが不気味ではあります。

 予告編 https://www.youtube.com/watch?v=GKS4Zn8BWgU

 面白い話や遊びを教えて子供たちに絶対の信頼を寄せられてるクィント、疑
うことを知らない子供たちはクィントの残虐性にも感化されていきます。
 そして覗き見で知る、クィントと家庭教師ジェスルの異様な絡み合い。
 無教養で野卑なクィントが夜中に忍び込み無理矢理手篭めにしたのが始ま
りですが、そのサディスティックな行為に抑圧されていたジェスルの身体が反
応するようになり、マゾとして開放されてしまう。
 それは、やがて真似する(ごっこ遊び)子供たちを見た家政婦長グロース夫
人の知るところとなり二人は屋敷から追放される事に・・・。

 確かによく出来た前日譚で、スペイン映画「ザ・チャイルド」(1976年)と同
じ純粋な子供の怖さ、不気味さを上手に描いてると思います。
 でも、この作品の印象を一言でいえばキッパリ「エロ」でしょう。(汗)
 野卑で無教養だけど野生のオスの臭いが滲み出てるクィントが清楚で教養
ある家庭教師を調教してしまう。
 しかも、ジェスルを演じたS・ビーチャムがね、顔は清楚なのに脱ぐと(脱が
されると)、肉付きが良くて仄かにだらしない感じで実にケシカラン身体なん
です。
 記事を書くにあたってyoutubeで確認したら、短いヌードシーン2回、ベット
シーン1回だけで記憶だともっと有った感じなのに、たったこれだけで40年
以上強く記憶に残ってた(笑)、これのお陰で物語もハッキリ憶えてたという
本末転倒ぶり。(これと似た感じの記憶の残り方をしたのが、もう一つ、サム・
ペキンパーの「わらの犬」(1971年))
 これはクィントを演じたM・ブラントとS・ビーチャムの組み合わせがピッタリ
だったのでしょう、物語的にも子役たちの好演(「回転」に及ばないとしても)
でアンサンブルが上手く効いていたと思います。

 僕は変わりモノだからか、深層心理劇のような「回転」より、直截的な「妖精
たちの森」の方が好きですね、変わりモノというより変態なのでしょう。(汗)

※原題の「The Nightcomers」って「夜這い」なんでしょうか。(確かにクィントの
 アレは夜這いなんだけど)
 怪奇小説の名作と言われる「ねじの回転」の前日譚が「夜這い」というのは、
 幾らなんでも酷過ぎじゃない。(汗)

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