岩清水日記

「あしひきの岩間をつたふ苔水のかすかにわれはすみわたるかも」良寛

【英国】監視する目

2005-07-15 08:07:36 | 世界のなかま
英国が「監視カメラの国」になる過程で重要な事件が起こっている。
その事件は、日本にも伝播された。
いや、同時代多発事件というべきか。

「1993年2月、リバプール近郊で2歳児の変死体が発見された。
そして、逮捕されたのは、まだあどけなさの残る10歳の
ふたりの少年だった」
『子どもを殺す子どもたち』デービット・スミスより

この本は、94年に書かれて97年に日本語に翻訳されている。
訳者の北野一世は、あとがきに
「このあとがきを書いている最中に、前代未聞の猟奇事件が
神戸で起きた。小学校6年の児童が頭部を切断され、警察当局を
あざ笑うかのように、学校の正門に放置されていた」。

訳者はこの時点では、この事件も『子どもを殺す子どもたち』に
よる事件とは知らなかった。

両国の2つの事件は、「子どもが子どもを殺すのか!」と人々に
衝撃を与えたが、その後の歴史は、「子どもは子どもを殺す」は、
「人は人を殺す」ことの一形態と考えるしかないことを証明した。

「子ども時代は理性の眠り時間である」というルソーの啓蒙思想は、
理性が生まれたはずの大人の行動をみてみれば、疑問が多い。

今回の英国テロ事件をみれば、
「子ども時代も青年時代もそしてあらゆる時代に、
理性の眠り時間がある」と言い換えなくてはならない。

ここでの問わなくてはならないのは「理性の眠り時間」とは何かだ。

が、今日のテーマはここにはない。テーマは「監視する目」だ。
もちろん監視カメラのことであるが、実は1993年の英国での事件
(被害者の名からジェームス・バルガー事件といわれる)の
事件解決の過程で一定の役割を担ったのだ。

この時点で、英国の一地方都市で、監視カメラが機能していた
ことも注目される。。

リバプール近郊の「ストランド・ショッピング地区」には
有線テレビによる警備システムを設置していた。
この第8カメラが加害少年2人が入店する映像と12時34分34秒と
いう時刻を捉えていた。
このショッピング地区には、20台の監視カメラが設置され
常時監視されていた。
16台のカメラに録画機能があった。
しかし、少年たちを録画したカメラはこの一台のみだった。

少年たちは、被害者の幼児をこのショッピング地区から連れ出す
のだが、通りの建物に設置している2台の監視カメラも少年たちの
行動を録画していた。

この事件で、監視カメラが捜査の一翼を担ったことは確かだ。
しかし、決定的な役割は担っていない。担うにはどうすれば
よいか。
台数を増やすことであるということになったのだろう。
その後押しをこの書物がしたことだろう。

10年近く前に読んだこの本を私自身鮮明に記憶している。
監視カメラのもつ「映像と時間の記録」という威力も含めて。

当時の英国国民は監視カメラの増設を容認した。
英国は世界一の監視カメラの国になった。

にもかかわらず、世界一安全な国という称号は与えられなかった。

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