小寄道

日々生あるもの、魂が孕むものにまなざしをそそぐ。凡愚なれど、ここに一服の憩をとどけんかなと想う。

トランプ占い

2016年11月11日 | 国際・政治

 

大衆というものは、その本質上、自分自身の存在を指導することもできなければ、また指導すべきでもなく、ましてや社会を支配統治するなど及びもつかないことである。この大衆が完全な社会的権力の座に登ったという事実は、・・民族や文化が遭遇しうる最大の危機に直面していることを意味している。こうした危機は、歴史上すでに幾度か襲来しており、その様相も、それがもたらす結果も、またその名称も周知のところである。つまり大衆の反逆がそれである。   オルテガ・イ・ガセット 「大衆の反逆」より


                       

                 ▲フランス革命由来の自由の女神像。大衆の反逆その象徴ともいえる。
 

遂に来た。トランプという男が。

不平、憤懣、鬱屈、差別など、負の感情をなんの衒いもなく吐き出す男が頂点に立った。かつてのアメリカンヒーローは、艱難辛苦を厭わず辛抱を重ね、愚痴もこぼさない寡黙さがカッコよかった。その代表ともいうべきイーストウッドがトランプを支持したのだから、軟弱な白人男たちは、やっぱり隠れトランプになって投票したんだろう。

女性差別、レイシストのレッテルを貼られた男が大統領になるのはアメリカでは初めてだが、歴史上にはいくらでも存在していたので不思議はない。

さらに、トランプはプアホワイトだけを代弁したのではない、という投票結果の詳細をご存じなら明々白々。まさにUSAの大衆、世俗の顔として頂点に立ったのだ。

木村太郎は毎週日曜日に、老練アメリカウォッチャーとして米国社会・政治の情勢を読み解くコラムを東京新聞に連載している。トランプが大統領になる確率は99%だと予想し、彼はいまマスコミに持てはやされている。確かにアメリカ人の行動・心性を熟知した分析は、独自の情報網による確かな裏付けもあった。以前、私は「トランプに任せたい人々」というブログを書いたが、木村の分析や知見は見過ごせなかった。

そこで今回はこれらの見解を踏まえ、じぶん流にトランプ大統領及びアメリカの今後の動向、局面を占ってみた。

(残念ながら、わがビデオニュースはなぜ、アメリカ政界の分析を半端にしたのか。そもそも、その失敗をお気づきだろうか。ゲストの人選のことだ。いや、アメリカの民主主義の歴史、文化、知識人に目を曇らされていたのか。この記事とはまったく関係ないが、常連だった日銀の副総裁・岩田規久男になぜ、アベノミクスの「今」を問わないのだろうか)

 

経済面 内需拡大、インフラ公共事業の拡充により、プアホワイトたちが明日に希望をもてる、安定した経済的情況をつくることができるかが、短期的な重要ポイント。
長期的には、超リッチたちへの大幅な累進課税や、高額医療費などの社会保障の抜本的改革がトランプにできるかどうかが問われる。
最初に、オバマケアの切り捨てや法人税の軽減措置に手をつけたら、この政権の長期維持は見込みがない。
 
そのほか、トランプ自身の財団がタックスヘイブン経由の資金運用、隠し財産が明るみに出たり、女性差別あるいはセックススキャンダルによる弾劾裁判が起きたら、ヒラリーの旦那以上のまっくらな奈落が待っている。(冗談のつもりだが・・)
 
アメリカはたぶんTPPから脱退し、遅かれ早かれ自国産業の保護のために、高関税化への画策は絶対に実行されるはず。世界経済は混乱すること必至で、その波及効果により中国の経済ショックが起きたら、まったく次元の違う世界パニックが起きる。
どんな政策を展開しても、金融経済に依存しているアメリカのことだから、EUか中国のどっちに転んでも不安定要因は解消しないし足元はおぼつかないだろう。
 
アメリカの経済成長パラダイムは、低所得者層と移民によって成立していることをトランプが早く気づき、処方できる否かがアメリカ経済の傷の深さの度合いとなる。


国際面 世界の警察、パックスアメリカーナ的統治スタイルから脱し、トランプならではの経営者的な協調路線がうまく実現すれば、短期的にうまい具合にいくだろう。

危惧するのは、現在のシリア周辺の紛争が過激化し、EUや北アフリカへの紛糾(難民流入以外の理由)をいっそう招くことである。

いま現在、トランプには政治的なユダヤロビーとの確かな関係があるか、私は確認できていない。イスラエルを巻き込んだ、中東情勢の見通せない変化が心配だ。

アメリカの軍事力が撤収することで、政情不安定、紛争が拡大する地域は全世界にある。それと、プーチンと協調路線を築けるかは未知数だ。習金平・中国にも同じことがいえる。

内政不干渉が確約されても、国際政治の力学ではウィンウィンの確立は難しい。

アメリカ経済の根幹は、軍産がまったり融合した産業形態が特長だ。トランプがもし、隠されていた軍事的ポテンシャル、その国際的な優位性を体感的に知り尽くす。そして、自分の欲望と照らし合わし、思いのままに活用するメリットを経営者的に活用し、それを対外的にどう振舞うかは誰にも予測できない。

トランプの国際・外交的な知識やセンスは、ほんとにゼロに等しいのか。もしそうした欠落を彼自身が知り恥じる、さらに謙虚に教えを乞うような度量はあるのか・・。

心底アメリカを憂い、これから実質的にトランプをサポートするスタッフの能力如何で、未来は決まるであろう。

モンロー主義の再現はないと思うが、大衆そのものが内向きなのはやはり低収入が最大要因で、たとえば海外旅行とか歴史文化の体験に金をかける余裕がないからだ。

手近なSNSだけの情報交換に頼るだけの、低所得層の庶民の惜しいかな「大衆の反逆」的な先細り帰結は、「アラブの春」で見ての通り。

次はやはり。


日本について アメリカ軍の駐留経費を日本が相当以上に負担していることを、トランプは知っているのだろうか。中国、フィリピンとの友好関係をさらに深める政策を執り、東シナ海のソフトな覇権と平和維持が確定したならば、沖縄からアメリカ軍が撤退する蓋然性ははなきにしもあらず。日米同盟は普遍的価値を共有しているという認識は幻想だ。日本の政権が期待するほど、トランプは日本を重視していないし、経営者感覚で競争相手として日本を見ているのではないか。

アメリカ追随路線を保持する日本の官制経済シフトが、どう振り回され、どう克服していくかを注目したい。親米従属のナショナリスト、IT上の似非右翼がおかしな方向(トランプを敵視する)に舵をきらないことを祈りたい。

北朝鮮のキム兄ちゃんをトランプが招聘し、何らかの国際的相互の承認ができるなら、劇的な平和的進展はありえる。(CIA、NSC:アメリカ国家安全保障会議が工作して実現はほぼ不可能だ)それが日本にとっての良否となるかは判断できない。

様々なオプションを選択し、なおかつ9条頼みの平和ボケから覚め、日本人一人ひとりが本国の安全保障に真剣に向き合わなくてはならない。いい頃合いだ。

アメリカへの従属が自然解消されるというのもヘンな話で、日本が自立することはやっぱり受動的な要因に拠る。としたら悲しい限り。

外圧がなければ日本は変わらない。この説はいまだに生きている。


 



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