所沢は不思議な街だ。
西口は栄えているのに、東口がさっぱりだからである。
その西口を歩く。チェーン店ばかりの居酒屋ばかり。あぁ、ここは埼玉県だなと思う。埼玉都民の植民地化。買い叩かれた土地が資本主義の毒に冒されていく。
そんな中で、立ち飲みを偶然に見つけた。
なんということだ。
ビルの谷間、ネズミが抜けていきそうなその奥にある、小さな立ち飲み屋。
いかがわしい電飾がボクを誘う。
紫の光。いかにも所沢らしい。
だが、本当に立ち飲み屋なのか。看板には確かに立ち飲み屋の文字。だが、もしかしてモドキではないのか。そう思って、店の手前まで行くものの、店内が覗けない。
これ以上、先に行くと、その先は袋小路。したがって、店を覗いたら、もう最後。恐らく、そこが立ち飲みだろうが、そうでなかろうが、ボクは吸い込まれざるをえないくなるだろう。
そこはもう賭けの世界。
半か丁か。
店を覗いてみると、立っている人もいれば、座っている人もいる。不思議な世界。
多分、半転び。或いは転び2分の1。転びは意思を曲げた情けない奴だと思ってきたが、立ち飲みにも転びにもなれない奴って、もっと情けないんじゃないかとも思う。
客のニーズだから?
ちなみに、今日、所沢の「もつ家」に行ったが、ここも半転びの店。立ちと座りが混在していた。所沢ではありなのかもしれない。
店に入ってみた。もちろん、立ち飲みで。
店のマスターにスツールを進められたが、もちろん断固として断った。
瓶ビールを頼む。アサヒとサッポロのダブルネーム。値段は500円。
小柄な店主と老婆のお店。勝手なストーリーだが、この老婆は店主のお母さんではないかと感じた。根拠はないけれど。
その店主、頑強そうな体躯と俊敏そうな動きをする。ワイルドで野性的で、そして自然児っぽい。
もしかすると、店名の「サスケ」とは「猿飛佐助」からきているか。と思うのだ。
いやいや、この俊敏そうな動きは、あの人気番組だった「SASUKE」の挑戦者ではなかったかとの連想も思い浮かぶ。
いずれにしろ、不思議な店名だ。
酒の肴が安価だ。
「竹の子煮」が200円。「柚子大根」が100円。「照り焼チキン」が250円。「しいたけ肉詰」が170円。
どうです。この安価な価格。
実は上記に示した酒肴は、全てボクが食べたもの。
なんていったって、全てがおいしかった。竹の子は旬の味。それが200円で食べられるなんて、さすがは所沢。もしかすると近所でとれた地物かもしれない。
「柚子大根」。「しいたけ肉詰」。
これは東京の立ち飲みではお目にかかれない肴だ。素朴だけど、家庭料理だけど、これがうれしい。そして、この金額。
ビールを飲み終えて、「トマトハイ」をもらった。これも武蔵野の恵み。
これは後で分かったのだが、西武池袋沿線の立ち飲み屋には何故か「トマトハイ」を出す店が多い。
所沢の野菜農家にトマトの生産者が多いのだろうか。
そして、お味は。というと、やはり、濃厚なトマトテイストが本当においしい。甘味があって、適度に酸味もある。
当たりかはずれかと聞かれたら、間違いなく当たりと答える。
ビルの谷間の目立たない路地。
パンチはなくて、地味ではあるけれど、その名の通り、力強い立ち飲み屋さんである。
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