月刊 きのこ人

【ゲッカン・キノコビト】キノコ栽培しながらキノコ撮影を趣味とする、きのこ人のキノコな日常

のこり梅雨5

2009-07-30 18:38:09 | キノコ
やはりキノコは少ない。けれども、少し古めのベニタケ類が何ヶ所かで菌輪を描くのが見られた。S公園とはさほど離れていない場所に位置しているけれど、発生状況はまったく異なる。シイなど照葉樹中心の林だからかもしれない。今日、はじめからそういう狙いで探していれば、もう少し違ったキノコが見られたろう。

さて、ここで見られたひときわ大きな群落はクロハツ近縁種のものだった。本来灰色のキノコなのが、大粒の雨に打たれて黒ずんでしまったということが、キノコの上の落ち葉をとりのぞくことでわかる。

ベニタケ類は基本的に撮りにくいキノコなので、絵になるアングルってのはほぼ決まっている。50本ほど生えている中から、結局選べたのは一ヶ所のみ。悩む必要ないのである意味ラクだけどね。う~ん、落ち葉と保護色だな。

このキノコ、ひだが密なので、クロハツモドキに近いようだけれど、肉の変色性(白→ゆっくり黒変)、味(はっきり辛い)、大きさ(大型、直径10センチ超)などの点で異なる。名古屋遠征で撮影したものも確か同じ性質だったように思う。この地域ではわりと一般的なタイプなのかもしれない。

名無しのゴンベもかわいそうなので『エキモレクロハツ』のデタラメ仮名を与えておく。語源:ひだの黒いしみがインク瓶の液モレみたいだから。



雨水をじょうご型の傘にたたえているものがあった。



「――あれが、おじいちゃんの言ってた鏡に違いない……。
鏡に近づくと、それがまるで遊園地のマジックミラーのように、歪んだ形に映った。もう何年も人を映していないので、まるでちゃんとした映し方を忘れてしまったとでもいうようだった。」

……梨木香歩『裏庭』より引用

今回はこれにて。

のこり梅雨4

2009-07-29 18:15:00 | キノコ
間一髪!

車に戻る頃にパラパラ降り出した雨は、みるみる勢いを増して、3分後には激しくフロントガラスをたたき始めた。道には逃げ惑う人の姿もある。いち早く察知して助かったな……とはいうものの、車にこもっていた熱気と100%近い湿度のおかげで、体中からドッと汗が噴きだしてきた。うへっ、これじゃズブ濡れとあんまり変わらん……。

雨は30分ほどで小降りになった。ちょうどよいとばかりに用事を片付け、帰宅する……つもりだったが、道の途中の神社にふらりと立ち寄ってしまった。ほとんど病気だ。

なんかないかな~

のこり梅雨3

2009-07-28 18:05:27 | キノコ
キノコが少ないのなら、あとは足でかせぐより他ない。さー、次行ってみよー、次。

ということで、鈴鹿市内のS公園へ到着。どうもこの週末はビッグイベントが近くであるらしく、周囲がやけにあわただしいが、んなこた関係ない。

結果から言えばここもおおむねスカ。テングタケ類がぼつぼつ生えていただけだった。ところが……



例外的にヤグラタケだけが最盛期を迎えていた。クロハツモドキとおぼしき群落の、ことごとくがヤグラタケに侵されている。しかもこのヤグラタケ、ブナピーも真っ青になるほど見事な株立ちにになってるうえに、やたらデカくて、傘の直径が4センチくらいあるものまで見られた。

写真のなんかは「重みに耐え切れずにつぶけました」てな感じでド腐れクロハツが下敷きになっているのが妙に切ない。

そうこうしているうちに、周囲が急に暗くなってきているのに気づいた。まだ3時だぞ、これはもしや……やっべ、全速力で退却だー!

のこり梅雨2

2009-07-27 18:21:45 | キノコ
見つけた見つけた、シロオニタケ。まだ若い菌だ。

シロオニタケの幼菌はキノコ撮影の定番ともいえる題材。いかんせん撮りやすすぎるのがアダとなって(ピントあわせが楽)、誰が撮っても同じようになってしまう。もうちょっと個性を出したいな、などと思い太陽をあえて入れたりしたのだが……やっぱゴースト(白いもやもや)入っちゃうのよね。せっかくのイボが台無しになってしまう。ま、平凡だけど今回はこれでいいや。

この日、見つけたシロオニタケは意外にもこれ一本のみだった。他の連中はどこ行っちゃったのかな……テングタケの仲間は他にコテングモドキ、ヘビモドキ、ガンタケ、シロタマなんかが見られたがいずれも少数だった。



