月刊 きのこ人

【ゲッカン・キノコビト】キノコ栽培しながらキノコ撮影を趣味とする、きのこ人のキノコな日常

『なめこインサマー』

2010-05-03 21:08:50 | キノコ本
――ファミレスに行く。ファミレスは今まであまり行くことがなかったが、ファミというだけあり、子どもから老人までフォローするメニューはみごとである。
老人メニューのひとつ、なめこそばを頼む。娘には子ども用のケチャップ色したセットのやつ。
食べる前にいってほしいものだが、それぞれのものを食べ終わったあと、娘が、
「私もなめこが食べたかった!」
と悲しい顔をした。
子どもの好き嫌いは、小さいうちはあっという間に変わっていくものらしいが、最近はキノコではなめことしいたけが好き、しめじとマッシュルームが嫌いなのだという。
じゃあ今日のおやつはなめこにしよう、と冗談でいうとニッコリうなずいた。
本当かよ、と思いながらスーパーでなめこを買う。
さて、おやつなのでそばをゆでてやることもないだろうと、とりあえずめんつゆを少し用意した。なめこをさっと湯通しし、めんつゆであえる。それだけだ。汁が少ないしぬるいので、なめこ汁ですらない。
一、二個試食をして見たら、あたりまえだがめんつゆの味のただのなめこだった。
喜んで食べましたね、娘は。
これがある夏の日の午後四時ぐらいのおやつである。本人は満足そうだった。

……「吉田戦車の珍ごはん なめこインサマー」より

さすが吉田戦車、笑わせてなおかつ寂しげな余韻を残すそのワザは、漫画ばかりでなくエッセイにも発揮されてあまりある。

それにしても表紙のなめこ男爵(知らん。わたしが勝手に名づけた)の造形もみごとであるなぁ。