明暗くっきりとは、このことだろう。
名古屋太閤口に並ぶ2軒の立ち飲み。一方は、名古屋の立ち飲みチェーン。主菜は鶏。もう一方は、魚がメインの店。これほど、好対象な店もない。
名古屋の立ち飲みチェーン店「大黒」については、既に申し訳ないほど、こき下ろしてきた。今回、ようやく、「魚椿」に入ることができた。その迫力は店に入る前から一目瞭然だ。
「大黒」は緩いが、「魚椿」は筋が通った張りつめたものがある。だから、これまでも何度もトライして入ることができなかった。そもそも、魚系居酒屋は、鶏料理よりも格上のようなイメージがあり、立ち飲みといえども、敷居は高い。今回、ボクは、酔いに任せ、半ば強引にカウンターに割り込んだ。
まず、メニューの数が半端ない。
造りだけでなく、天ぷらまで用意されている。天ぷらができる立ち飲みは極めて少ない。まず、ボクはそこに感動した。
ただ、ビールがいただけなかった。
やっぱり、プレモル。ここまで、プレモルが続くと、間違っているのは、自分の方かと思ってしまう。そこで、日本酒のラインナップを見ると、地酒がそろっていることに気づく。
「蓬莱泉」。
「半田郷」。
そこで、「半田郷」を頼み、ボクはまず造りをいただく。
「蛸ぶつ」(380円)。
店員さんのストイックさがまたいい。隣の店は、女の子をうつつをぬかしていたが、「魚椿」は誰もが寡黙だった。そこが、まず職人。客の喜ばし方は、おしゃべりではなく、酒肴にあることを知っている。
「蛸ぶつ」を頼みながら、天ぷらと揚げ物もオーダーした。
「めごち」と「めひかり」。
こんなメニューは、まず立ち飲みでは出会えない。
「めごち」を天つゆにつけて食べる。
サクッとこぎみよい音がした。
うまい。
そして、揚げ物。抜群にうまい。
天ぷらは、焼き物に比べて、一手間多いと思う。下処理の時間が長い。油の管理も大変だ。だが、そこを敢えて、挑戦していく、心意気にまずは拍手だ。
その結果、とてもうまい魚料理の数々を生んだ。
魚と鶏。
ストイックとチャラ男。
隣に並ぶ、対象的な立ち飲み。
食べログの点数は、両店とも拮抗しているが、「魚椿」にあぶれた客が、「大黒」に流れていくのだと思う。その差は歴然である。