鎌倉の隠者

日本画家、詩人、鎌倉の鬼門守護職、甲士三郎の隠者生活

250 花深き谷戸

2022-06-23 13:05:00 | 日記

ーーー幽陰雨塞花深道ーーー

梅雨時の我が荒庭は最低限の掃除もままならず惨憺たる有様だ。

それを忘れるためにも、雨が小止みの日には少しでも近所の散歩に出よう。


鎌倉名物の紫陽花は我が谷戸にも沢山咲いていて、今週あたりは瑞泉寺下までの路地が美しい。



我家の周囲100メートル程の地域でも色々な種類の色違いの紫陽花が楽しめる。

瑞泉寺の山から流れて来る小川沿いの道は、風雅な住人も多く季節季節の花が豊富に見られる。

早朝の散歩に小流れの水音と紫紺の紫陽花が相まって、道行く人を清浄で爽やかな気分にしてくれるのだ。


谷戸の古くからある路地には幽陰の風情がある。



この地域も駅や大通りに近い方は新築の住宅が増えて鎌倉らしい風情は失ってしまったが、谷戸の奥まったあたりにはまだ昔ながらの路地が僅かに残っている。

門柱の掛花入や鉢植の花で通行人を楽しませてくれる家もある。

瑞泉寺境内は拝観料がかかるので(昔は無料だった)、よほど良い花が期待出来る時以外は入らずに引き返す。


荒れ放題の我が草庵に戻り、お茶にしよう。



(青海波 初版 与謝野晶子 天青釉花入 清朝時代 フラワーリムカップ フランス アールヌーボー期)

いつものようにお茶時には詩歌の古書と音楽が欠かせない。

与謝野晶子の「青海波」は初期の情熱的な歌風とは少し変わり、静かな歌が増えて来て涼しげな歌集だ。

梅雨の間はまだアイスティーではなく、昔風にただ冷めただけのぬるいミルクティーが意外と滋味があって隠者好みだ。


こんな朝の散歩時茶時に拙いなりにも詩句の一片でも浮かべば、隠者にとって十分満足出来る暮しだ。

ーーー喫茶涼卓集淡色ーーー

中国語の韻は私には無理なので、漢詩の断片程度で止まっているのは御勘弁。


©️甲士三郎