セピア色の映画手帳 改め キネマ歌日乗

映画の短い感想に歌を添えて  令和3年より

「パッドマン 5億人の女性を救った男」

2018-12-17 22:00:36 | 映画感想
 「パッドマン 5億人の女性を救った男」(「Padman」、2018年、印)
   監督 R・バーリキ
   原作 トゥインクル・カンナー 「ザ・レジェンド・オブ・ラクシュミ・ブラザード」
   脚本 R・バーリキ
   撮影 P・C・スリーラム
   出演 アクシャイ・クマール
      ソーナム・カプール
      ラーディカー・アープテニ
      アミターブ・バッチャン

 2001年、インドの田舎町に住むラクシュミ、鉄工所の職人である彼は新妻ガヤトリを迎え幸福の絶頂にあった。
 彼は愛する新妻が生理の度に部屋外に出され不衛生な布で処置してるのを知り、高価なナプキンを贈るが妻は価格を知り拒否。
 職人である彼は安く手作りのナプキンを妻に贈るも生理を穢れ、恥と考えるインドの強固な因習は素直過ぎる彼には想像を絶するものだった・・・。

  公式 http://www.padman.jp/site/

 「アメリカにはバットマン、スパイダーマンが居るが、インドにはパッドマンが居る」byアミターブ・バッチャン※インドで最も尊敬されてる俳優。

 ナプキン使用率12%のインドで安価なナプキン製造機を作りインド女性の衛生向上と女性雇用に貢献した男、その実話を脚色した作品。
 インド映画特有の派手さを抑えドキュメント風に作っています(歌とダンスはある)。インド映画は時々、着地のさせ方が強引で、そこをエンタメや外連、或いは歌、踊りで上手にカムフラージュするんだけど、今作はドキュメント・タッチで作ってる分、誤魔化しが効かなかった感がしました。
 でも、「いい話」を面白く作ってるしエンタメ要素も忘れてないので見易い作品だと思います。

 今回は映画の直接的な感想はここまで、この作品を観て思った別の事を書きます。
 インド映画の縛りの変遷、まぁ、大好きだけど専門的に調べた訳ではなく、浅薄な知識に基づくものなので間違ってる所も有ると思います、その点は予め御了承下さい。
 インド映画には昔有ったハリウッドのヘイズコードに似たものが存在していましたし、今でも残ってると思います。(宗教上からの制約も多い)
 ・キスシーンはNG?
 2007年の「恋する輪廻 オーム・シャンティ・オーム」ではNGでした。キスシーンは2回あるけど何れも撮影角度でしてるように見えるだけ(1回はシルエットだし)、多分、これでも、当時は進化途中の段階ではないかと。
 でも、2011年の「きっと、うまくいく」では堂々とブチューとしてたから、この4年の間に解禁されたと推測。
 ・ヌード、ベットシーンは?
 際どいシーンは前から有るような。(笑)
 これをインド映画に求めるのは違う気がするし殆どないんじゃないかと思う、けれど、半分以上アメリカを舞台にしたインド映画「マルガリータで乾杯を」(2015年)では有ったから絶対無しという事ではないと思います。
 ・不倫?
 この規制は今でも有るんじゃないかな。
 「恋する輪廻〜」でも、オームが手を繋ごうとするけど、シャンティは既婚者だから拒否してた。(結局、オームの純情さにほだされて手だけは許したけど)
 「めぐり逢わせのお弁当」は夫に問題有りだけどイラの精神的不倫話、ただ、次のステップへ行く前に夫婦関係を清算しようとしてるから、実質は伴ってない。
 「マダム・イン・ニューヨーク」も本作も、そこを知ってれば着地点は自明。
 でも、本作では未婚女性が既婚者(多分、離婚届にはサインしてない)に、本気を挨拶でカムフラージュしたキスがあるから、この辺も厳格でなくなってきてるのかもしれません。

 「マダム・イン・ニューヨーク」のシャシの判断は、僕はあれだから良かったと思ったのですが、フランス男のローランとくっ付くべきだという女性の意見が少なからず有って、「そうなのかな」と疑問を持ってました。
 本作は、その立場の男女逆転版。(笑〜監督の奥様は「マダム〜」の監督ガウリ・シンディで、話の構成、偏見をベースにしクライマックスにスピーチを持ってくるとこまで全く同じだ)
 今度はラクシュミの協力者となったパリーとくっ付いた方が良かったんじゃと思う自分が居て(彼が奥さんを愛してるのを解っていても)、つくづく、男の保守思考の身勝手さを感じてしまいました。
 まぁ、奥さん、激怒してもラクシュミをまだ愛してるのが解るから、こちらの方が目出度いし実話ベースで多分、今でも良い夫婦なんだろうし。(パリーのモデルは女性大学教授で恋愛感情は一切無かった)

 最後にインド映画界は歌舞伎の世界に似て門閥主義、五大名家の出じゃないと主役もいい作品も巡って来にくい。(本作のパリー役の女優さんも名門カプール家の一族出でしょう、今まで見たカプール一族の娘達の中で一番の美人ではある)
 賞も門閥外には大きなハンデがあるみたい、あれだけ大ヒットした「バーフバリ」の主役ブラヴァースが演技的にも素晴らしいのに大きな賞と無縁なのは非ボリウッド(ボリウッドは北インド、彼は南インドの俳優)というハンデの他に映画一家出でも名門の出自じゃないからというのもあるらしい。(噂としてカーストも絡んでるとか)
 ボリウッドのキング、シャー・ルク・カーンは例外なのかな。(汗)
 
 今回は、ちょっと横道に突き進んでしまいました、すいません。(要するに、悪くないけど自分的には「あと一、ニ歩足りなかった」し、よく考えたら奥さんの作った「マダム・イン・ニューヨーク」の丸パクリに近い、演出のセンスも奥さんの勝ち)

※キスの定義(笑)、唇同士の接触で、おでこや頬なら昔もOKだったように思う。
※インド映画では珍しく(本当に珍しく)歌に魅力を感じなかった。
※主役の人、名前だけは知ってたけど顔見て「きっと、うまくいく」のランチョー(本物の方)の人だと思った、ら、違ってた。(笑)
※実在のムルガランナム氏によれば、この映画の85%は実際に有った事だとか、つまり、パリー(ヒンディー語で妖精を意味する)とのロマンス風味が脚色部分なのでしょう。

 H30.12.16
 TOHOシネマズシャンテ
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