小寄道

日々生あるもの、魂が孕むものにまなざしをそそぐ。凡愚なれど、ここに一服の憩をとどけんかなと想う。

スノーデンに関する若干の補足コメント

2016年06月10日 | 国際・政治

 

 

エドワード・スノーデンに関する若干の説明を補足したい。ブログとはいえ、記事の事実関係はそれなりに正確を期しているつもりだが、後になって冷や汗ものの間違いが見つかることがある。恥をかくのもいいが、読んだ方が真に受けてそのことで恥をかくことは、私にとっても不本意である。

まあ、真に受ける人なぞ皆無であろうが・・。ともあれ前回の記事に関して基本的な誤りがあったので、その補足的な説明を記すことにした。スノーデンはある意味で抜け目のない用意周到な男だが、私は余りにも抜け目が多すぎる。ここに深謝して訂正します。

▲もう、「スノーデン事件」は、はや3年が経過した。ことの次第、結果、評価はいまだ定まらない。パナマ文書もおなじことになるか。後世に任せるしかないのか・・。


まず、彼が日本で生活していたこと、それを年少の頃だと記したこと。これは大きな間違いである。正しくはスノーデンが24歳のときに、NSAの派遣職員として米軍横田基地に2年間ほどいた。彼はその時、DELの契約社員でもあったらしいのだが、これに関しては未確認。

彼は幼少のとき、日本の「鉄拳」というゲームに夢中になったり、「攻殻機動隊」(※注)など多くの日本製アニメを見ていたことは確か。横田基地にいたとき、NSAによる個人のメタ情報収集・監視に辟易していたので、日本のサブカルチャーを楽しむ余裕があったかどうか・・。

2012年に日本を離れハワイに移ったが、年収12万ドル以上で住宅付きの上級職員なみの扱いをうけている。彼自身は内向的で人付き合いはないが、社交的な彼女(8年間の付き合いがあった)を呼び寄せて同棲していた。「ハワイでの生活はパラダイスだった」とガーディアン紙に語ったらしいが、バレないよう機密情報を如何に、誰に伝えるかに腐心していたのもこの時期だ。

彼は「ITの天才」と呼ばれ、二十歳前には既にNSAで仕事していた。学歴がないのに高給取りだったのは、スノーデンがたぶんハッカーだったからで、IT技術に精通した彼は「システム管理者」にもなり、国家最高の機密情報のアクセス権を持っていた。彼はCIAにも3年間ほどいたことがあるという。(彼は契約社員としてNSA、CIAに採用された。何か不測の事態があった場合、彼を簡単に切り捨てられること。責任の全体を彼に帰すことができるという政府の思惑がある。だから学歴がなくても、高給なのだ。)

CIAに在籍したときは、スパイ・工作に等しい仕事が多く、いい思い出はなかったらしい。スイスのジュネーブでは金融操作に熟達した銀行員を罠にはめ、その人物のリクルート工作に関わった。彼は「良心の呵責に苛まされた」と述べたことを記しておく。


話はもどるが、スノーデンが多感な思春期の頃、両親は離婚した。彼はまず母親の、ワシントンDCとボルチモアの中間くらいに位置する白人だけが住む高級住宅街の実家に身を寄せていた。プールとテニスコートがある家庭であったが、彼はハイスクールを卒業していない。コミュニティ・カレッジに行ったことがあるものの、学位は持っていない。

彼の父親は30年間沿岸警備隊に務めていて、国家の権力・役割を最小限に止めるというリバタリアン主義者だった。その父の影響か、反発なのか、スノーデンは国家の役割を重視する右翼的言動が目立ち、かつ銃規制反対論者であった。両親が離婚したこと、彼の言動、情緒性などにおいて何かアンバランスな面があること、それらに相関関係があることは確かではない。

そして、高校を退学し、その後アメリカ軍に入隊(州軍ではない)。除隊後、人付き合いを避けたり、ネットではゲームオタクとして有名になった。また、同じコードネームで政府を擁護する右翼的な考えも書き散らしていたこともある。ただ、ブッシュ大統領のやり方(個人情報監視)をこき下ろす言動もあったとのこと。いずれにしてもスノーデンはかなり早熟で、何かを秘めながら青年になったという印象がある。(以上の彼に関する情報は「スノーデン・ファイル」に拠っている)

オバマが大統領になった時は、彼の家庭環境そのものが共和党支持派だったので、当然のごとく彼に投票していない。ただ、グアンタナモ収容所に関しては、オバマはそれを改善するか廃止するかと期待していたという。「個人の尊厳や自由を尊重すべし」という理念をもつスノーデン。オバマには失望させらたと、亡命後に語ったという。

彼は以上のように国側の人間であり、政府のIT関連のシステム管理者であった。と同時に、アメリカの憲法をリスペクトしていて、「個人の自由」は政府でも侵すことはできないと公言して憚らなかった。

最後に、スノーデンは「正義と不正義のはざま」にいて、一種のダブルバインド(二重拘束)状態にありながら、自分の信念を貫いた男だと評価したい。

個人情報に対する無際限な関与、人権を無視した監視は告発しなければならない。そのために国家の最高機密を漏えいしたのだが、彼の才能、出自や環境(地位、技能)を考えると、スノーデンにしか出来得なかったことだ、と今さらながら感心するしかない。

 ▲彼は引きこもりでもゲイでもない。見た目では判断を誤るという、典型的な行動型知性派人間である。ゴルゴ13は、過去の人であろう。

 

スノーデンは自身の顔を公表し、手記を書き、さらにドキュメンタリー映画にも出演した。今はロシアで幸せに暮らしているという。訴追が免除されるならば祖国に帰りたいという。彼について書きたいことは以上である。

6月11日より、本人が出演するドキュメンタリー映画「シチズンフォー スノーデンの暴露」が公開される。その予告は↓から。

映画『シチズンフォー スノーデンの暴露』予告編

 

追記:「シチズンフォー スノーデンの暴露」が公開されて暫くしてから見に行った。貴重なドキュメンタリーであることは間違いない。スノーデンだけが沈静で、暴露を受けとめる方のジャーナリスト達が浮足立っている。それが面白いドキュメントになっている。つまり、スノーデンの底知れない決断力、強い確信を感じさせた。映画的には、なんかバタバタしている印象で、カメラワークなのか編集なのか、私なら合格点は挙げづらい。最後に、スノーデンが彼女をロシアに呼び寄せたと分る、望遠による一瞬のショットがあった。窓際に映る、睦まじい二人の映像。これでホッとしたまま、映画館を出ることができた。(7・15記)

      

▲一度くらい映画館で人知れずに撮影してみたかった。東大に来ていた弁護士も出てきて思わずショット。しかしイメージフォーラムは、時間帯にもよるのだろうが、観客はいつも大体10数名である。お小遣いの配分なのか、興味の違いなのか。映画館が身近だった頃の生活は忘却の彼方に・・・か。

 

 (※注)これは間違いかもしれない。『エヴァンゲリオン』が、この時代にはフィットしていて、スノーデンの世代と同期している。アニメに関してはど素人であり、比較検討する手立てがない。この(注)も、東村アキ子経由の山田玲司の「ヤングサンデー」を視聴して、訂正しなければならないと判断した。(2018 /5・31記)


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