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私が福田村事件を知ったのは、中川五郎さんのCD『どうぞ裸になってください』を聞いてからです。
2019年8月24日大島青松園と書いてもらっています。
沢知恵さんの大島青松園コンサートで協演された時のことです。
五郎さんにサインをしてもらうと顔中に刺青が入ってしまいました。
まことに手間のかかったサインです。驚きました。
それでも1枚のCDの影響は限定的です。
この「1923年福田村の虐殺」では虐殺のシーンのみを詳しく歌っています。
そのシーンだけで2時間の映画は無理です。
時代背景、人間関係を細かく描くことで長編映画となりました。
映画「福田村事件」は9月1日からミニシアターで全国上映され大きな広がりをみせています。
キャストも実力者ばかり。
主人公夫妻には、井浦新、田中麗奈、行商団のリーターに永山瑛大、渡し船の船頭に東出昌大。
日清戦争の生き残りに柄本明、新聞社の部長にピエール瀧、在郷軍人会長に水道橋博士、
町長に豊原巧輔。
テレビには出演しない(できない)実力派俳優が起用されています。さすが森達也監督と思います。
女優陣も好演していますが私には知識がありません。
この映画では時間的な制約もあるのでしょう。掛け値なしの演技力が問われているように思えます。
俳優はよくそれに答えています。多少ステレオタイプ的な演技もありますが。
映画は閉鎖的な時代状況の中、差別が助長され、国家権力が行う暴力が国の隅々まで浸透している様がわかります。
家制度の中で苦悩する女性、産めよ育てよと多産を奨励され、家の中で下働きさせられ日々の生活に疲れ果てていることが描かれます。
そんな風潮の中、田中麗奈演ずる主人公の妻は、大正デモクラシーのモガ的な雰囲気を持っており開放的です。
その自由さが映画の中で唯一の救いでもあります。
注意深く見なくてはならないと思うことがあります。
それは、水、川、橋、渡しに現れる意味です。
行商団が郷里の香川から旅立つ場所は古い木橋の上です。これは小説『橋のない川』を想起させます。
映画の中では行商団は水平社の活動を身近なものととらえています。
渡しの船頭は、虐殺のきっかけを作った男です。
虐殺された人々の遺体は川の中に放置され行方がわからなくなります。
最後のシーンは、船頭のいない(逮捕された)渡船に乗ってこの村を離れる主人公夫妻と、
別カットで6人となった行商団が故郷の木橋を渡って帰るところでした。
加害した村人は裁判で有罪になるのですが特赦で2年余りで出獄してしまい事件は封印されてしまいます。
香川に戻った行商団の生き残りの人も語ることはありませんでした。
※蛇足ですが、木橋のロケは京都府八幡市の流れ橋です。身近な場所です。
お読みいただきありがとうございました。
ウクライナと中東に平和を!