月刊 きのこ人

【ゲッカン・キノコビト】キノコ栽培しながらキノコ撮影を趣味とする、きのこ人のキノコな日常

四コマまんが『菌根菌はサービス業』

2020-03-27 06:19:46 | キノコ創作
菌根菌で思い出した。おととしの秋に滋賀で開催した『めっちゃかわいいきのこ展』。

その展示品で、無謀にも四コマ漫画を作成したのだ。お堅そうな博物館で四コマ漫画を展示するだけでもまあまあ無謀だが、その制作を絶望的画力の私が担当したものだからさあ大変。

多少なりとも絵心があれば30分くらいでサラサラーンと描けそうなものを、三日がかりでウンウン言いながら作って、それでようやくこのクオリティ。ほぼ事故(笑)
でもせっかく作ったんだから有効活用するとしよう。「味がある」と言ってくれ。


・・・そう、菌根菌はサービス業だったのです!
樹木は菌根菌のおかげで心おきなく木を大きくすることができ、他の木よりも日当たりが良い高いポジションを確保することでさらに有利になります。ただしその代わりに、菌根菌を養うためのエネルギー(漫画で言うところの「料金」)をかなり割いているようです。

ちなみに木材や落ち葉を分解する腐朽菌は清掃業・廃品リサイクル。物質循環の回転を早めることで森の生産力を底上げしています。

ちなみにamanitaは学名でテングタケ属のこと。イグチ類やベニタケ類と並んで、(外生)菌根菌の代表的キノコです。
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菌根を見つけた!

2020-03-24 21:10:04 | キノコ知識
今日はボランティアで公園の側溝を掃除!
秋に落ちた大量の落ち葉で詰まってしまうのを防ぐために取り除くのだ。楽勝!

・・・と思ってたんだが。何年も放置してあったせいか、落ち葉は表面だけで、溝にたまってたのは大量の土だった!
あげく、木の根っこがどこからか侵入してきて、側溝の中に網の目のように張り巡らされている。土を掘りだそうとすると、カーペットみたいに全部ひとつながりになってて、スコップでは歯が立たん(;'∀')
太い根っこを切って、力づくで引っぱり出すと、ズルズルと何メートルもつながった土と根っこが出てきた。クッソ重い!

するとその時。
土の中に白いものが目についた。あーっ!これは!!

菌根やん!

菌類には植物の根っこにとりついて共生する種類がいる。
菌類がとりついた根っこは菌糸で覆われて、栄養や水のやりとりをスムーズに行えるように融合し一体化する。これを「菌根(きんこん)」と呼び、また、菌根を作る菌類を「菌根菌」と名付けている。

菌根菌は植物が光合成で得た栄養をわけてもらう代わりに、植物のために働く。
菌根は病害菌や乾燥などに対して防御力を高くしてくれるのにくわえ、菌糸が回収した水や養分を融通してもらえるようになるので、植物にとって頼もしいパートナーとなるのだ。

私はもちろんその存在を知っていたけれど、こうして掘り出す機会は今まで無かった。こんなにきれいな菌根を観察できたのは今回が初めてだ。感激!


ふつうは茶色か黒の根っこが白くなっている。厚めのコーティングで覆われていて太くなっており、先っぽも丸っこい。なんだか骨折した時につける包帯のギプスのようだ。
むやみに分岐している個所もあって、そこはなにやらモジャモジャしている。
よく見ると、菌根から、さらに細かくモヤモヤと生える白い毛が見える。これも菌糸なのだろう。この細い毛で植物の根っこでは届かないような狭いスキマにも入り込み、養分を持ってくることができる。

ちなみにこの根っこはアラカシのもの。このあたりではごくごく普通にみられる常緑のドングリの木。キノコとの共生樹木だ。

そして気になる菌の方は・・・東大・奈良研究室のホームページにある『外生菌根図鑑』によれば、これだけ整った形の菌根を密集させられる種類はけっこう限られる感じだ。
ただの絵合わせで当てずっぽうになるけど、ベニタケやチチタケの仲間の菌根と雰囲気が似ている。梅雨時になればこのあたりにはニオイコベニタケやキチャハツ、アカシミヒメチチタケ(?)やニオイワチチタケなどのキノコが生えるから、そのあたりかもしれない。

