クニの部屋 -北武蔵の風土記-

郷土作家の歴史ハックツ部屋。

北武蔵の“パワースポット”はどこにある?(21) ―鑁阿寺―

2010年12月31日 | パワースポット部屋
栃木県足利市にある“鑁阿寺”(ばんなじ)は、
真言宗大日派の本山である。
開基したのは“足利義兼”。
同寺は館跡とも知られ、寺の周囲には土塁と堀が残っている。

鑁阿寺本堂の裏に“蛭子堂”と呼ばれるお堂がある。
ここはほかのお堂と一見雰囲気が違うのは、
安産祈願をした参拝者が多いことが一目瞭然だからだろうか。

この蛭子堂は安産の守護神として、
古くから信仰を集めている。
しかし、その由来となる伝説は思いのほか悲しい。

足利義兼が平家追討のため留守にしたところ、
室の“北条時子”は懐妊。
別の男の子どもではないだろうか?
怪しんだ義兼が問いつめたところ、
侍女の藤野が「筆頭家臣の足利忠綱と通じた」と報告した。

激怒した義兼が時子に命じたのは自害。
時子は涙を流しながら自ら命を断った。

すると、時子の大きなお腹から出てきたのはたくさんの蛭だった。
無実の罪で命を断った時子の無念が、
蛭となって現れたのだろうか。

悔いた義兼は鑁阿寺を建立。
そして、時子を供養するために、蛭子堂を建てたという。

夫に嫌疑をかけられるという意味で、
『古事記』に見えるコノハナサクヤ姫と似ている。
彼女は夫に疑いをかけられたが、自害ではなくある条件を言う。
「もしあなたの子どもならば、炎の中でも無事に生まれるでしょう」
かくして姫は、炎に包まれる産屋で無事に出産し、
身の潔白を証明するのである。

と言っても、これは神さまの話。
生身の人間である時子が、
炎の産屋で出産できるわけがない。
自ら命を断ってしまう。

この伝説の真偽は定かではない。
悲話としていまに伝わる。
しかし、安産の神様として、
ここに参拝する人の姿は絶えない。



鑁阿寺(栃木県足利市)



同寺の土塁と堀で憩うカモたち



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