一方、イグチはキニガイグチばかりが目立った。色の変化が大きくて他のイグチとまぎらわしい上に、被写体としてどうにも撮りにくいキノコだけど……いないよりマシか。無理やり管孔だけ撮って終了。この煮え切らん色がいかにもキニガイグチ。



帰り際にアンズタケを発見。そういえばこれも梅雨明けに出る傾向のあるキノコだっけな。けっこキレイだけど中途半端なアングルになった。バックに木が一本しかなくてね……しょうがないんよ。

あ~、やっぱ凡作ばっかりになっちまった。最初のニイニイゼミが一番よかったな。キノコ撮影は被写体しだい、運しだいかね~。

のこり梅雨1

2009-07-26 19:15:28 | キノコ
明けるかと思われた梅雨がまだ明けない。

この一週間はどんより天気が多く、お日様なぞはちょこちょこと顔を出すだけだ。ムフフ……これはチャンス。今月最後の休みがキノコにあてられるとは思わなかったからな。

さてと……どこへ行く?どこにする?

情報によれば、雨量のわりにキノコの発生はあまりかんばしくないらしい。でも全くないってこともないだろう。よし、狙い目は夏キノコ、シロオニタケを本命として、テングタケを中心に探してみよう。今は庭園より雑木林がいいな……ということで、U公園に決定。朝8時に出発。

家を出るときにはドンヨリ空で、しかも昼ごろから雨との予報だったので、太陽が出るとは思っていなかったが、目的地に着く頃には、いつの間にか雲が消え、空はすっかり夏空に変わっていた。

まだ朝なのに暑い。ニイニイゼミの抜け殻が夏を告げていた。



情報どおり、キノコはあまりない。それでもテングタケ類を中心に少しずつ生えていた。写真はハイカグラテングタケだ。もう古く、見るに耐えない有り様だけど、初めて見るキノコだし、他に撮るものもないので、一応撮っておく。

柄のしま模様はキマワリの仕業(現行犯で逃走中)。キノコも食べるんだねぇ。

古いハイカグラは周囲に強い芳香をふりまいていた。お世辞にも良い香りではないが、悪い匂いとも言いきれない。思い出した、オオオニテングタケの匂いに似ている。

図鑑で調べると、両種ともマツカサモドキ節というグループに所属する割と近い仲間のようだ。見た目はあんまり似てないけど……味やにおいはバカにできないな。

思い出毒キノコ ふたたび

2009-07-23 18:03:58 | キノコ
この話にゃ続きがあって……

三重県に越してきた後のある日、鈴鹿の市内でまた黒いイグチを発見してしまった。でも今度のはちょっと違う。傘の裏が美しいワイン色をしており、管孔が柄に対して湾生(ミカワクロはほぼ直生)している。これこそ真のオオクロニガイグチに違いない!そう確信した私は、こんども食べてみた。すると……

やっぱり同じ味がするし。

なんでこんなドクブツ2回も食わなならんのじゃ……(自業自得)

それじゃ鈴鹿のコレは何なのかな……シビレクロニガイグチ?とにかく黒いイグチを見たら食うのはやめましょう。



上が鈴鹿の黒いイグチ、下がミカワクロアミアシイグチの裏側。色の違いに目をつぶるとしても、柄の周囲のくぼみがはっきりしている。


思い出毒キノコ

2009-07-22 00:59:09 | キノコ
これを初めて見かけたとき、私はオオクロニガイグチだと思った。

なんだか柄の網目がえらく強力で、図鑑のと違うような気もしたのだが、他に似てるやつもないし。ネット上で調べると「食える」との情報が。間違ってもおいしそうなキノコには見えないけど、けっこうたくさん生えてるし、意外とうまいのかもしれん、試してみよう……ということで。

新鮮そうなのを一本採ってきて、さすがに躊躇して、次の日の晩に半分だけ茹でて食べてみた。(よくよく考えると、この躊躇が本能の知らせだったような気がする……)

ん?