菌根菌は、森林のなりたちを知るうえでとても重要な縁の下の力持ち。木と菌類の関係はとても面白いので、後日、もう少し掘り下げる記事を書こうと思う。





すえひろたけ

2020-03-22 01:29:48 | キノコ
スエヒロタケ。カワラタケと並び、もっともありふれたキノコのひとつ。

発生する木は広葉樹、針葉樹を問わず(竹にだって生える)、乾燥にもめっぽう強いので、森はもちろん、人の生活圏でもいたるところで見かける。


ふさふさとして白くけば立った傘は、裏を見ると1枚のヒダが2枚に分かれているというおもしろい特徴を持っている。このヒダがなかなか美しい造形で、ド普通種ながら侮れない。

「末広がり」な形からつけられためでたい名前とは裏腹に、キノコとしては珍しく人間に対して病原性を持っている。
「スエヒロタケ感染症」にかかると、肺や気管支にアレルギー性の炎症を起こして、咳やタンが止まらない、ぜいぜいと息をするなどの症状が出るそうな。
べつに身体にキノコが生えるわけではないが、肺の中で菌糸を伸ばすだけでもスゴイ。

こう聞くと怖くなってくるが、よほど免疫が落ちない限りはかからない病気なので、それほど心配することもないようだ。肺炎の原因なんて他にいくらでもあるし。
ただし、この病気はマイナー過ぎるあまり、診断できる医療機関があんまりなかったりするから、そういう意味では厄介かも。


これは傘がバラバラに割れててちょっとおもろい

近年の解析では、白色腐朽菌としては分解力がかなり弱い(リグニンがほとんど分解できない)ことがわかったらしい。意外だな。

まつげごけ

2020-03-17 23:21:49 | キノコ
ウメの木の樹皮にベタベタ張り付いてるコケみたいなヤツ。マツにもサクラにもブナにもクスノキにもベタベタ。あまりにもありふれているので、普通の人は「コケっしょ?」程度でほとんど無関心に見過ごしているのだが、こいつら実はコケではない。

「地衣類」と呼ばれている、れっきとした菌類の仲間である。
見た目がどう見ても植物に見えてしまうのは、それは仕方がない。なんたって光合成をしているのだから。
彼らは藻類を内部に飼っていて、住みかを提供する代わりに光合成産物を分けてもらって生活している。家賃収入で暮らす大家みたいな??

動物界でも、サンゴの仲間に藻類と共生するものがいるが、地衣類はまさしく「菌類界のサンゴ」と言えよう。
極寒の地や火山の近くなど、ほとんど暮らすのが無理そうな過酷な環境でも育つことができるタフな連中だ。

さて、この写真の地衣類、ウメの木に生えてるからウメノキゴケだろうといい加減に考えてたらぜんぜん違った。ウメノキゴケだけですんごいたくさん種類があっる(+o+)
絵合わせで調べたかぎりでは、どうもマツゲゴケという種類な気がする。


つばききんかくちゃわんたけ

2020-03-14 22:40:04 | キノコ
暖かい冬だった今年は春の訪れも早い。桜の花の便りも早々に聞けそうだ。

そしてキノコの世界にも春が巡りつつある。
実を言うと、キノコは冬から春を迎えても見られる種類数は大して増えない。それでも、ピンポイントで探せば居るところには居る。
まだ風は冷たくとも日差しの暖かみが嬉しいそんな中を、そういうキノコを探して巡り歩くのもまた楽しみである。

ツバキキンカクチャワンタケは早春に生えるそんなキノコのひとつ。キノコ好きからは゛ツバキン”の愛称で親しまれている。
ツバキンはまずツバキの花に感染し、落花したあとの花をねぐらにして育つ。そして翌年以降、椿の花が咲いてる頃合いを見計らってキノコを作り、胞子を飛ばして再び花に感染するという、ツバキに特化した独特の生態を持っている。
「感染」と書いたのは、花びらを変色させるため、病害菌と見なせるからだな。ツバキにとって迷惑なのかどうかは正直なところ分からんけど、少なくとも花を楽しむ人間たちには迷惑な連中だよね。

さて、春の訪れを感じさせるツバキンだから、写真を撮るときは背景に椿の花を入れて華やかさを演出するのがこれがもうテッパン。でも実際にはそう都合いい場所に花は落ちててくれないので、たいていの場合は仕込み撮影になるという(笑)

ウイルスは悪・・・とは限らない!

