小寄道

日々生あるもの、魂が孕むものにまなざしをそそぐ。凡愚なれど、ここに一服の憩をとどけんかなと想う。

32年前、訪中した時のこと

2020年01月26日 | エッセイ・コラム

中国湖北省の首都武漢で、新型のコロナウイルスが猛威をふるっている。感染すると、重症の肺炎になるという。死に至る人も次第に増えてきた。いま世界的な感染拡大が憂慮され、新聞やネットでも、その話題は引きも切らない。

それはそれとして、湖北省の首都武漢について、どんなところなのか解説している記事が少ない。で、自分なりに調べてみたら、1000万人以上の人口をもつ大都市で、自動車はじめ鉄鋼、機械、造船などの製造業、さらに電子や家電など先端産業の一流企業が集中する注目すべきエリア。有数の日本企業が、この地に進出しているのも頷ける。

中国における物流や文化の要所であるのは、長江(揚子江)中流域に位置しているからだ。つまり上海からの水運が発達し、人や物の流通が盛んであるのは、なんと三国時代からだそうだ。あの劉備が三顧の礼をしたことで有名な諸葛孔明。彼が蟄居していた古隆中(襄陽)は湖北省にあり、今では観光スポットになっているという。

武漢は内陸部にあっても、水運だけでなく国道や鉄道が交わる要衝の地であり、さらに国際空港もある。まさに、人、モノ、技術、情報のハブ機能(Nega要素は列挙しない)をもつ重要都市だ。湖北省とは洞庭湖の北を意味し、長江から大量の水が流れ込む潤沢な土地だ。

雲夢大沢(うんぼうだいたく)と呼ばれるほどの豊かな農産物の生産地であり続けた。現代にあって、それはどう変容したのかも興味がわく。

いま中国は、旧正月の「春節」を迎えていて、国民が一斉にまとまった休暇をとる。都会に出稼ぎに行き、正月になれば故郷に帰省する。これは日本と同じ、いや世界における都市と地方、人の流れ・往還する基本だ。富裕層は言うまでもなく、一般人の動きに反して海外旅行を控える(この文を修正。お金持ちは庶民と真逆の行動形態をとる20. 4.8記)。

まさに今、武漢発(?)の感染患者が内外に移動しているところだが、なんとか水際で食い止めてほしいものだ。中国政府がその対応に遅れをとったのは、いかなる理由なのか知りたいが、今は大事にならないよう祈るしかない。(『中国全省を読む地図』(新潮文庫)など参考)

 

さて、春節で思い出したのだが、32年ほど前に小生は、中国雲南省に旅した。そのときの懐かしいものが先日、終活準備よろしく身辺整理をしていたら、意外なところから出てきた。香港から広州の深圳(シンセン)へ鉄道で行き、そこからまず昆明に行く。その先は未定の個人旅行で、懐かしいアルバムだ。

旅の発端は、香港の旅行会社で、偶然にも日本人留学生A君に会い、中国の貴重な情報を教えてもらう、偶然の出会いから始まった。そして、A君が宿泊していたチョンキン・マンションで(人によってチョンチンと発音)、日本で仕事したこともあるユニークなパキスタン人とレストランで意気投合。小生の旅に、広州まで二人が同行してくれることになった。今となれば不思議な出会いの連続だ。

こうして3人の珍道中が始まったのだが、そのことはブログ2番目の記事「深センの思い出1」を書いた。その時は写真を添付するテクニックがなかった。古い記事を遡って再編集するのは、今となっては面倒な作業である。いい機会なので、この記事に続きとして写真を貼り付けることにしよう。

旅の始まりは、折しも春節が終わろうとする時期だった。中国に帰省していた大勢の人々が、香港に戻るところに遭遇したのは運が良かったのだろうか・・。もう昔のことなので記憶も薄れているが、写真からいろいろと甦ってくることがある。

ブログでは「思い出1」とあるように、その後も続ける予定だったのだが、書く気がなくなったわけだ。写真とキャプションだけであるが、この記事の最終版としたい(画像は、古い写真からスキャンしたので、クオリティはガクッと落ちる。ご海容願いたい)。

深センの思い出1:→https://blog.goo.ne.jp/koyorin55/e/5eeca951d84173e962c34e1c63a845f5

 

 

▲香港では有名なチョンキン・マンション。世界から商人や旅行者が宿泊する。4つのブロックに分かれ、ショップやレストランが多種多彩。

▲香港と深圳を結ぶ駅舎にて。春節で中国へ里帰りした人々の数に驚く。びっしりとした行列が途切れない。

▲中国の深圳駅。香港から戻ってきた広州人も多い。外国人旅行者は、乗る車両、使う紙幣も専用のものを使った(今も同じ?)。

▲深圳は経済特区に指定されたばかり、あちこちで建設ラッシュだった。建設現場は、高層ビルでもすべて足場が、竹製であることに驚く。この頃、ファーエイは起業していたか・・。

▲広州では安いドミートリーのホテルに泊まる。一泊500円くらいだったか。

▲春節が終わったのに、花火で遊ぶ少年たち。

▲初めて中国製のハムを見て感動。もっともこれらは売れ残りだったかもしれない。

 

▲32年前の広州駅前。

▲▼昆明の街にて。30年ほど前には、のんびりとした田舎の雰囲気。今はどう変わっているか?

