(ライティングビューロー イギリス ハーミットレリーフ アメリカ 共に1920〜30年頃)
前回の続きでイギリス アンティークのデスクの上に、精神生活の聖域を設営しようと思う。
丁度良いタイミングでハーミット レリーフ(隠者の陶板)を手に入れたので、早速ビューローの飾り台に祭壇を築き燈明を灯してみた。
コーヒーやティータイムを単なる雑事の間の休憩に終わらせず、思索に浸り己れの聖なる務めを想起する聖域とする為の祭壇だ。
どんなに俗事にまみれていようと、しばしここに座り茶事を仕れば即夢幻世界に浸れるだろう。
(上写真レリーフ部分拡大)
昨年、珈琲を飲むのに抹茶碗を使う話をした。
フランスのカフェオレボウルのように把手無しで両手で持つ例もあるので、座敷なら抹茶碗で珈琲も良いだろうと思うのだが客や知人には評判が悪い。
仕方なく和洋折衷様式に変えた客間では把手のあるカップを導入してみた。
ただ珈琲は抹茶に比べ道具の面では見るべき物も少なくやや物足りなく思えてくる。
カップぐらいはアンティークか現代なら作家物の道具が欲しいところだ。
(和菓子の似合う浜田露人作のコーヒーカップ)
コーヒーマグはティーカップや抹茶碗などに比べて歴史が浅く精々19世紀からの物なので、良い物でも価格はそれほど高くはない。
狙いはアンティーク(100年以上たった物)になるかならないかの1920〜30年頃の物がおすすめだ。
ヨーロッパ美術の流れではアールヌーボーからアールデコ様式に変わるあたりで、貴族的過剰装飾から脱して直線的で簡素なデザインになった時代だ。
第二次世界大戦以降は工業デザインとアメリカンポップが世界を支配するので、隠者にはとことん似合わなくなる。
19〜20世紀は工業化によってそれまでの貴族階級の生活様式が、中産階級にも手が届くようになった時代だった。
20世紀後半から21世紀はその貴族趣味にも飽き足らない人々が増え、より自然志向の強い英国で言うカントリーコテージやスローライフが新しい流れのようだ。
ネイチャー、スローライフと言えば隠者の暮しはその典型だ。
隠者流もたまには世人の参考になり得る。
©️甲士三郎