「或る夜の出来事」(「IT HAPPENED ONE NIGHT」1934年・米)
監督 フランク・キャプラ
脚色 ロバート・リスキン
原作 サミュエル・ホプキンス・アダムス
撮影 ジョセフ・ウォーカー
出演 クラーク・ゲイブル
クローデット・コルベール
ウォルター・コノリー
1934年の作品です、監督は名匠フランク・キャプラ。
スクリューボール・コメディという分野を開拓した記念碑的作品。
Wikによれば、スクリューボール・コメディとは「常識外れで風変わりな
男女が喧嘩をしながら恋に落ちるというストーリー」だと紹介されています。
ただ、これは厳格な定義で、今日的には「激しい台詞の応酬をしながら
恋に落ちる」、そんな感覚で大丈夫だと思います。
「激しい台詞の応酬」が顕著なのは「おかしなおかしな大追跡」(1972
年)の元ネタである「赤ちゃん教育」(1938年・監督ハワード・ホークス)
で、僕はスクリューボール・コメディの感覚は、むしろ「赤ちゃん教育」の方
が強いと思っています。
「或る夜の出来事」はスクリューボール・コメディ風味のロマコメで、ロマ
ンティック・コメディ、ラブ・コメディという分野の元祖として記念されるべき
作品であり、第一作にして、この分野の傑作に必ず数えられる作品。
「ローマの休日」は、この作品のバリエーションにすぎない。そんな言い
方もある程です。(僕は、ちょっと、それは言い過ぎじゃないかと思ってま
すが)
確かに話の骨格はそっくりで、ワイラー監督が、この作品を参考にして
るのは間違いありませんけど。
お金持ちの令嬢エリー(クローデット・コルベール)が、父親の反対に反
抗して、監禁されていたマイアミのヨットから脱走、NYに居る婚約者の元
へ向かいます。
その旅で出会ったイケスカナイ新聞記者の男(C・ゲーブル)との物語。
この映画で一番素晴らしいのは、キャプラ監督が語る映画のリズムです、
緩急自在、1シークエンスの長さも、長すぎず短すぎず、殆んどピッタリ、
名人技の実例と言ってもいいでしょう。
小道具の「ジェリコの壁」も憎らしいほど粋で冴えています。
また、途中、歌われる「ブランコ乗りの歌」は陽気で楽しく、僕がアメリカ
人なら一緒に合唱してるかもしれません。
ヒロイン、エリーを演じたクローデット・コルベールは、ちょっと髪型、服装、
顔立ちがサイレント時代の女優さんって感じがして、最初は馴染めない方
も多いと思います、それ程、美人にも思えないし。
僕が40年前にこの作品を初めて観た時、ストーリーは凄く面白いんだけ
どヒロインが可愛くないので、完全にノリきれなかった覚えがあります。
(僕は基本、ミーハーですから)
でも、見直してみると、もうヒロインの顔は解ってるので気にならないし、
よく見れば、可愛い所もあるし、何より上手な事に気がつきました。
まあ、前半、高慢チキな金持ち娘を余り可愛くない顔で演じてるから、余
計、嫌になったんだと思います。
C・ゲーブルは、この作品で大スターになった訳ですが、充分に芸達者な
ところを見せてます、有名なヒッチ・ハイクのシーンは中々の見ものです。
追っ手を誤魔化す為に、エリーのシャツボタンを外して肌けさせ、首尾よ
く落着した後は、真っ先にボタンを元に戻してあげる。
口は悪いけれど、ちゃんと優しさを持ち合わせているのが解るシーン。
ゲーブルがやるからサマになるんですが、好きなシーンの一つです。
そして、エリーの父親で「問題は金で解決する」が信条の大銀行家アンド
リュース。
イイトコ総取りの儲け役をウォルター・コノリーが、実に楽しそうに演じてい
ます。
(あの役だったら、誰だって大喜びしちゃいますけど)
戦前の映画だからって馬鹿になんか出来ませんよ。
映画の演出法というのは、パンフォーカスを含め殆んどと言っていいくらい、この
時代までに出来上がっているのですから。
アメリカやヨーロッパは勿論、後発国の日本でさえ。
そして、いつの時代にも名人は居るのです。
※「用語解説」
ジェリコの壁>「ヨシュア記」に出てくるエピソード。
主の声に従い、イスラエルの民が、ジェリコの城壁を7日間
一日も休まず回った後、一斉に角笛を吹くと城壁が崩れ落ち
たという伝説。
これ、子供の頃、NHKで放映してた「タイムトンネル」に、この話が有ったの
で、直ぐにピンと来たけど、でなければ、キリスト教徒じゃない日本人には説
