クニの部屋 -北武蔵の風土記-

郷土作家の歴史ハックツ部屋。

羽生の金木犀と詩人の関係

2020年10月06日 | 近現代の歴史部屋
金木犀が満開です。
外へ出ると、ふと鼻先をくすぐる金木犀の花の香り。

とても好きな花です。
秋のほんの一時期にしか咲かず、
もっと長く香り続けてくれればいいのに、とさえ思います。

羽生市役所の敷地内にも多くの金木犀が植わっており、満開の季節を迎えました。
羽生市では、市民からの投票によって金木犀を市の木に定めています(昭和54年11月2日)。

実を言うと、庁舎が現在地に建てられたのは昭和49年のことです。
金木犀が市の木に定められる以前になります。
市役所の敷地に金木犀が植えられたのがいつだったのかわかりませんが、
昭和54年11月2日以前だとすれば、市民から親しまれた木だったことがうかがえます。

個人的には、桜よりも儚いイメージのある金木犀の花です。
まとまった雨が降ると、
地面が黄色く染まっている光景をよく目にします。
いつまでも咲き続けてほしいと思いますが、秋の空は気まぐれのようです。

秋の羽生市役所にもし足を運ぶ機会があれば、
金木犀の花に親しんでみてはいかがでしょうか。
花の香りに触れ、優しい気持ちになるかもしれません。
それとも、遠く懐かしい記憶が呼び起こされるでしょうか。
こんな時代だからこそ、ふと足を止め、花に親しむ時間があってもいいでしょう。

詩人の田村隆一は、かつてほんの一時期羽生で過ごしたことがありました。
その家の庭には大きな金木犀があったそうです。
ちょうど秋の季節に羽生へ赴いた田村氏は、
金木犀が印象深く記憶に残ったようです。
だから、金木犀の花の香りが町を包む頃になると、
田村氏は決まって羽生での日々を思い出していたかもしれません。
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彼岸花に彩られる羽生の神社は?

2020年10月04日 | 神社とお寺の部屋
羽生市上新郷にある浅間神社は、
陸の孤島のように鎮座しています。
田んぼが広がる中、ポツンと建っているからです。

実は、この神社は古墳の上に祀られています。
円墳で、さほどの大きさではありません。
上新郷には「百塚」という小字があるように、
かつて多くの古墳が存在していたのでしょう。
(拙著『歴史周訪ヒストリア』参照)

しかし、時代の流れとともに消滅し、
浅間神社が鎮座する古墳はその生き残りのようなものです。
なぜ残ったかというと、祟りを恐れたためと言われています。
すなわち、古墳を崩せば祟りが起きる。
そのため、あえて残したと言うより、手が付けられなかったというのが真相でしょう。

そんな浅間神社は、秋になると赤く染まります。
いえ、血ではありません。
満開に咲く彼岸花に彩られるからです。

上新郷の秋の風物詩と言ってもいい光景です。
遠くからでもその赤い花に気付くことができます。
管見ですが、羽生市内でこれほど彼岸花に彩られる場所はほとんどないでしょう。
観光地というわけではなく、人通りの激しい場所でもありません。
田んぼに囲まれた陸の孤島のような神社で、
ひっそりと咲く彼岸花。
今年も秋がやってきました。

ちなみに、人々が祟りを恐れたのは、古墳の上に神社が鎮座しているからです。
いわば宗教施設であり、神仏が存在する場所だからこそ、
心理的に手を付けることを避けたわけです。
そのため、実際に祟りが起こるわけではありません。
また、浅間神社が恐ろしい場所というわけではないのでご安心ください。

でも、そのような禁忌、忌まれるエピソードがあると、
彼岸花の鮮やかさがますます増すように感じるのはなぜなのでしょう。
何事にもスパイスがあると、さらに豊かにしてくれるものですね。

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