鎌倉の隠者

日本画家、詩人、鎌倉の鬼門守護職、甲士三郎の隠者生活

81 中世風の春

2019-03-21 14:58:15 | 日記
今週の我が荒庭は種々の花びらが散り乱れ、ますます廃退の趣きを深めている。
この春から大正風和洋折衷の暮しを導入したので、例年の和様の儀式に加えて折々に洋風の儀式を行い共に楽しもうと思う。
2月の立春と4月の花鎮めがあるので、間の3月に西洋式の春の祭典をしよう。
キリスト教のような一神教では大抵人間以外の動植物に魂は無いと思っているので、万物に神が宿る多神教やアニミズムを否定する。
なので西洋には花鎮めのような動植物を祀る儀式は見当たらない。
ただヨーロッパにもローマ ケルト時代以来土着の、春の到来に地母神や太陽神を祀る風習は今も細々とあるので、そんな感じで古代か中世風に仕れば良いだろう。
まあ暗愚な中世の隠者なら、只の飲み食いの宴(うたげ)と堕してもやむを得まい。

(アンティークピューターのプレートとゴブレットに陶器のボウルなど)
我家に足りなかった西洋什器類もネットで案外簡単に揃った。
一昔の奥様方が好んだロココ調の貴族趣味の物は高価で手が出ず、そもそも金襴手の豪奢な色絵磁器などは隠者には全く似合わないので、ヨーロッパアンティークでも比較的安価なブラス ピューター シルバープレートなどの食器類で質実剛健に行こうと思う。
日本でも平安時代の王朝貴族文化の次に来るのは、武家好みの侘び寂びと簡素な禅文化だった。
献立は冒険者や戦士ら筋肉派向けのイメージで、春野の鳥肉料理でまとめてみた。
中世ファンタジー風の演出には古色に錆びた金属器がぴったり来る。
私の料理の腕は月並なので調理詳細は御容赦。


(アンティークブラスのプレートと渋谷泥詩作のカップ)
晩餐はややダークファンタジーの雰囲気だったが、遡って朝食は明るめだった。
珈琲派の隠者にしては珍しくミルクティーを萩焼のカップで。
常に陰鬱に見える隠者でも、朝から暗いわけではない。


この日の祭神はケレース(セレス)、ウェスタ、アノーナらローマ時代の銀貨の女神達。
同時代のフローラ(花の女神)のコインかレリーフも探しているのだが、この数十年間入手できない。
結局は食べて飲むだけの祭典になってしまったが、宴の主賓だった女神達も楽しそうに見えるのでこれで良いだろう。

©︎甲士三郎