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人間は誰も運命の子だが、悲観も愉しさもその中に含まれていることを生身の父母から身につけさえてもらったと思う。それ以上のことはいらない。けれど、省みて、私は子供にも、行きずりで出会った人にも何も与えてあげられないできた気がして、恥ずかしい思いがする。
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この連載をリアルタイムで読んだ時、「あ!そうだ父に焼き蓮根を作ってあげよう」と思ったのだが、眼が悪い父がどれほど床に散らかすのかを考えると、ついつい一日延ばしになり、そしてそのままになってしまった。今思うと、涙が出るほど胸が痛む。
「たかが散らかる位で!」と人は言うだろうが、日常であること家族であることとはそんなもんだ。誰だって家族にはそんな思いをさせながら、日々を生きている。
吉本隆明/ハルノ宵子 『開店休業』より プレジデント社
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この本は、吉本隆明の最晩年、当然、死を意識している時期に、『dancyu』という雑誌に、体調不良で途中数ヶ月の中断を挟んで連載された食に関するエッセイに、長女のハルノ宵子という漫画家が追想の文と画を描いたものだ。
庶民吉本と名付けたのは谷川雁だが、あれは敬愛だったか、もどかしさだったか、、、。
この本は、今までのどの吉本の著書よりも、庶民吉本が彷彿している。
最初の抜粋は吉本の文章。
さほど理解せぬままに、恩恵を浴している徳さんなどには、襟を正す想いがする。
もう一つの抜粋は、長女のハルカ宵子の文章。
この本では、ハルカ宵子の存在感が圧倒的。
昭和の大思想家とされる吉本の家庭生活を、愛情を込めて暴露してくれる。
糖尿病を患い、徹底的な食事管理を志す奥さん、その目を盗んで精養軒なんぞで盗み食いしてしまう吉本、、、、。
その後の奥さんの管理拒否、、、。
ハラハラドキドキの、どこにでもありそうな家族の一風景である。
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