口に入れた途端、予想外の事態が口の中で起こっていることが理解できず、それでも味を確かめようと噛み続けていたけど、数秒後にはようやく事態を理解した脳ミソが反応して、あわてて吐き捨てた。何じゃこりゃ?舌がしびれる……

くしくも数日後、本屋の新刊として並んでいた『日本の毒きのこ』(小学館)でそっくりのキノコが新種として掲載されているのに気づいた。これはもしや、と思い、おそるおそる、発見者の中條さんという方に連絡をしてみることにした……

ということで、当時、三河地方でしか確認されていなかったミカワクロアミアシイグチの分布が名古屋でも確認されたわけである。

いやー、危ないね。味でわからない毒だったらヒットしてたよ。知り合いには「いつか毒に当たって死ぬぞ」って言われるんだけど……まあ、今となっちゃいい教訓だな。いっそのことヒットした方が面白かったかもしれない、なんてのは今だから言えることか。

悪食の方、ご参考までに。


熱波いっぼいぼ

2009-07-20 19:31:47 | キノコ
このイボイボが好き。

普通に撮ったあと、アグレッシブなアングルを撮れないかと試行錯誤したけど、結局この辺に落ちついた。苦労したわりにはイマイチか……

このキノコ、外見上はどう見てもシロオニタケなんだけど、イボを触っても落ちない。ノーマルシロオニタケなら、イボは触ったはしからパラパラと落ちてしまうので、こいつはシロオニタケ近縁種、ということになるのかもしれない。傘の直径も10センチ強と、やや小ぶり。

シロオニタケは個人的に好きなキノコのひとつだけど、梅雨の終わりを告げるキノコでもあるので、これを見つけた時は嬉しさ半分、ちょっと寂しいといったところか。梅雨シーズンもあとわずか。キノコも夏休みかな……

熱波

2009-07-19 19:04:24 | キノコ
名古屋遠征から帰った翌日あたりからものすごい熱波が襲ってきた。本来なら7月の25日くらいまで期待できるところだが、この暑さではもう数日と持たないかもしれない。

なんとか頑張っていてくれー、とキノコを探しに行ったが……期待もむなしく、見事なまでの干からび状態。三重方言で言うところの「かっぴかぴ」だ。干からびすぎて何のキノコかもわからん……

あきらめ顔を渋々させながら、それでも一通り見回って、かろうじて湿り気のあるところに粘着、ねばねばと写真(凡作)を撮っていると、遠くの方に白いものが見えた。あれはもしかすると……




あったー。真夏の到来を告げるキノコ、シロオニタケだ。他のカピカピ軍団とは比べ物にならないほどステキな状態で2本、並んでいる。よっしゃー、撮りまくったれー。

名古屋遠征6

2009-07-18 19:53:18 | キノコ
公園のあちこちで大造成が進んでいる。そういえば今年は市の方針でこの公園のリニューアルのためにたくさん予算がついた、というような話を聞いた気がする。

たんなる自然愛好家ならどう思うか知らないけれど、キノコ愛好家にとってはそんなに悪い話ではない。程よい「かく乱」は多様な環境を作り出し、より多様なキノコを発生させるかもしれないからだ。

キノコだけじゃない。たとえば川の氾濫は、長い期間に堆積した土砂を植物ごと流し去り、流域の植生を若返らせる効果を持つと言う。氾濫を起こさないように頑張りすぎると、植生は煮つまり、水はよどみ、最終的に川の生命の多様性を奪ってしまうとのことだ。

ほどほどの破壊は、むしろ活性化を招く。……フフ、ちと格好つけすぎか。



余ったのかな?雑木林の遊歩道の脇にウッドチップが大量に積まれていた。ミドリスギタケが生えている。まあ、そういうのも悪くない。

この写真を撮った数時間後、私は再びこの場にいた。このキノコをもう一度見たかったから……ではなく、ここに携帯電話を落としたからだ。おかげで閉園後の係員さんの手を大量にわずらわせてしまった。園内専用車まで動員、探すのまで手伝ってもらって……恥ずかしい。

植物園のみなさん、ありがとうございました。


名古屋遠征5

2009-07-17 20:55:25 | キノコ
今日最後のポイントは、M緑地からほど近いH公園だ。

1日では回りきれないほどの広大な敷地を持つけど、キノコ密度高くないのであまりキノコ向けではない。それでも谷筋の庭園などはよく手入れもされており、少々人目がはばかられるのをのぞけば、撮影にはもってこいのポイントがいくつもある。ちょっと期待。……というより基本的に動植物園なので、キノコなくても普通に楽しめるけどね。

花畑の芝生にキノコが生えていた。うーん、ちゃんと調べなかったけど、ヌメリガサ系のオオヒメノカサが近いのかな。

こうして目ぼしい所を歩いてみると、キノコは意外に少ない。ベニタケ類が少々に、イグチ類が同じくらい。いずれも状態が悪く、撮影は難しい。ま、しょーがないかねー、と思いながら進んでいると、遊歩道の脇に大きなカタマリが転がっているのを見つけた。



デカっ!オオコゲチャイグチではありませんか。誰かが採った後、処置に困って捨てたらしい。見よ、このボリューム!直径20センチ近く生長するイグチはいくつもあるけれど、これだけの量感があるのはそうそういない。アカヤマドリくらいかな?イグチの王様といっても名前負けしないくらいだ。

