直ちに呂布を歓迎する宴席が設けられた。
呂真家に繋がる者だけでなく、近隣の農家の者も大勢が招かれた。
当然ながら、子供の頃の呂布を見知っている者達もいた。
その者達は呂布が無事に戻ったこと、偉丈夫に育ったことを心から喜んでくれた。
「育ちすぎ」と笑う者もいたが、呂布はなんであれ嬉しかった。
故郷に戻ったと実感し、ときおり涙した。
芸達者な者が幾人もいて、それぞれが得意とする芸を披露し、宴席を盛り上げた。
歌あり、踊りあり、剣劇あり。
大人達は男も女も酒に酔って馬鹿騒ぎ。
子供達も勝手に遊び回り、あちこちに出没しながら摘み食い。
気付くと、近くを通りかかった者達までもが招き入れられていた。
ついには、「酒や肴が足りない」と下働きの女達が騒ぐので、
男の使用人が幾人か、村の市場に買い出しに出掛ける始末。
即席の酒宴が祭りのような騒ぎになった。
その様子を呂真は鷹揚な顔で見守っていた。
酒が入っても性格は変わらない。
ゆっくり呂布の方に顔を向けた。
酒を勧めた。
「どうだ、落ち着いたか」
「はい、久しぶりに」
呂真が言いにくそうな顔。
それでも、何とか言葉にした。
「話したくなければ、話さなくても構わない。
・・・。
あの日、何があったのか覚えているか」
あの日・・・。
十数年前のあの日しかない。
盗賊団が村を襲った日のことだ。
「忘れるなど」有り得ない。
鮮明に、昨日のように、よく覚えていた。
「呂真伯父さん、逃げ延びた者とか、生き残った者はいなかったのかい」
「あの日、農作業とか、商用で村を留守にしていた者は幾人かいた。
でも、あの日の生き証人は一人もいなかった。
完璧な皆殺しだった」
呂布は椀の酒を飲み干した。
空になった椀を下に置き、ゆっくりと語る。
呂布十歳の、あの日。
早朝だった。
外の騒がしさに目を覚ました。
「厩舎の馬が騒いでいるのか」と思ったが、違った。
「盗賊団が来る、男達は戦仕度で集まれ」と数人が馬上から声を上げて駆け回っていた。
養父、呂威は牧場に出ようとしていた。
盗賊団襲来を知ると表情を引き締めた。
尻込みはしない。
普段は人の良い優しい男だが、本性は涼州人気質そのもの。
売られた喧嘩は何であれ買う。
買ってから何だったのかを考える。
呂威は踵を返して当然のように戦仕度を始めた。
それを母が慌てて手伝う。
呂威は戦仕度を終えると近くにいた呂布に気付いた。
にわか作りの優しい顔で手招きした。
「母さんや、みんなを頼む」と後事を託して抱きしめた。
いつもより力強い抱擁だった。
呂布は思わず、「はい、任せて」と約束した。
呂威は嬉しそうに頷き、厳しい顔に戻ると急いで家を飛び出した。
呂布は心配になり、見送りに出た。
呂威は厩舎から馬を引き出すと、それに跨って村の広場へ急いだ。
呂威家の牧場で働いている牧童達も戦仕度で馬に跨り、続いた。
隣近所の男達も、それぞれが騎乗の人となり、戦仕度の牧童達を従え、
あるいは農夫達を従えて村の広場へと急ぐ。
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呂真家に繋がる者だけでなく、近隣の農家の者も大勢が招かれた。
当然ながら、子供の頃の呂布を見知っている者達もいた。
その者達は呂布が無事に戻ったこと、偉丈夫に育ったことを心から喜んでくれた。
「育ちすぎ」と笑う者もいたが、呂布はなんであれ嬉しかった。
故郷に戻ったと実感し、ときおり涙した。
芸達者な者が幾人もいて、それぞれが得意とする芸を披露し、宴席を盛り上げた。
歌あり、踊りあり、剣劇あり。
大人達は男も女も酒に酔って馬鹿騒ぎ。
子供達も勝手に遊び回り、あちこちに出没しながら摘み食い。
気付くと、近くを通りかかった者達までもが招き入れられていた。
ついには、「酒や肴が足りない」と下働きの女達が騒ぐので、
男の使用人が幾人か、村の市場に買い出しに出掛ける始末。
即席の酒宴が祭りのような騒ぎになった。
その様子を呂真は鷹揚な顔で見守っていた。
酒が入っても性格は変わらない。
ゆっくり呂布の方に顔を向けた。
酒を勧めた。
「どうだ、落ち着いたか」
「はい、久しぶりに」
呂真が言いにくそうな顔。
それでも、何とか言葉にした。
「話したくなければ、話さなくても構わない。
・・・。
あの日、何があったのか覚えているか」
あの日・・・。
十数年前のあの日しかない。
盗賊団が村を襲った日のことだ。
「忘れるなど」有り得ない。
鮮明に、昨日のように、よく覚えていた。
「呂真伯父さん、逃げ延びた者とか、生き残った者はいなかったのかい」
「あの日、農作業とか、商用で村を留守にしていた者は幾人かいた。
でも、あの日の生き証人は一人もいなかった。
完璧な皆殺しだった」
呂布は椀の酒を飲み干した。
空になった椀を下に置き、ゆっくりと語る。
呂布十歳の、あの日。
早朝だった。
外の騒がしさに目を覚ました。
「厩舎の馬が騒いでいるのか」と思ったが、違った。
「盗賊団が来る、男達は戦仕度で集まれ」と数人が馬上から声を上げて駆け回っていた。
養父、呂威は牧場に出ようとしていた。
盗賊団襲来を知ると表情を引き締めた。
尻込みはしない。
普段は人の良い優しい男だが、本性は涼州人気質そのもの。
売られた喧嘩は何であれ買う。
買ってから何だったのかを考える。
呂威は踵を返して当然のように戦仕度を始めた。
それを母が慌てて手伝う。
呂威は戦仕度を終えると近くにいた呂布に気付いた。
にわか作りの優しい顔で手招きした。
「母さんや、みんなを頼む」と後事を託して抱きしめた。
いつもより力強い抱擁だった。
呂布は思わず、「はい、任せて」と約束した。
呂威は嬉しそうに頷き、厳しい顔に戻ると急いで家を飛び出した。
呂布は心配になり、見送りに出た。
呂威は厩舎から馬を引き出すと、それに跨って村の広場へ急いだ。
呂威家の牧場で働いている牧童達も戦仕度で馬に跨り、続いた。
隣近所の男達も、それぞれが騎乗の人となり、戦仕度の牧童達を従え、
あるいは農夫達を従えて村の広場へと急ぐ。
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