2020-03-10 21:55:38 | キノコ知識
ここんところ、新型コロナウイルスとやらの話でもちきりだが、さすがにウンザリしてきた。
ただ、ウイルスというヤツが一体何なのか、自分もよく分かっていなかったのでちょっと勉強してみた。

よく勘違いされるので始めに言っておこう。ウイルスは細菌ではない。ぜんぜん別物、例えるならばバナナと洗濯機くらい違う。菌類と細菌もよくいっしょくたにされちゃうけど、ウイルスと細菌の間にはそれよりもさら深い溝がある。


まず、ウイルスには
①細胞がない。細胞膜という風船の中に体液を満たした構造があらゆる生物の基本構造のはずなんだけど、ウイルスにはそれがない。

そして
②ウイルスは自力で増えられない。
ウイルスは自分の設計図以外、ほとんど何も持ってないので、他の生物の細胞に間借りして、一切合切を借りて自分のコピーを増やす。例えるならば、レシピだけ持った料理人が食材と包丁とナベとコンロと食器をよそから借りて料理してるようなものである。

さらに、これが重要!
③ウイルスは呼吸をしない。なにも食べない。
もちろん光合成もできない。
ていうか、こんなんで果たして生きてると言えるのか??

実際、ウイルスが生き物かそうでないかということには昔から論争があって、いまだに決着がついていない。生き物でなけりゃ何なのか?それはもうただの「物質」ということになる。

さて、それはさておき、ふつう「ウイルス」と聞くと、皆さんにはただ「悪いヤツ」という印象しかないかと思う。でもそれは先入観というもの。ほんとうは違うのだ。

確かにウイルスは、ほかの生き物の細胞に侵入してドロボーしないと生きていけないヤツらだし、そもそも生き物かどうかも怪しいエイリアンみたいに不気味な存在ではあるけれども、実は彼らなくして今の人類の進化はなかったはずなのだ。

それはなぜか。

ふつう、遺伝というと、DNAが親から子へ伝えられることを言う。ところが、ウイルスはその常識をくつがえす仕事をしてしまうのだ。

ウイルスが自分のコピーを作るとき、その生物の持つDNAから一部分をコピーし、持ち去ってしまうことがあるのだ。これがウッカリなのかワザとなのかよくわからんけれど・・・
さらに、自分のコピーをその生物のDNAに組み込んじゃうこともある。そのままウイルスを廃業して吸収されちゃったりとかも。

結果的に、ウイルスがいろんなDNAを抜き取ったり、あるいは割り込ませたりするおかげで、DNAがいろんな生物の間でシャッフルされ、赤の他人でしかない異なった生物が同じ遺伝情報を持つという現象が起きてしまう。
こうして、ダーウィンで知られるような、時間をかけて起こる自然選択とはまったく別の次元で、ありえないほど自由でドラマチックな形で進化が進んだのだ。

で、それでどうなったかというと・・・たとえば人間が持つゲノムのうち、じつに45%までもが、よそ(ウイルスだけに限らんけど)から運ばれたモノで占められていた、ということが最近になってわかったそうだ。
まあ45%と言っても、もとを正せば必要のないもの(俗称・ガラクタ遺伝子)だったので、そのほとんどは人間にとって重要度が高くないんだけどね。それでも、ガラクタはガラクタなりに役割を持っているし、中には進化の過程で変化して、ヒトをヒトたらしめることになった重要な遺伝情報も含まれている。
少なくとも、ウイルスなしに、今の形のヒトを作ることはできなかっただろう。

ウイルスは他にも病気への抵抗力を高めたり、寄生虫から身を守ったりするなど、生物の役に立っているものも多い。また、役には立たないまでも、ほぼ無害な形で生物と共存する例も多く知られている。
突然、凶暴な感染症を引き起こすのも確かにウイルスの仕業だが、それは彼らのある一面に過ぎないのだ。

・・・生物と無生物のあいだに立つもの。DNAからDNAへさすらいつつ、悪魔のような病気をはやらせたかと思えば、こんどは画期的な進化をもたらしたりもする。そんなウイルスの振る舞いは、共生したり寄生したり変幻自在にスキマに滑り込んでいく菌類の生き方とも少しかぶる。小さすぎて見ることすらできない厄介者だが、なかなかどうして目が離せない。