くぅー、それにしても、生えてるヤツが撮りたかった……捨てるなら採るなァー!採ったら責任持って食えェー!(暴言)

ちなみにオオコゲチャイグチは毒キノコらしいので見つけても食べないように。

名古屋遠征4

2009-07-16 18:50:42 | キノコ
最初のポイントを引き上げて次のM緑地に向かう。

実は、最初のポイントを回った時点で、この緑地での成績は予想できていた。「キノコ、まったく期待できず」

はたしてその通りであった。この時期ならイグチを中心にもっとキノコが生えててもいいのだけれど、林内はヒイロタケが目立つばかり(今年が当たり年らしい)。

まあ、ここはそれでもいいや。この林はかつて足しげく通った場所で、整備を手伝ったこともある。何年も経って足を踏み入れること自体が、ただただ懐かしい。そんだけで充分だ。

ただ、もうひとつ気になってることがあって……例のあのキノコがまだ生えてるかなっていうこと。なんだかすんごい汚いキノコなんだけど、ちょっと縁を感じるんだよね……



あったあった。相変わらず汚いね、ミカワクロアミアシイグチ。つい最近毒キノコとして認識されたばかりのイグチだ。このあたりの他の林じゃ見かけないけど、なぜかこの林には生えてくる。
この日、フレッシュなものは少なかったけど、腐って真っ黒に溶けてしまったのが周囲にいくつも見られた。林はずいぶん荒れてしまったけれど、このキノコはまだ健在のようだ。

帰り際に雑木林の手前の土手を調べると、似たようなキノコが生えている。ヘンなとこに生えるんだな、と思ってよく見てみると、どうも違うキノコのようだった。



傘の裏側がこころもち緑っぽい。モエギアミアシイグチのようだ。こりゃちょっと珍しい、見かけるのはまだ2回目だ。表面は触るだけで黒く変色してしまうので、なかなかきれいな状態でお目にかかるのが難しいキノコだけど、今回のこれは非常に美しい。ラッキーだな。

クロアミアシとモエギアミアシ、ふたつの毒イグチが今日ここでそろったことになる。なんだかエグいデュエットだけど、私を歓迎してくれたのだと思うことにする。ありがとさん。


名古屋遠征3

2009-07-15 18:06:52 | キノコ
おー、出てる出てる。

苔むした土手に、ベニタケ、イグチ、アセタケ、カレエダタケ、テングタケ、などなど、多種多様なキノコが大小とりまぜてゾロゾロと。

写真はカワムラフウセンタケかな。
背景に見える白い建物が、キノコのおかげか、優しくて明るめのトーンのおかげか、メルヘンチックな建物に見えてしまうけど、コレ、ただの公衆便所だから。(わざわざイメージダウンしなくてもいいか……)

量的に目立ったのは、カレバキツネタケ、ニオイワチチタケ、クロハツ近縁種、ニオイコベニタケ、正体不明の淡色ベニタケ、カレエダタケモドキ、アイゾメクロイグチといった面々だった。とにかくわかんない種類が多くて、もどかしいと言えばもどかしいんだけど、気にならないと言えば気にならない。



遊具がたくさん置かれた児童公園にも、多数のキノコが見られた。その中でも活躍を見せていたのが、大きな菌輪を描いていたクロハツ近縁種。ところ狭しといった感じであちこちに強固な陣構えを展開していた。

私にとって夏の風物詩といえる光景かもしれない。

名古屋遠征2

2009-07-14 18:23:26 | キノコ
うひょひょ、ド迫力。

自分がアリンコにでもなって、巨大な建造物を見上げるような、そんな感じだ。

なぜだか知らないけど、しょっぱなに出くわすキノコには素敵なものが多いような気がする。出会いというのはそういうモノなのかな……。とにかく、いい状態のものを撮ることができてうれしい。朝早く行ったかいがあるってもんだ。

次は竹林へ向かう。竹林はキノコの発生が多い方ではないが、見ばえのするキノコが発生さえしていれば、それだけで絵になるので、かならず足を運ぶようにしている。特にここのようにきちんと整備された竹林は貴重だ。

竹林に入って辺りを見回す。コテングタケモドキやベニイグチを期待していたのだが、こちらはものの見事にハズレだった。ただヤブカが猛烈な勢いで集まってくるだけ。いいキノコがありゃそれでも我慢するけど、ここは逃げるに限るね。

つぎは庭園。ひそかに一番期待してる場所だ。キノコあるかなー。