セピア色の映画手帳 改め キネマ歌日乗

映画の短い感想に歌を添えて  令和3年より

「コーチ・カーター」

2012-05-20 12:15:25 | 映画日記/映画雑記
 「コーチ・カーター」(「COACH CARTER」2005年・米)
   監督 トーマス・カーター
   音楽 トレヴァー・ラビン
   出演 サミュエル・L・ジャクソン
       ロバート・リチャード
       ロブ・ブラウン

 低迷する高校バスケット部が、輝いていた時代のOBをコーチとして招聘、
チームを立て直すと共に、部員たちの人間性をも成長させようとする物語。
 スポーツ・ドラマとしては、幾つかあるパターンの一つで、それを超えよう
という意識は少なく、常道を真っ直ぐ進んで意外性はありません。
 昔々のTVドラマ「スクールウォーズ」のオープニングを思い出したくらいで
す。
 「この物語は、ある学園の荒廃に戦いを挑んだ熱血教師たちの記録であ
る・・・」
 確かに、この映画はバスケットボールを題材にした「スポーツもの」、「学園
もの」なのですが、作者の意図は、そういう馴染みやすいパターンを使って、
ずっと長い間、黒人達が置かれてる現実の実態を描きたかったのではない
でしょうか。
 この映画の主眼は、ボールが籠を通り抜ける事よりも、中盤にコーチが生
徒へ向かって言う言葉に集約されていると思います。
 「私が嫌いなのは、君たちを落ちこぼれにするシステムだ」
 「卒業できるのは学年で50パーセント、卒業生の大学進学率は6パーセ
ント」
 「この郡では、18歳から24歳までの黒人の33パーセントが逮捕され刑
務所へ行く」
 長い間、人種差別の下に居て、今でも社会の底辺から抜け出せずにいる
黒人層。
 黒人で教育がないから仕事が無く、金もない、なのに若年層の妊娠は多い。
 そして、お金がないから、まともな教育が出来ないという果てしないデス・ス
パイラル。
 この映画に出てくる人達はバスケットボールという才能で、そこから脱出す
る糸口を掴めたが、では、他の人達は・・・。
 そういう事ではないでしょうか。

 この映画、悪い映画とは思いません。
 でも、ちょっと硬質すぎる気がします。
 まず、ユーモアが殆んど無い、硬いテーマを語るのなら、何ヵ所か息継ぎ
をする場所が必要です。
 この映画で、息継ぎが出来る箇所は、意外と思われるかもしれませんが、
実はラストを除く試合シーンの数々なんです。
 でも、緊張感のある試合シーンに息継ぎを求めるのは無理が有ります。
 (遠征先で、ハメを外す場面はユーモア・シーンと言えなくもないけど、効果
的とは言えない)
 実直に真っ直ぐ進むだけでは疲れてしまいます。
 それは、サミュエル・L・ジャクソン演じるカーターの描き方にも出ていて、欠
点のない人物になってしまっている。
 頑固すぎるのを欠点と見ることも出来ますが、強烈な信念と表裏一体です
から格別な欠点とは言えない。
 完全無欠に見えるカーターが正しい道を説く、これでは人によっては窒息し
てしまう。
 それとも、黒人の置かれてる状況に、ユーモアを差し挟む余地など無いとい
うことなのでしょうか。
 その点が残念です。

 校長先生を演じてた人、もしかして、「ノッティングヒルの恋人」でアナ・スコッ
トに質問した女性記者ですかね。

 
コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする