マスコミが「今年の10大ニュース」などという企画をぶち上げる季節となった。わがひこばえ句会の句稿をながめていてざっと回顧する気になった。いらっしゃった方全員の句を載せていないが、ぼくが採った句を無造作に並べてみる。
先日、讀賣新聞多摩版の俳句(石田郷子選)は甘いと言ったものの、こうして並べてみるとそう大差ないかもしれぬと弱気になった。いやはや。
読者諸氏に忌憚のない意見を求め、来年の発奮材料にしようかと思う。
1月
元朝や五尺三寸さあいこう 押田善五郎
縄跳びを跳びつつ去ぬ子冬夕焼 中田芙美
風は日と未だ睦まず竜の玉 長沼光子
山茶花の恋恋として色褪せし 天地わたる
2月
安政の世から微笑む内裏雛 石川夏山
ふんわりと来たるゆふぐれ花ミモザ 長沼光子
文箱に古き手紙や冬すみれ 木村弘子
女優一行浅春の村輝かす 天地わたる
3月
基礎打ちの音の重さよ梅三分 中田芙美
クレヨンの母の塗り絵や春めきぬ 山田空
みかんむく音なき夜に目の冴えて 吉村英里子
ぞうぞうと夜桜ふくれかぶさりぬ 天地わたる
4月
湖へ開く腰窓花の雲 長沼光子
桜湯のしよつぱく甘いめでたさよ 吉村英里子
頁繰る風の香りや水温む 渡辺紀子
断崖に潮鳴りひびく松の芯 天地わたる
5月
新人の研修終へし柿若葉 飯嶋玲人
古茶新茶駿河は古刹多き里 木村弘子
葉桜の濠に突き出す太き枝 渡辺紀子
声残る電話切りたり夕薄暑 天地わたる
6月
西日射す当日券はあと二枚 久保直己
千枚の海へ連なる青田かな 遠藤保資
解体の始まる隣家朝曇 山田空
一歩一歩滝の呪縛の中に入る 天地わたる
7月
梅雨明けの真青なる空髪を切る 飯嶋玲人
ほうたるに雨の止みたる瀬音かな 中田芙美
ひたむきに残像を追ふ捕虫網 長沼光子
男の胸撫づる女や土用波 天地わたる
8月
軍艦カレー食べ横須賀に夏惜しむ 中田芙美
木道や人の消えゆく霧襖 遠藤保資
かなかなに風軽くなる峠道 長沼光子
飛出しもせで塵取の蟬戦慄(わなな)く 天地わたる
9月
百年の柱時計やきりたんぽ 遠藤保資
応援団帰る列車や鉦叩 久保直己
ゴクゴクと麦茶飲み干すとびの人 吉村英里子
向日葵や吹き降りのはて黒く立つ 天地わたる
10月
皮すぐに千切れる蜜柑剝いてをり 木村定生
子と我と同じ校歌や小鳥来る 山田空
海近き木々を枯らして野分去る 押田善五郎
頂上や露の体に朝日受く 天地わたる
11月
語らいの輪のふたつみつ菊花展 押田善五郎
暮れ方や水輪の芯の鳰 遠藤保資
うそ寒しハロウィン魔女の朝帰り 久保直己
花芒すでに流離のひかり満つ 天地わたる
12月
ラジオからテロの速報日向ぼこ 伊勢史朗
湯豆腐や竹の葉鳴らす通り雨 中田芙美
地獄耳覆ひ隠すや毛糸帽 木村弘子
冬籠痒きところを掻き合うて 天地わたる
撮影地:相模湖南西のとある山道
確かに「?」と思う時はたまにありますが、他人の選にあれこれ申し上げる程立派な立場にはございません。
しかし、切れがはっきりしない付句タイプはどうにも好きになれません。
小生も基本的に切れを重視するタイプです。シロウくんの要望には添えると自負しております。