注:わかりやすくするために話を単純化しているので、かなりの不正確さを含むことを了承ください。ウイルスは超多様かつ複雑で、すべてを正しく伝えようと思っても、聞きかじりレベルの自分の手に負えるものじゃありません(^-^;


にがくりたけ

2020-03-06 23:42:27 | キノコ
1月に撮ったニガクリタケ。

取材でキノコ撮影の現場を見せてほしいといわれたので、キノコのありそうな場所を探して、どうにかこうにかそれっぽい群落を見つけた。えり好みせず針葉樹からも広葉樹からも生えて、しかも秋から冬にかけてしぶとく発生(しかも群生!)し続けるニガクリさんは、キノコ狩りの人からは嫌われてもキノコ撮影家には救世主のような存在だ。

もっとも普通にみられる毒キノコのひとつ。


美しい群生。

実は、この写真を撮った5日後に、もう一度この場所を訪れてみたのだが、なんと・・・


消えている!!

冬は気温が低いのでキノコが腐るのは遅い。5日程度ならば少し傷むくらいで消えるなんてことはないはず・・・

よく見ると、茎の下の部分が少し残っており、折れたニガクリタケがいくつか切り株の下に転がっていた。ははぁ、これは何者かに採られたようだ。

虫、ナメクジ、ネズミ、リス、シカ、サル、イノシシ、そして人間。犯人はいくらでも思い浮かぶ。誰だろうか。
食べ方からして虫やナメクジではない。人間の採り方でもない。切り株の一部がえぐれたようになっているから、なかなかのパワー。小動物でもなさそうだ。よくみると切り株の手前に地面がえぐれている場所がある。重い体重の動物が歩いた跡だろうな。

となると、シカかイノシシか。うーん、どちらかと言えば上品な荒らされ方なので、シカかな。

しかしニガクリタケを食べるんだねえ。まあ腹が減ればトリカブトだって平気で食べるような連中だし、体もデカいからよほど大量に食べない限りは中毒しないんだろう。それにしても苦くは無いんだろうか。まあシカに聞くだけ野暮かもね。



すみいろがさ

2020-03-03 23:39:40 | キノコ
ひさびさに行きつけの公園に行ったら、「ヒスイガサに似たキノコが生えている」と職員の方に教えてもらった。ヒスイガサ?なんかの間違いじゃないの??

ヒスイガサ(仮称)とは、この公園で観察できる緑色の小さなキノコのことである。キノコとしては珍しい色なので、この公園に生えるキノコの中でも屈指の被写体なんだけど、あれが生えるのは夏。よりにもよって、こんな寒い時期に生えてくるとは思えないなぁ。


で、案内してもらったのがココ。うぉい!ここは階段じゃねえか。

いぶかしみながら調べてみたら。おお!そんなバカな!生えてる生えてる。階段の三段目から七段目くらいまで、まばらに20本以上生えていた。そしてなぜか階段にしか生えていない。なんでや!

なるほど。確かに大きさも形もヒスイガサに似ている。
ヒスイガサはフカミドリヤマタケという別名にも見られるように、かなり暗い緑色をしていて、状態によっては黒っぽくも見えるんだけど、その点ではこのキノコもそれに近い。でもこれは緑系ではなくて紺色系のようだ。
その証拠に、古くなったキノコを見ると、青みがかった薄ずみ色が確認できる。


しかしこのキノコなんだろうなぁ。紺色の小型キノコで思い出すのは、イッポンシメジの仲間だ。たとえばコキイロウラベニタケは、紺色をしていて芝生に生えてくる。
近い仲間にこんなのがあってもおかしくないかな・・・

でもヒダを観察するかぎり、ピンク色を帯びていないし、ヒダがまばらで厚みのある感じとか、つき方がイッポンシメジ系というよりもヒスイガサと同じヌメリガサ系なのよね(勘だけど)。
うん。やっぱり確実に見たことのないキノコだ。図鑑やネット上でも見た覚えがない。これはいいものを見せてもらった。こんな季節でもこんな場所に生えるキノコあるんだねぇ。

とか言うだけ言っておいて、基本情報をほとんど調べずに置いてきてしまったけどねっ!せめて粘性くらいは調べるべきだった。

仮の名前を・・・。ヒスイガサを踏まえるのであれば、このキノコに似つかわしい色は「墨色」であろう。個人的な仮の名称として、「スミイロガサ」の名を与えておく。