小寄道

日々生あるもの、魂が孕むものにまなざしをそそぐ。凡愚なれど、ここに一服の憩をとどけんかなと想う。

太陽のことを誰も知らない

2013年02月06日 | エッセイ・コラム

 三鷹の国立天文台教授・常田佐久氏の「太陽で何が起きているか」を読んだ。
2006年打ち上げ以降、瞠目すべき画像やデータを送ってくれている太陽観測衛星「ひので」のプロダクトマネージャーであり、太陽研究に携わる最先端の科学者としての初めての著作だとおもう。
新書だから一般向けに分かりやすく書かれていて、「太陽の異変」、「太陽の実態」、「ひのでの成果」、「現在の科学的観測の実情」など、太陽活動と地球とのかかわりがすんなりと理解できる内容となっている。

 去年からマスコミでも取り上げられている「太陽の4重極構造」はまさに「ひので」の観測から予測されたわけであり、ここ300年ほど順調だった「11年周期」が崩れ、今年がマウンダー極小期まえと同じように13年周期元年になるかどうか。
太陽に興味ある人にはまさに目が離せない今日この頃なのである。

Korona

上の写真は太陽のコロナ。NASA.SDO衛星

(もちろん次の周期、2026年から13年周期になったら本格的、約100年近く太陽は磁場としての活動をほとんどしなくなる)
(余談だが世界の太陽物理研究学会では黒点のことをNIPPONといい、それだけ「ひので」は世界から注目されている)

 さて、ガリレオ以来、黒点数など誰かしらが太陽を観測してきたわけだが、いま太陽の磁場が4重極構造になりつつあることなど誰が予想したであろうか。
(いままで北極・南極は交互にN極とS極に定期的に反転する2極体勢だったが、北極と南極にN極がふたつ、赤道上にS極がふたつの、計4重極になりつつある)
 「宇宙が何で出来ているか」は衆目を集めたが、気候や自然環境、それに連関する食糧生産および実体経済に波及する太陽活動がこれからどうなっていくのか。こちらの方が私たちにとって、切実な問題ではないか。

 わたしは東北大震災のとき、このブログで太陽黒点数と地震についてふれた。
口に出して憚れる仮説まがいのことをさもありなんと書いた。震災のショックとその勢いによって、ずぶの素人としての特権を行使したまでである。
太陽は巨大な磁石でもある。地球もまた磁石ともいえる。太陽系の3番目の惑星である地球は、太陽の影響を大きく受けている。
だから、地球内部で活発に流動しているマグマにたいして、太陽の活動が磁気的な何らかの影響を及ぼしている。そんなふうに考えてしまう私を、笑ってくださいとしかいえない。
オーロラの現象でさえ完全解明されていない現在、火山活動や地震が太陽活動となんらかの相関関係はないのか。その可能性について1パーセントでも留意すべきではないか・・・。
 確かにファクトがない限りそのことに触れない。このことは科学者として当然の態度だと思うが・・。

はなしはちょっとずれます。

地球の気候環境でおおきくクローズアップされた「宇宙線と雲との相関関係」、つまりスベンスマルク効果ついても、常田氏の「太陽で何が起きているか」でかるく触れらている。いまのところ仮説どまりだが、「ヒッグス粒子」発見で有名なCERNにおいてクラウド実験にまで進んだ。
どういうことかというと、宇宙線によって放出された電子が雲の核形成の触媒として作用することを実証しようとするもの。つまり太陽活動が低調になると太陽磁場が弱まり、地球に降り注がれる宇宙線の量が増えて雲がどんどん増える。それは雨を降らさない特殊な超微粒子の雲で、地球をおおい尽くすだろう。で、太陽の光エネルギーが届きにくくなり、やがて地球全体を寒冷化するだろうという仮説である。
1,2年ほど前、BS放送「コズミック・フロント」でも「太陽異変?」の放送のとき、スベンスマルク博士やジュネーブCERNの加速器が登場したことは鮮明におぼえている。

そういえば、カリフォルニアのビッグベア天文台も「コズミック・フロント」で紹介された。

これは地球上では最大の太陽観測反射望遠鏡をもち、地球の大気のゆらぎの影響を受けないように湖面の上に建設された美しい天文台である。
さらにゆらぎを徹底的に補正するような最先端技術が投入されている。ここで観察された太陽活動の表面映像も公開されたが、その美しさとダイナミズムには心奪われた。
このビッグベア天文台の最新成果については、「太陽で何が起きているか」ではまったくふれられていなかった。どうしたものか?

「ひので」の次世代機SOLAR-Cの開発計画もあるらしい。常田氏はじめ日本の研究陣の活躍を願ってやまない。

追記:可愛いお姉さんがナビしてくれる「週刊宇宙天気ニュース」は残念ながら去年で終わったようだ。アメリカのSDO衛星の観測映像が見られる本家の「宇宙天気ニュース」は健在で、フレアの爆発とかコロナの現況を生でみることができる。http://swnews.jp/


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