居酒屋さすらい 1759 - 今や海産店系立ち飲みはアメ横のムーブメント - 「三幸商店」（台東区上野）

月に一度、アメ横に調味料などを買い出しに行く。緊急事態宣言中、アメ横の立ち入りを自粛していたが先月店を通ったら、また立ち飲みが出来ていた。

「たきおか」を中心とする界隈はアメ横の飲食街としてもはや多くの人が知るところだ。しかし、アメ横の代名詞ともいえる海産物店が集まるエリアに今、異変が起きつつある。海産物野屋さんが立ち飲み酒場を併設しているのだ。

その筆頭は「魚草」。簡易な立ち飲みスペースを作り、日本酒と魚で新たな立ち飲みワールドを作った。そして、この「三幸商店」。やはり、海産物屋さん由来の立ち飲みである。いずれも長引く自粛生活で需給の逼迫により、新たなチャレンジを始めたとみていい。これが市場原理であるし、需要創造の実践でもある。とにかく今、アメ横に新たな立ち飲みのムーブメントが生まれつつあることは間違いない。

その「三幸商店」。てっきり魚主体の店かと思いきや、それだけに留まらない展開で驚いた。だからもう最初から酒を飲むつもりで店にチェックイン、メニューを見てパッと目に飛び込んできたのが、「エーデルピルス」。あのサッポロの希少ビールだ。店員のスキンヘッドお兄さんに訊いてみた。この「エーデルピルス」は樽生かと。すると予想通り、それは樽生だったのだが、まさかこの簡易な立ち飲みスペースで、「エーデルピルス」樽が飲めるとは思ってもみなかった。早速、それをオーダーした。値段450円はそれほど高くない。

肴も魚介に留まらず、最初にオーダーしたのがホワイトボードにあった「鴨の燻製」（300円）。これも立ち飲み屋ではほぼ見かけないメニュー。一口いただいたが、しっかりとスモークの香りがして抜群に旨かった。

自分の横に陣取っていたのが若い女性。一人で飲んでいるらしいのだが、未成年のようにも見える。それほど若い。煙草を吸いながら、「グレープサワー」を飲んでいる。余程話しかけようと思ったが、いい歳してナンパしようとしていると思われるのも嫌だからやめた。10分くらいしてその女の元に男が来た。なんだ、一人じゃなかったか。話しかけないで良かった。しかし、随分長く彼女をほったらかしていたな。

一方、お店の方々も個性的だった。とりわけ、スキンヘッドの店員さんがフレンドリーな対応で楽しく、そのためお店の雰囲気もよかった。

二杯目は「酎ハイ」をチョイス。「ホッピー」の選択肢もあったが、いずれ日本酒に切り替えるつもりに。何しろ、頭上に見える日本酒の瓶に「開運」が見えたから。けれど、後でそれは空き瓶に過ぎず、現在は在庫なしとか。

さて、その「酎ハイ」（350円）、ナカは宝焼酎で濃さもそこそこ。無難ではあった。つまみの追加は「レバ刺し」（300円）。スキンズのお兄さんが、「おすすめ」と称したもの。胡麻油と塩でいただく韓国風。鮮度は良く、タレも悪くはないが、田町の「宗屋」の「レバ刺し」を知ってしまうと、若干の物足りなさは感じてしまう。

17時前だが、身なりのいい客が現れた。話しかけるとA学園の教諭をされているとのこと。洋酒のラインナップが好みらしく、この店に通っているらしい。通路側の黒板に、その洋酒の銘柄がびっしりと書かれている。自分は洋酒がダメなので興味はないのだが、その後に入ってきた若い男性三人組はある洋酒を目当てに入店。一杯2,500円のシングルモルトをオーダーしていた。

さて、最後は予定通りの日本酒と目当ての海産で〆るか。

ワンカップの「国士無双」（350円）をオーダーし、海産のリクエストをすると、スキンズのお兄さんは対面の小売店に走り、「イカ刺し」（580円）を持ってきてくれた。元々小売用だから、そのボリュームは多く、値段は決して高い訳ではないが余りにも量が多い（下画像は取り分けた後なので少なく見える）。ただ、さすがアメ横。鮮度は抜群だった。

「魚草」よりもメニューは多く、飲みものの自由度も高い。自分としてはこっちの方が好みだ。また、アメ横の伝統的な立ち飲みより、お店としての体裁は悪いがお店の人との距離感はなく、フランクに話せる利点があり、決して劣る訳でもない。アメ横の文化を感じるいい店だ。

会計は1,700円ちょっと。何となく安く感じるのは気のせいか。アメ横をぶらつきながら駅へ向かう途中、もしかしたら「イカ刺し」の分、会計に入ってなかったか？と思い当たる。また次回、訪問して、穴埋めするか。

しばらく歩くと、「三幸商店」から数軒隣に、また立ち飲みを見つけてしまった。その店、おでんがメインの様子。確実に海鮮系エリアはアメ横の立ち飲みの2ndウェイブになりつつある。