
久しぶりに飛騨高山に行って帰りは多治見、瑞浪、土岐、可児の美濃焼の里を訪ね、さらには瀬戸経由で赤津焼にもという欲張り強行軍の2泊3日の旅に出た。安房トンネルができて車が随分楽になった高山には午前中には到着、毎度のお馴染の上三之町(冒頭写真)などの観光メッカと朝市を巡る定番コースで一日を費やす。今回の高山で新たに見つけた所を挙げるととしたら昼に入ったビストロ・ミュー、飛騨牛ステーキがメインの2500円のランチが美味しかったことぐらいかな。
ステーキなんて食べてしまったから、通りすがりにあった有名店の蕎麦屋まさごの高山ラーメンは食べ損なってしまったが、昼に両方は食べないのが身のためだよな。泊りも山貴<今は宿泊はやめているかも>に予約を入れたら満室ということで、初めての民宿の時代宿山下という所にしてみたが、こちらは民宿と言っても骨董品を展示したりする旅館クラスの大型宿、しかしながら値段は7000円からとお得な宿であった。
最近の高山は温泉が出てからは郊外にも観光施設が出来ているようだが、やはり古い街並みを訪ねるのが主な目的という人が多いのでは。以前には5月の連休にここから飛騨古川、五箇山を通って富山は彫刻の井波、手漉和紙の八尾(風の盆が有名で僕も9月最初のその時期に一度は行って見たいと思っている)<その後に団体ツアーで訪れた時の様子はコチラにレジメ版が、このあとに数回に分けて旅日記があります>、そしてチューリップの咲く礪波などを廻りさらに金沢にも足を伸ばす旅をしたことがあるが、これもなかなか面白い旅でしたぞ。まあ高山は買物でも味噌(3年物の赤味噌は旨いと思う)、擬製豆腐、めしどろぼうなどの漬物、酒などの食べ物から春慶塗、渋草焼やイチイ一刀彫、飛騨刺子などの工芸品などとちょっとばかり手が伸びそうなお土産も多くあり、町全体が観光資源となっていてやはり日本有数の土地だと思うが、骨董屋などのように観光客相手で東京よりも高いというようなところを見て、観光!観光!していると鼻につくというむきも居られそうですな。僕は祭見物も含めてかなりこの町にやってきているので今回の高山はサラッと切り上げて、次の日の焼物紀行を楽しみにして早々と宿に入ってしまった。
美濃焼の中心は多治見、3年前の4月の第2日曜に木曽駒からの帰りに、前から知っていた地元焼物卸販売の丸志げ陶器に立寄ろうと電話したところ、今日はたじも陶器まつり(陶祖祭<現在は美濃焼祭というらしい>も10月にあるという)があってそちらに出店していると言うので、これは面白いと場所を聞いていざ出陣と勇んで向かったことがある。JR多治見駅裏に駐車場が用意されシャトルバスで会場の街通りの北端に到着、ここから駅まで戻る道筋両側にずらりと、地元陶磁器業者や個人作家を目指す若手達等のテントが並び、途中の大手販売店の花御堂前広場には飲食屋台も出てにぎやかなこと。値段はとみると益子や笠間の陶器市よりかなり割安感があり、少々難あり品などではパスタ用にピッタリといった赤絵手書き大皿などは、絵の一部がやや薄く飛んでいるといっても使っていてまず分からないようなものが一枚400円というのを、6枚まとめて2000円で購入したものが下の写真の皿である。美濃焼は古くは黄瀬戸、桃山以降からでは織部や志野が有名で、作家物でなければかなり良品でも一律値段で安いものが並んでいたので、ついついぐい呑など数点を選んで買ってしまったがこの市の割安感は大きい、伝統のある窯業地の実力は侮れないとつくづくと思ってしまう。
結構大き目の手描き絵皿
丸志げにはこの地図だけでは行き難いかも
今回も中心部からはちょっと離れた丸志げ陶器の自宅兼ショールームへまずは直行、応接室の奥の部屋に上がって展示品を見せてもらう。ここは高級料亭の器を御家庭でがキャッチフレーズで、多治見周辺のかなり名の売れた美濃焼作家の作品を置いていて、以前に駅の案内所で良い物を見たかったらまず何処がよいかと聞いたら教えてくれた店である。人間国宝の鈴木蔵や加藤卓郎とか大御所加藤孝造<その後に人間国宝になった>や若尾貞則などはもう高過ぎて販売用には置いてはいないものの、主人が所有のぐい呑などで多少は大家ものがあると加藤幸造のピンクが美しい志野を見せてもらったことがあるが、絶対に売らないと言っていた。その次のランクの作家物や、主人がこれはと見込んだ若手(若手でも特にサラブレッドと主人が呼ぶ作家)などの作品を扱っていて、彼らとの付合いの深さが感じられる話を聞きながら品選びをするのも楽しい。