天地わたるブログ

ほがらかに、おおらかに

山田宗樹『百年法』

2018-07-09 05:34:05 | 


内容(「BOOK」データベースより)
原爆が6発落とされた日本。敗戦の絶望の中、国はアメリカ発の不老技術“HAVI”を導入した。すがりつくように“永遠の若さ”を得た日本国民。しかし、世代交代を促すため、不老処置を受けた者は100年後に死ななければならないという法律“生存制限法”も併せて成立していた。そして、西暦2048年。実際には訪れることはないと思っていた100年目の“死の強制”が、いよいよ間近に迫っていた。経済衰退、少子高齢化、格差社会…国難を迎えるこの国に捧げる、衝撃の問題作。

これは本書のテーマからやや外れるが、作者は民主主義を否定する立場にいるのではと世間から誤解を受けるのを覚悟して書いている。
昨今トランプ大統領の登場を象徴として「ポピュリズム(大衆迎合主義)」の危機が世界中でうんぬんされるようになっている。
作者にもその危機感がつよくあって、民主主義が物事を決定する遅さ、その結果出る結論のレベルの低さに対するいらだちのようなものが行間にただよう。質のよい独裁なら独裁でいいのではないかという主張さえあるかのように、二人の能力の高い政治家による独裁政治を描く。
それが日本共和国大統領・牛島諒一と日本共和国首相・遊佐章仁という強力なツートップである。
遊佐は「百年法」を実施するための内務省生存制限法特別準備室のリーダーであった。頭脳明晰、怜悧な若手官僚。
牛島は弱小政党の党首であったが、国民が嫌がる百年法を主張する胆力があった。虎(牛島)を狐(遊佐)が支えることで二人は国をのっとる。

政権掌握後の二人の確執と信頼という微妙なところも本書をすこぶる興味深くしている。
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