「季作」を出て3軒目。再び、一番街のアーケードをくぐる。イニシアチブをとるのはN屋さんである。十字路を左折してOK横丁へ。自分としては、「若大将」、「魚友」はおすすめしない。たが、その店をバスすると、手詰まり感は強くなる。OK横丁の終点まできて、いよいよ進退極まったかと思いきや、N屋さんはそのまままっすぐ歩いた。赤羽を知っている人なら、そこで右折して「まるます家」の前で頭を抱える。OK横丁の先には見どころがないという先入観があるから。
その先入観のないN屋さんはそのまま暗がりの小路を直進した。そして数十m行ったところで立ち止まった。
その右手には一風変わったのでお店がある。瓶詰めのディスプレイがお店の壁面を妖しく彩る。酒場だが、赤羽を支配する大衆酒場ではない。バーっぽいのだが、一般的なバーとも違う。N屋さんはしばし足を止め、女将さんが出てきたところで、「ここにしよう」となった。N屋さんの琴線に触れたらしい。後で思ったのは、これはN屋さんのCちゃんへの優しさだったのかなと思う。2軒付き合わせたお店はおじさんの店だったが、最後は女性が楽しめる店にしたいと思ったような気がする。
お店は「Barber Bar Kalimbar」。
飛び込みで入ったので、予備知識も何もあったもんじゃない。何も知らないまま、オープンエアの路上の席に座り、我々は3人、「生ビール」を頼んだ。何の予備知識もなかったのである。もう3軒目だから、みんな酔っていたし、酒場に求めるものがなかった。
他愛もない話しをして、2杯目のビールを飲んだ後、ふと違うものでも飲んでみようかなと思った。メニューのメインは果実酒だった。正直、果実酒はあまり飲もうとは思わない。けれどホッピーを飲んで、日本酒を飲んできたら、何か違うものが欲しくなった。なので、メニューにある人気No.1という「びわ酒」をいただいてみた。はじめロックで、慣れてきたら炭酸を入れて割るのがいいという。
一口いただくと、ほのかにびわの味がする梅酒的なリキュールだった。これは意外にうまい。そう言うと、Cちゃんもびわ酒をオーダーした。それを皮切りに、実はこの店はただものではないのではないかと思うようになった。店の壁にはガラス張りでたくさんの瓶詰めがディスプレイのように飾られている。果実酒は相当な数を扱っているようだ。
N屋さんが、「りんごのテキーラ割」をオーダーした。いかにも強そうなお酒で、さすがN屋さんとなった。
つまみも何か変わったものがあるに違いない。お店のママに尋ねると、自家製のパンを勧められた。「自家製ジェノベーゼチーズパン」(430円)である。まさか、肴にパンとは思わなかったが、Cちゃんが「お願いします」と言って、それをいただくと、見事に果実酒に合ったのである。
赤羽には大衆酒場しかないと思っていたから、このお店には、存在自体に驚いた。
結局、果実酒はその一杯で、この日の会合はお開きになった。
後日、お店のことを調べると様々なことが分かった。
お店の場所には長年床屋さんがあったこと。そこはカリンバ奏者ブンさんのお父さんが営んだ床屋さんだという。その思いを受け継いだバー。床屋と酒場は親和性がある。新橋にも同じようなケースの立ち飲みがあったし、秋田の「正木理容」という立ち飲みも、かつては床屋さんがあったのかもしれない。
いいお店だったと思う。少なくとも赤羽には少ないタイプの酒場である。そして、このお店についてもっともっと知りたいとも思った。我々に果実酒を勧めてくれたのが、ブンさんなのだろうか。
また、赤羽に寄ったら行こうと思う。
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