岐阜からの帰り道、「あんかけスパゲティ」でも食べようかと思ったりしたけれど。名古屋駅を降りずにボクは帰京する。
随分と日が長くなった。
17時を過ぎたのに、まだ日は高い。
名古屋を通過するのはもったいないけれど、今駅を降りる気にはならない。なんとなくだけどね。
「きしめん」を食べて帰ろうか。
「チャオ」の代わりに。
名駅のきしめん「住みよし」は各ホーム毎にある。噂によると各店毎にメニューが若干違うらしい。
もしかすると、きしめんの味そのものも違うかもしれない。
1・2番線ホームの店にたどりつき、食券を買う。もちろんsuicaで。
「きしめん」(350円)と「生ビール」(350円)。つまみに「どて煮」(350円)。
カウンターに食券を放り出すと、店のおばちゃんはそれを無表情に取り上げ、何も言わずに支度にかかる。
麺を取り出し、寸胴に入れ湯がく。そうして、おもむろにジョッキをサーバーにかざし、生ビールを注ぐ。そのいずれの動作も事務的だ。
ビールはスーパードライだが、この際仕方ない。「チャオ」は一番搾りなんだけどな。
ビールと「どて煮」が最初にきた。
ビールの注ぎ方はもう適当。でも、駅の立ちきしめん屋に多くは求めない。ビールが飲めるだけでいい。
「どて煮」は幾分水っぽい。それでもおいしく感じるのはこのシチュエーションなのかな。
まだ明るいうちに、立って飲むビール。
数分おきに来る電車から吐き出される人たちを見ながら、ボクはビールを飲む。ここだけ別世界。
客はぽつりぽつりと訪れるが、ほとんどの人は「きしめん」だけを食べて、そそくさと店を出る。酒を飲んでいるのはボクだけ。
ビールを飲み干してしまい、再び食券機へ。今度は「チューハイ」(300円)に。
「住よし」のチューハイは甘いんだよな。
ボクはまたその食券を放り投げると、おばさんがそそくさとした手つきで食券を回収し、再び事務的に「チューハイ」を注ぎ、カウンターに置いた。やや白濁したチューハイ。プレーンなんだけれど、スピリッツ系に甘みがあるのか。飲んでみると妙に甘い。
でも、それもつゆが濃い鰹だしの「きしめん」となら、これがまた妙にマッチングするんだよな。
粗い削り節が色気もなくのっかった「きしめん」をすすりながら、チューハイを飲む。
少しずつ、電車の乗降客が多くなっているのに気が付いて、ボクは少し苦笑した。だいぶ日が傾いており、日射しの色も「住みよし」の看板の色に近づいてきた。
続きは新幹線の中でしようかな。
「きしめん」のつゆがあまりにもおいしくて、ついつい止まらなくなってしまうのだが、ボクは意を決して丼から口を離し、店を出た。
ついこないだまでの名駅とは風景が違う。
人は心のありようによって、見せる世界が違うのは何故だろう。
キラキラと輝いて見える日もあれば、たそがれていく風景がやけに虚しく感じるときも。
こんな日は行き交う人の流れもボクにやたらと厳しいんだよね。
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