
流星道場というネット句会をしている。鷹同人13人ほどの集まり。
毎月かわるがわる幹事が立って出題などの世話をする。今月は西村薫が幹事で、
季題で春の霜、水菜、雨虎、農具市、
文字題で井、山、三、回、戦と出した。
彼女の囲碁好きが文字題の井山となったのだろう。季語の雨虎は凝っている。
「あめふらし」と即座に読める鷹同人は何パーセントか。ぼくは一応読めたがさてなんだっけと歳時記を調べた。
ところが4冊に出ていない。山本健吉編の1冊のみが季語としてこれを収集しているらしい。らしいというのはぼくの持っている山本健吉編の文庫本歳時記には載っておらず、出題者の持っている大型の山本健吉にはあるという。
『季語別鷹俳句集』は一句載せている。
突つくたび小さくなるよ雨虎 池田萌

鷹は雨虎を季語として認めている。仔細を鷹主宰にそのうち訊こう。
「大型俳句-俳句関連文書検索エンジン」にも1句あった。
雨虎甘言の世に在りつづく 中尾寿美子
季語であるかないか、面妖な世界に俳人は生きている。「広島」は季語ではないが「広島や卵食ふ時口ひらく 西東三鬼」に凄いリアリティがあるように俳句は季語ほどの威力がある骨になる言葉があればいい。逆に季語であっても季語の威力の希薄なものもある。
出題者への義理でぼくもこの季語をこなしてみるか。
雨虎突き暗きにわれも棲む わたる


出題者は海をよく知っていて雨虎に似たやつで「海牛」もいるという。
触角を振って歩くのを牛に見たてた名とのこと。
ものの怪の海牛梅雨を現じけり 黒田櫻の園
海牛の角ひらひらと梅雨に入る 稲生正子
背ふるはせ海牛の金と銀 山西雅子
うららかや海牛の口どこにある 原田喬
切々と海牛もいまかまひ時 藤田湘子
海牛の角ひらひらと梅雨に入る 稲生正子
背ふるはせ海牛の金と銀 山西雅子
うららかや海牛の口どこにある 原田喬
切々と海牛もいまかまひ時 藤田湘子
「大型俳句-俳句関連文書検索エンジン」は以上の5句を収録している。
おもしろいのは作者が海牛の季語性の低さを認識していて別の季語を立てていること。櫻の園さんも正子さんも「梅雨」を正式な季語としているし、喬さんも「うららか」を立てている。雅子さんだけが海牛を季語として一物仕立てで書き、湘子も一物仕立てとしているが「かまひ時」(交尾の時)という春っぽい措辞で季語の補強をしている。
雨虎と海牛。こうして並べてみるだけでおもしろい。海の生き物は得体のしれぬ奥行があって興味が尽きない。
声上ぐるまで海牛を突く気か わたる
気持ち悪いがいじってみたいやつらである。春の海もいいなあ。
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