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金色銀色茜色

生煮えの文章でゴメンナサイ。

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白銀の翼(呂布)293

2013-12-08 08:34:46 | Weblog
 直ちに呂布を歓迎する宴席が設けられた。
呂真家に繋がる者だけでなく、近隣の農家の者も大勢が招かれた。
当然ながら、子供の頃の呂布を見知っている者達もいた。
その者達は呂布が無事に戻ったこと、偉丈夫に育ったことを心から喜んでくれた。
「育ちすぎ」と笑う者もいたが、呂布はなんであれ嬉しかった。
故郷に戻ったと実感し、ときおり涙した。
 芸達者な者が幾人もいて、それぞれが得意とする芸を披露し、宴席を盛り上げた。
歌あり、踊りあり、剣劇あり。
大人達は男も女も酒に酔って馬鹿騒ぎ。
子供達も勝手に遊び回り、あちこちに出没しながら摘み食い。
気付くと、近くを通りかかった者達までもが招き入れられていた。
ついには、「酒や肴が足りない」と下働きの女達が騒ぐので、
男の使用人が幾人か、村の市場に買い出しに出掛ける始末。
即席の酒宴が祭りのような騒ぎになった。
 その様子を呂真は鷹揚な顔で見守っていた。
酒が入っても性格は変わらない。
ゆっくり呂布の方に顔を向けた。
酒を勧めた。
「どうだ、落ち着いたか」
「はい、久しぶりに」
 呂真が言いにくそうな顔。
それでも、何とか言葉にした。
「話したくなければ、話さなくても構わない。
・・・。
あの日、何があったのか覚えているか」
 あの日・・・。
十数年前のあの日しかない。
盗賊団が村を襲った日のことだ。
「忘れるなど」有り得ない。
鮮明に、昨日のように、よく覚えていた。
「呂真伯父さん、逃げ延びた者とか、生き残った者はいなかったのかい」
「あの日、農作業とか、商用で村を留守にしていた者は幾人かいた。
でも、あの日の生き証人は一人もいなかった。
完璧な皆殺しだった」
 呂布は椀の酒を飲み干した。
空になった椀を下に置き、ゆっくりと語る。
 呂布十歳の、あの日。
早朝だった。
外の騒がしさに目を覚ました。
「厩舎の馬が騒いでいるのか」と思ったが、違った。
「盗賊団が来る、男達は戦仕度で集まれ」と数人が馬上から声を上げて駆け回っていた。
 養父、呂威は牧場に出ようとしていた。
盗賊団襲来を知ると表情を引き締めた。
尻込みはしない。
普段は人の良い優しい男だが、本性は涼州人気質そのもの。
売られた喧嘩は何であれ買う。
買ってから何だったのかを考える。
 呂威は踵を返して当然のように戦仕度を始めた。
それを母が慌てて手伝う。
呂威は戦仕度を終えると近くにいた呂布に気付いた。
にわか作りの優しい顔で手招きした。
「母さんや、みんなを頼む」と後事を託して抱きしめた。
いつもより力強い抱擁だった。
呂布は思わず、「はい、任せて」と約束した。
呂威は嬉しそうに頷き、厳しい顔に戻ると急いで家を飛び出した。
 呂布は心配になり、見送りに出た。
呂威は厩舎から馬を引き出すと、それに跨って村の広場へ急いだ。
呂威家の牧場で働いている牧童達も戦仕度で馬に跨り、続いた。
隣近所の男達も、それぞれが騎乗の人となり、戦仕度の牧童達を従え、
あるいは農夫達を従えて村の広場へと急ぐ。




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