栗野的視点(Kurino's viewpoint)

中小企業の活性化をテーマに講演・取材・執筆を続けている栗野 良の経営・流通・社会・ベンチャー評論。

福岡市長選結果を分析する。

2010-11-15 17:08:56 | 視点
 福岡市長選は「まさか」の結果に終わった。
「まさか」というのは開票開始30分後に民放局が自公支援の新人候補、元KBCアナウンサー、高島氏の当確を報じたことと、現職市長の吉田氏が大差で敗れたことで、吉田氏が破れたことではない。
 吉田前市長が敗れるかもという予想は大方の市民にあったのではないだろうか。
というのも吉田氏は当選直後から人気がなかったし、この4年間、彼の存在感を感じていた市民は少なかったようだ。
それだけに、今回の選挙では、誰に投票するか迷った市民は多かったのではないかと思う。少なくとも民主党に親近感を抱いていた層には。

 それにしてもなぜ、現職が6万票余りもの大差で破れたのか。
余程のことがない限り、現職が強みを発揮するのが一般的だ。とりわけ2期目が最強で、1期で敗れるのは余程のことだ。
 2期目が強い理由は1期4年の実績を訴えられることが1つ。
2つ目は、まだやり残している(やりかけている)部分があるので、継続してきちんとやりおおせたいと有権者の情に訴えかけられるからだ。
にもかかわらず吉田氏が大差で破れたのはなぜか。
その敗因を分析してみよう。

 1.公約違反
 なんといっても最大の要因はこれだ。
彼は前回の選挙でこども病院の人工島移転反対を訴えて当選したにもかかわらず、当選まもなくその公約を破棄し、「白紙の状態で再検討」した結果、やはりこども病院は人工島へ移転する、と180度方針を転換した。
これが前回、吉田氏を支持した層に裏切りと映り、大幅な支持離れを起こした。
彼の公約違反はこれだけではなく、他にもいくつか公約を反故にしているが、最も大きな反感を買ったのはこれだろう。
 そのため選挙戦突入前から、次は公約を守る人をという機運が強かったし、「公約を守る」ことを公約にした候補者もいたほどである。

 2.存在感のなさ
 とにかく元気のない市長だった。
いつも眠っているような(死んでいるような、と表現する人もいたが)生気のない顔をしていた。
たしかに議会で民主党は少数だったから、議会運営がままならなかったのは同情に値するが、市民への情報発信もなく、「こんな人が福岡市長ではね」という感じを抱かせた(特に女性に)。
 なかには選挙戦の吉田候補を評し、「この4年間で初めて元気な顔を見た」という声もあったほどだ。
それでいきなり「実績」を選挙戦で力強く訴えたのだから、有権者にはどこか空々しく聞こえたに違いない。

 3.民主党市議団の判断ミス
 民主党推薦で前回当選した吉田氏だったが、市長就任後は民主党福岡市議団と政策面で食い違いを見せ始めた。その最たるものがこども病院の人工島移転だった。こうしたことから民主党内からは今回の推薦を見合わせる意見も出ていた。
 そこに元佐賀市長の木下敏之氏が市長選立候補を決め、民主党に推薦を願い出た。その段階で吉田氏からの推薦願いは出ていなかった。民主党市議団の中には木下氏を推す声もあったが、現職の政策を聞いてから判断すると、木下氏への態度を保留。その後、吉田氏の推薦願いを受け、吉田氏推薦を決定した。
 この段階で、民主党は判断を誤ったと感じたのは一人私だけではなかったはずだ。
市民感情を読み取れなかった民主党市議団の判断ミス、というか政治的センスのなさである。

 4.民主党票が割れた。
 民主党が推薦候補を決めるまでもたついたこともあり、木下氏を党内で推す勢力は先に動き始めていた。
結果、民主党支持層が木下氏支持と吉田氏支持に分かれることになり、スタート時から難しい選挙戦を戦うことになった。
 救いは立候補者8人という乱立だった。自民党系が今回当選した高島氏と植木とみ子の2人だったことも救いになりそうだったが、植木候補が告示後に撤退するという前代未聞の、許されない行動を取ったため、高島氏の圧勝という結果をもたらした。

 5.民主党への逆風が影響
 国政と地方選とは別で必ずしもリンクしないが、今回は見事にリンクした。
自民党も民主党も国会議員を応援に送り込んだが、市民は前回選挙ほど自・民対立の構図を意識していなかったと思う。
 ただ民主党支持層に一体感が欠け、また前回吉田氏を支持した層に多少のシラケ感があったことが選挙戦の盛り上がりに欠けた。
 「民主党の言うことは信用できない」「やらせてみたけど何も変わらなかった」という民主党に対する国政での失望感が、今回は不思議なほど吉田市政に対する失望感と合致した。

 6.政策論争なし、具体論なしの選挙
 このところの選挙の特徴とはいえ、国レベルも地方レベルでも政策論争はなしで、キャッチフレーズやイメージだけの選挙で終わっている。
 福岡の将来をどうするのか、具体的に何をどうするのかなどは、どの候補の広報を聞いても明らかにされてないのだ。
明らかなのは当選後方針転換できるような言い回し(書き方)が多いことだ。特に高島氏に至っては「私が掲げるビジョン」からしてイメージが全く湧かない空虚な言葉としか映らず、選挙戦でも「アジアのナンバーワンになる」という、キャッチフレーズともいえない言葉で、この人がもし間違って市長になったら本人が苦労するだろうなと思ってしまった。もちろん福岡市民が一番苦労するのだが。

 7.なぜ自民党は高島氏を支持したのか
 立候補後も何一つ具体的な政策らしいことを言わない高島氏を、なぜ自民党・公明党は支持したのか。
というのは先に植木とみ子氏が自公に推薦願いを出していたからだ。
選挙公報等を見ても植木氏の方が具体的ではっきりしている。
自ら主張していたように「行政の経験」もある。
しかし、主張がはっきりしているということは「頭に担ぎにくい」。
「頭は軽い方がいい」とかつて言った陰の実力者がいたが、主張がはっきりしている「頭」はトップダウンと独断でどんどん物事を進めていく可能性があるから、自分達の言うことを聞かなくなる(操縦しにくい)のだろう。この点は民主党も同じだったが。
 いずれにせよ福岡市民は今後しっかり見ていく必要があるだろう。でないと再び箱物行政に戻り、市の負債も再び拡大する可能性がある。


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