▲昆明市の中心街。ここは軍事都市でもあり、軍人が多かった。インドとの戦争があって、兵站の拠点になった。

▲昆明から近い石林にて。昆明から、次に大理に行く予定が、重症の肝炎(感染力強い)が流行して旅行者は移動できず。雲南省南部にある西双版納(シーサンパンナ)と呼ばれるタイ族自治州も行けずじまい(現地に行ったが追い返された)。これも一種のウイルス禍であったのか・・(骨髄的怨嗟)。

▲雲南省の石林にて。ミャオ族の少女が唄う民族歌謡、その歌声は忘れられない。

▲帰路は、昆明から上海へ飛行機で移動した。租界エリアの古い建築物はまだ健在らしいが、上海のイメージは相当変わった。

 

追記:今朝の東京新聞の1面、「武漢の邦人 希望者帰国へ」の活字があった。リードには「新型肺炎 政府がチャーター機」とあり、本文中の見出しでは「中国感染2000人超、死者56人」となっていた。それにしても「政府がチャーター機」とは、安倍首相ならではのパフォーマンス。なんとも身勝手で、ご都合主義的な決定だろうか・・。感染医療の専門家、関係機関との十分なすり合わせをしたのか? 大事に至らなければと願う。巧くいけば安倍首相の支持率の大幅アップかな。まあ、抜け目のない御人ではある。1.27記

(2面の記事では、「封じ込め 中国全土厳戒」(衛生当局『症状なくても感染する』)の文字があり、深刻さは日増しに深まっているようだ。)

 


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2 コメント

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Unknown (スナフキンÀ)
2022-06-12 20:28:13
重慶マンション、「ブエノスアイレス」のウォン・カーウァイ監督の出世作「恋する惑星」で出てきますよね。初めて行った時は「ここが九龍城塞か?」と感心しました。
それで怪しげな日本語話すインド人に風呂敷を渡され「これを包んでくれ」と変形貨物を渡される。包んでやると「OKクリア!」
って、何がクリアだよ。てか風呂敷を何で知ってんだお前??
日本人は手先が器用という伝説があり試すためだ。何を??
それでとんでもないスラムに連れてゆかれました。なにせ高層スラムという類を見ない…九龍城塞です。すごいんです。頭の上を盗んだ水道のホースや盗電の電線が神経や血管の束のごとく走り回り、部屋の奥で豚を解体してるし、通路は道でなくビルの隙間(笑)
そして私はそこで「香港漫画のアシスタント」しました(笑)
香港はアメコミに似たカンフーコミックとか盛んでして、版元は大手でも、制作は中小のプロダクションです。日本のアニメに似てます。
オフィスの安い九龍城に制作部屋を置くんです。一つしかないベランダの窓には、慶徳空港へ着陸する飛行機が、まるでこちらへ墜落して来るように見える(笑) あれを平気な顔でホワイト修正や、スクリーントーン貼りしている香港人が不思議でした。でも私も次週には慣れてた(笑)九龍城塞は、たしかにスラムなんですが。実は需要がある市場でもあり、14kや新義安などのマフィア組織も、逆に治安が乱れるのを嫌っていて、油麻地の盛り場などより治安が良かったですよ。
先に住民を通じて顔役に繋いでおけば、まず襲われる事はない。
スラムで襲われる人は、地元に顔繫ぎしないでズカズカ入ってゆくからで、そりゃ襲われます。結構に住めば都な場所でしたね。
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やっとリコメ (小寄道)
2022-06-15 06:21:47
コメントありがとうございます。
三日ほど家のPCに向えず、スマホで文章を書くのは実に面倒くさい爺ですので、やっとリコメを書く態勢がととのいました。
えっ、香港のあそこで漫画家のアシスタント⁉ 驚き、梅の木、バオバブの木。
NHKの「漫勉」は見ませんか? TVを見ないらしいスナフキンさま、ぜひとも見てくださいな。
今をときめく、いや、昔懐かしい漫画家もふくめて、その作家の表現方法、秘策、独特のライフスタイル、アシスタントとのさりげないやりとり、これらを3,4台のカメラで定点観測した映像を見ながら、浦沢直樹と対談するEテレ番組です。

スナフキンさま、あの香港のチョンキンMのそれは「重慶」だったですか? それはさておき、そこで漫画のアシスタント!
それだけで小説の主題が見えますよ! 何かの物語を紡いでいくとき、スクリーントーンの選択によって作品のイメージは変化する。

香港漫画そのものを知りませんので、それが日本のそれの亜流だとしても面白そうです。
スナフキンさまはなぜそうしたものを自己表出しないのか、不思議ですね。それを受けとめる第三者の存在は大切な要素ですが、「Push a yourself」がまずいちばんですよ。
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