こういう時の女房はかなり目が利いて、こういうものが買いたいという目的も無いままにこれはと思う物を抜き出していくと、これがかなり高い物ばかりになってしまうのですよ。御眼が高いとお世辞を言われながらとてもそんなのを全部は買えないので、その中から絞り込むのに苦労する。林正太郎の志野の花器などかなり良かったが、これは大き目なこともあって相当に高い。迷った末に河合竹彦の志野の小品と、今人気者の一人という水野輝幸のコーヒーカップを買い上げ。我が家にはここで買ったコーヒーカップはもう3客ほどあるが、その内では渡辺的矢の白地に丸と三角の単純線画練り込み模様の2客は僕のお気に入りになっている、わりかしと荒っぽい作風の器が好きなのにこれだけは何故か響くものがあるんだ。
河合武彦の掛け花活け
渡辺的矢作
多治見では美濃焼卸団地があって、全体をまとめた展示販売所や各社のショールームがあるのでそちらも廻るのもオススメ、破格な一品があったりしたら儲けもので、期待感だけで見て行ってもいいんじゃないですかね。また瑞浪や土岐、可児にも卸売団地や工芸会館などや資料館があり、車でないと廻れないけれど焼物好きなら是非行ってみたいところ、やはり古くからの焼物の歴史があるというのが魅力になっている地域だ。特に土岐の卸団地では喜楽という店など作家者の品数が多かったからチェックしておきたいし、周辺の町ごとの陶器市も5月連休や10月にもあって、とにかく安くなっているし良いものが多いから買いたいものがあれば見逃せないですぞ。
ステージ花御堂
今日の宿はその土岐にある柿野温泉湯本荘あさひ館というところ、この旅館は交通公社で予約したのだが、なんでこの時期こんな所に行くのかと窓口の人に女房は不思議がられたとか。丸志げの親父に泊る所を話したら泉質が良いですよと言っていたが泊り客は我々一組のみ、様子からはどうやら近在からの日帰り客が中心と見た。大浴場はただ一人、外風呂は夜10時迄で翌朝はまだ沸かしていないとのことでこれにも入ってから夕食に、松茸料理も入って料理はまずまず、もっと周辺の観光案内も充実させ市役所観光課あたりが宣伝してやったらよいのではと、ちょっとばかり宿には可哀想な気分であった。
翌朝は車で30分ほどの道の駅どんぶり会館に朝のコーヒーをと立寄ったら、2階のカフェラウンジは家族連れで超満員、子供連れだけじゃなくおじいちゃんもおばあちゃんもでびっくり。後で聞くと中京地区は休日の朝食は喫茶店のモーニングに家族全員で行くのが習慣だとかで、トーストとゆで卵がめっぽう安いんだそうだ、所変わればだねぇ。
多治見では昼をとるなら駅近くの駐車場側から少し歩いても行ける欧風食房魯庵(その後移転したらしくR19を超えた虎渓山に魯庵本店と電話帳に出ていた<駅近くは閉めてしまったらしい>。R19から分かれて入っていく住吉町から虎渓山方面には他にも和膳のわさびやイタリアンのPAPA’zなどのシャレた店や、豆工房灯屋など拘りのありそうな店がいくつかあり、また有名な虎渓窯やお寺を回って北側に行けば、ワインを作っているカトリック多治見修道院などの名所もある)がお薦めであった。雑誌に出ていたのを知っていたので探して行ったのだが、駐車場も数台分あって便利。ランチの2500円コースは11品をお箸で戴くのだが、鄙には稀なというと失礼かな、1500円のセットも美濃焼の和風角皿に盛られて器も御馳走ですねぇ 、さすが多治見だと感じさせられた。
TVにも出たうどんの信濃屋はこの斜め向い側にあり、常連さん優先席というのがあるらしくその旨張紙をしていた。瀬戸にかけてはころうどんなるものが名物らしいのだが、遠くまできてうどんでもないかとまだ食べてはいない。その他には鰻の老舗などもあるようだが、浜松生まれの僕はあまり動かされないからよっぽどでないと。一服にと偶然に入ったはなしょうという店、工芸ギャラリー喫茶となっており和風自宅を改装して始めたようで、我が女房が喜ぶ着物を洋服に仕立てたものや小物類なども展示販売、軽食まで出来るので来た折にはちょっとばかり一休みというなら寄って見たいところではあった。この周辺の都市は焼物好きにはたまらない土地、多治見以外はまだ細かく歩いていないのでどんな目ぼしい店があるかは分からないが、土岐、可児、瑞浪、関、美濃と陶器だけでなく刃物や和紙など工芸品に事欠かぬ地域であることは確かである。