小寄道

日々生あるもの、魂が孕むものにまなざしをそそぐ。凡愚なれど、ここに一服の憩をとどけんかなと想う。

オンリーワンに不寛容な社会とは

2018年10月03日 | エッセイ・コラム

熊本市の市議会において、緒方夕佳市議がふたたび「議会の品位を落とした」として重い処分を受けた。前回は議場に赤ちゃんを連れてきたことで厳重注意をされたが、今回は出席停止だというから、どんなことをやらかしたのか・・。

せき予防の「のどあめ」をなめながら質問したからだという。質問の内容については省くが、最後のほうで議長が緒方氏に「何かくわえておられますか」と尋ね、「のどあめをくわえています」と答えたところ、即座に「暫時休会」といった怒号が周囲から浴びせられ、そこから8時間にわたり紛糾したそうである。

最終的に「議員の品位を軽んじた」として同日の出席停止処分が決まったとのことだ。

「あめなんてまったく気づかなかった。よどみない質問で、マイクが不快な音を拾うこともなかった。あれがマナー違反だなんて」と、議会を傍聴していた市民団体の会長N氏(79歳)の感想もあった。

▲東京新聞10月2日朝刊記事より

熊本出身の方を過去に2,3人知っているが、どちらかといえばバンカラ気質で男中心社会を標榜しがちなところがあった。東京で生活してさえそんな気風であったから、地元の熊本であったらさぞかし古風で、男尊女卑的な雰囲気を想像してしまう(3,40年前の個人的感想)。

新聞記事にも、地方議会というものは「前例踏襲、伝統にしばられすぎて過敏」になり、議会での規則にふれるような異端分子にたいして排除などの圧力をくわえる、と識者の見解を紹介していた。

地方議会はいわゆるムラ社会だから、文面になっていないルールもある。それを弁えない新参者に対しては、不寛容で「いじめ」に近い状態もおきやすいのでは、と推察される。住民の縮図としての議会に、フレッシュで意欲的な若い人は気後れして参入しづらい。「なりて不足が深刻化し、議会の活性化が停滞し、悪循環が起きている」と、記事は結ばれていた。

どちらかといえば筆者は、オンリーワン志向が強く、長いものには巻かれろ的な体質、事なかれ主義の組織を毛嫌いするタイプである。そのために自ら失敗や損を招いたこともあった。協力者をうしない、孤独な状態になったこともある。しかし、そのことで後悔したり、なおさらに独善に陥らないように努めてきた。生来の性向なのだから仕方がない。

組織から理不尽にも排除されようとしている人、多勢に無勢の状況、勝ち目がなくとも自分が正しいと信じたことを曲げない人、孤軍奮闘する人、そういう人たちに筆者はエールをおくりたい。


先日、貴乃花親方が辞職願をだした。「不撓不屈」の精神、なにごとも「忍耐、がまん」で22回の優勝を果たした名横綱が、あの事件以降、居場所をうしなったからであろうか、遂に部屋の存続さえも諦める境地に至ったようだ。

相撲協会の内部事情は知る由もないが、弁護士を介在させての話し合いまで行われていたのだから、進退窮まるところまで追い込まれたことは間違いない。あと何代か経てば、理事長までになる資格、風格をそなえていた(?)はずなのに・・。

古臭い角界の因襲を打破したい貴乃花親方のオンリーワン的な振舞いに対して、伝統を重んじる協会は「排除の論理」をはたらかせたということか・・。

元力士の理事長が、「ガバナンス」とか「コンプライアンス」なぞという今どきの言葉を使って、組織・体制を維持することを盾に異端分子を追い出すさまは、まさに小賢しいことだとしか思えないのだが・・。一匹狼は目障りで、体制に逆らう「出る杭は打たれる」ということなんだろう。

 

一匹狼といえば、最近の国連総会のトランプ大統領の演説が、「発足2年を経ずしてわが国の過去の政権をなし得なかった成果をあげた」という自画自賛の内容で、多くの出席者から嘲笑されてオンリーワン状態になったという記事があった。

「総会場からクスクス笑いが起こり、やがてどよめきとなって満場に広がった」とジャーナリスト木村太郎は書き、しかし彼は、「批判的な言動をこれまでに放置したことはない」とトランプ大統領の報復を危惧している。

世界の外交官の多くが侮蔑的な態度をしめすなかで、「これは思いがけない反応だが、まあいい」と、トランプは苦笑いするのが精いっぱいだったらしい。マスメディアの反トランプ陣営は、「大統領、世界の物笑いの種に」と面白おかしく報道した。こんなときのトランプは必ずや反撃の矛をむけると、木村は警戒する。

 Photo:Drop of Light / Shutterstock.com

もともとトランプ大統領は国連そのものに批判的であるし、ユネスコと国連人権理事会からも脱退を表明した。パレスチナ救済難民機関への拠出金も打ち切った。だから、国連分担金も、近い将来に削減する意志を表明するだろう。「トランプ大統領を嘲笑した各国の外交官たちは、後でほぞをかむことになるかもしれない」と、その記事は結ばれていた。

トランプという名の一匹狼は、四面楚歌におちいっても傍若無人にふるまうことをやめない人だ。木村の推量が杞憂であることを願いたい。

アメリカという国は、軍事力や財力などが膨大でその権力を集中させれば、世界を牛耳ることさえできる。そして、そのパワーを一人の男に委ねている。つまり、USAのトップ・トランプ大統領は、独裁者志向のオンリーワン、地球でいちばんの怖ろしいモンスターなのかもしれない。

 

 



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