天地わたるブログ

ほがらかに、おおらかに

樹木希林版涅槃図

2016-01-05 16:39:42 | 新聞


本日の讀賣新聞をひらいてびっくりした。
緑あふれる静かな森林の、これまた清浄な水のなかに女性が死に臨んでいるらしい大きな絵。その女性は樹木希林のように見える。
次のようなコピーがある。

「死ぬ時ぐらい好きにさせてよ」
人は必ず死ぬという存在なのに。
長生きを叶える技術ばかりが進化して
なんとまあ、死ににくい時代になったことでしょう。
死を疎むこともなく、死を焦ることもなく。
ひとつひとつの欲を手放して、
身じまいをしていきたいと思うのです。
人は死ねば宇宙の塵芥、せめて美しく輝く塵になりたい。
それが、私の最後の欲なのです。


どういう趣旨のものであるか難解な俳句に対するようにしばらく考えた。
宝島社は出版社なので樹木希林著『死ぬ時ぐらい好きにさせてよ』の広告かと思ってネットを調べたがそうではなくてたんなる意見広告のようだ。

出版全体が斜陽産業である昨今こんな豪勢な遊びに投資できる会社があるのか。奇跡のように感じる。
年寄のために経費を使いたくない政府の広報ならその趣旨がよくわかるが、民間の一企業が死生観の根本を問う意見に莫大な広告費をかけるとはロマンである。

釈迦が入滅するときの絵を涅槃図といい俳句では春の季語であるが、これは樹木希林版涅槃図といった趣。涅槃図が不遜であるなら安楽死絵図か。
このように死ねたらいいなあ…という夢を見させてくれる宝島社の乙なお年玉である。


涅槃図(玉泉寺)
コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする