手指の痺れ、てーさん

猫背の成れの果て、という言葉をカイロ業界ではよく使う。
しかし、患者さんに面と向かって言うことはない。
猫背は万病の元、という方を使うのが普通だろう。
成れの果てとは、人を貶める言葉で、患者さんの気持ちを逆撫でかねないからだ。

てーさんはこの８年来の患者さんだ。
とは言っても、性格なのか、本当にどうしようもなくなってからやって来る、いわば施療士泣かせの患者さんだ。
ただし人柄はすこぶるよろしい。
徳さんはてーさんの人柄についつい甘えて言ってしまった。

「今回のてーさんの症状は、猫背の成れの果てですよ」

今回のてーさんの訴えは、右手の指先の痺れだ。１～３指の痺れが強い。
撓骨神経を疑う。
頚椎の４，５番。頚腕神経叢の通り道である胸郭出口。そして何よりてーさんの頑固な猫背が施療対象になる。

てーさんは営業の仕事をしているが、最近の不況下で成績が思わしくない。
おまけに、何とか独立したい意向も持っているようで、会社とのすったもんだを抱えていてストレスもかなり強く受けている様子だ。

ストレスの強い時に、猫背に気を配れと言われてもな～、と感情が正直に顔に出るてーさんでした。



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