明が要る気がします。
監督 フランク・キャプラ
脚色 ロバート・リスキン
原作 サミュエル・ホプキンス・アダムス
撮影 ジョセフ・ウォーカー
出演 クラーク・ゲイブル
クローデット・コルベール
ウォルター・コノリー
1934年の作品です、監督は名匠フランク・キャプラ。
スクリューボール・コメディという分野を開拓した記念碑的作品。
Wikによれば、スクリューボール・コメディとは「常識外れで風変わりな
男女が喧嘩をしながら恋に落ちるというストーリー」だと紹介されています。
ただ、これは厳格な定義で、今日的には「激しい台詞の応酬をしながら
恋に落ちる」、そんな感覚で大丈夫だと思います。
「激しい台詞の応酬」が顕著なのは「おかしなおかしな大追跡」(1972
年)の元ネタである「赤ちゃん教育」(1938年・監督ハワード・ホークス)
で、僕はスクリューボール・コメディの感覚は、むしろ「赤ちゃん教育」の方
が強いと思っています。
「或る夜の出来事」はスクリューボール・コメディ風味のロマコメで、ロマ
ンティック・コメディ、ラブ・コメディという分野の元祖として記念されるべき
作品であり、第一作にして、この分野の傑作に必ず数えられる作品。
「ローマの休日」は、この作品のバリエーションにすぎない。そんな言い
方もある程です。(僕は、ちょっと、それは言い過ぎじゃないかと思ってま
すが)
確かに話の骨格はそっくりで、ワイラー監督が、この作品を参考にして
るのは間違いありませんけど。
お金持ちの令嬢エリー(クローデット・コルベール)が、父親の反対に反
抗して、監禁されていたマイアミのヨットから脱走、NYに居る婚約者の元
へ向かいます。
その旅で出会ったイケスカナイ新聞記者の男(C・ゲーブル)との物語。
この映画で一番素晴らしいのは、キャプラ監督が語る映画のリズムです、
緩急自在、1シークエンスの長さも、長すぎず短すぎず、殆んどピッタリ、
名人技の実例と言ってもいいでしょう。
小道具の「ジェリコの壁」も憎らしいほど粋で冴えています。
また、途中、歌われる「ブランコ乗りの歌」は陽気で楽しく、僕がアメリカ
人なら一緒に合唱してるかもしれません。
ヒロイン、エリーを演じたクローデット・コルベールは、ちょっと髪型、服装、
顔立ちがサイレント時代の女優さんって感じがして、最初は馴染めない方
も多いと思います、それ程、美人にも思えないし。
僕が40年前にこの作品を初めて観た時、ストーリーは凄く面白いんだけ
どヒロインが可愛くないので、完全にノリきれなかった覚えがあります。
(僕は基本、ミーハーですから)
でも、見直してみると、もうヒロインの顔は解ってるので気にならないし、
よく見れば、可愛い所もあるし、何より上手な事に気がつきました。
まあ、前半、高慢チキな金持ち娘を余り可愛くない顔で演じてるから、余
計、嫌になったんだと思います。
C・ゲーブルは、この作品で大スターになった訳ですが、充分に芸達者な
ところを見せてます、有名なヒッチ・ハイクのシーンは中々の見ものです。
追っ手を誤魔化す為に、エリーのシャツボタンを外して肌けさせ、首尾よ
く落着した後は、真っ先にボタンを元に戻してあげる。
口は悪いけれど、ちゃんと優しさを持ち合わせているのが解るシーン。
ゲーブルがやるからサマになるんですが、好きなシーンの一つです。
そして、エリーの父親で「問題は金で解決する」が信条の大銀行家アンド
リュース。
イイトコ総取りの儲け役をウォルター・コノリーが、実に楽しそうに演じてい
ます。
(あの役だったら、誰だって大喜びしちゃいますけど)
戦前の映画だからって馬鹿になんか出来ませんよ。
映画の演出法というのは、パンフォーカスを含め殆んどと言っていいくらい、この
時代までに出来上がっているのですから。
アメリカやヨーロッパは勿論、後発国の日本でさえ。
そして、いつの時代にも名人は居るのです。
※「用語解説」
ジェリコの壁>「ヨシュア記」に出てくるエピソード。
主の声に従い、イスラエルの民が、ジェリコの城壁を7日間
一日も休まず回った後、一斉に角笛を吹くと城壁が崩れ落ち
たという伝説。
これ、子供の頃、NHKで放映してた「タイムトンネル」に、この話が有ったの
で、直ぐにピンと来たけど、でなければ、キリスト教徒じゃない日本人には説
明が要る気がします。