クニの部屋 -北武蔵の風土記-

郷土作家の歴史ハックツ部屋。

北武蔵の“パワースポット”はどこにある?(20) ―耳じん様―

2010年12月21日 | パワースポット部屋
“耳じん様”と呼ばれる碑がある。
元々は“行人塚”だったが、
土地開発によってその場所に移転建立したという。

行人塚は、亡くなった行者が眠っている塚である。
あるときこの村にやってきた行者は徳のある人で、
多くの村人を助けた。

中でも、耳の病気を治すことができたという。
それは山で修行を積んだ霊験によるものか、
あるいは諸国を巡り歩き、
耳の病気を治す知識を持っていたのかもしれない。

行者はそのまま村で暮らし続けた。
そして、その地で最後の時を迎える。

村人の誰もが嘆き悲しんだ。
いつしか行者は、村になくてはならない存在になっていた。
亡くなった行者は土に埋め、塚を築いた。

やがて月日が過ぎても、
村人の記憶から薄れることはなかった。
行者が好きだったという酒を供える者もいる。

耳や喉の病気が治れば、
行人さまのお陰だと自然と手を合わせた。
行人塚へお参りに来る人は絶えなかったという。
そしていつしか、「耳じん様」や「耳だれ様」と呼ばれるようになった。

そうした村人の親しみと感謝の気持ちは代々続く。
そして、土地開発のために塚が消えることになっても、
お参りに行く村人の姿は絶えなかった。
耳じん様に対する想いがそれだけ深いということだろう。
そこで、行人塚を移転建立し、現在に到っている。

いまも、この耳じん様にお参りに来ている人はいるだろう。
その想いはこの先ずっと続くのかもしれない。
時代を越えても、
人に感謝する気持ちは変わらないということを教えている。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする