最近、妻夫木聡主演映画を3本続けて見た。
デビュー当時の「ウォーターボーイズ」、「春の雪」、そして今回の「バンクーバーの朝日」である。
シャイで引っ込み思案で表へ出たがらない心性は3本に共通で、「バンクーバーの朝日」においてキャプテンになるのだが、「ええっ俺が、何で?」という風情は「ウォーターボーイズ」と酷似している。
口下手で引っ込んでいたい、されどリーダーであるという役柄をやらせたら決まる。
ショート妻夫木に対して投手を演じる亀梨和也も暗くていい。二人は暗さをまといつつ太陽へ向かって脱皮していく。
そんな暗い兄を助ける妹役の高畑充希がはつらつとしている。
キュートで頭がよく英語をよくしてお手伝いさんをして家計を助ける。
兄の口下手を補う朝日軍への激励のあいさつはしんみりとして泣かせる。これぞバンクーバー市民に誇ることのできる芯のしっかりした大和撫子である、という見せ方をしている。
一方、むかしは若かったなあと感じさせたのが石田えり。最初この人誰?、というほど恰幅がよくなってしまっていて、あのぴちぴちしていた石田えりと思えなかった。
54歳、いいおばさんになって妻夫木と高畑の母を演じている。でも生き延びていてちゃんと仕事があるのがいい。
妻夫木だけ野球の経験がなく3か月、練習したと聞く。
この映画のテーマは、バカなほど野球好きの青年たち、である。
実は最近、野球のまねごとをしている。投げる筋肉の衰えが気になって、いま、武蔵野線のコンクリートの壁を相手にボールを投げている。右と左で30球ほど投げる。
投げる、拾うという動作は全身運動でいきいきする。
投球するとき一回ごと体の軌跡をイメージしつつやる。
これで同好の仲間がいて相手と闘うとなるとどれほど興奮できるかわからない。
「バンクーバーの朝日」は敵性外国人と見られた出稼ぎ日本人たちの苦悩を下敷きにしているが、そういう事情はあるものの、激務の間に野球をしたくてどうしようもない野球バカたちの物語である。
でかいカナダ人相手に勝ちたいという工夫と情熱の物語である。