私が向かったのは会議場ではなく、それに隣接する白鳥公園を中心とした『生物多様性交流フェア』だ。国・自治体・企業・財団法人・大学・市民団体など、ありとあらゆる雑多な団体が、それぞれのブースで展示や活動紹介などを行っている。その数は200を超え、自分の興味のあるものだけを回ったとしても、かなり遊べそうだ。
見通しのいい公園にテントがずらずら並ぶ光景は、大学の学園祭を思わせるものがあり、開放的でいい。入口からはいってすぐのところに、『兵庫県立 人と自然の博物館』のブースがあり、実はここでささやかながら、キノコの展示を行っていた。

知る人ぞ知る兵庫県立御影高校の生徒が作成した、手のこんだ乾燥標本が陳列ケースに並べられている。標本の出来の良さはともかく、高校生がレベルの高い調査活動を、しかも継続的に行っていることには感心しきり。それをサポートする博物館や兵庫のきのこ会の存在も光っている。こういう連携がとれるのは、すばらしいことだな、と。
ブースには幸い、キノコに詳しい方がいらっしゃったので、キノコのほかにもマツ枯れやナラ枯れの話なども聞けて有意義だった。
それからは面白そうなブースを回ろう、と思ったんだけど……自治体や大企業はわりと無難で面白くない気がするからパス。「かけがえのない自然を守ろう」系の活動はちょっと苦手なのでそれもパス。ということで、聞いたこともない団体や企業で、具体的な試みを行っていそうなトコロを回ってみた。
なかでも面白かったのが、傾斜地での道路建設の際におこなわれるノリ面緑化の話。かつては斜面をコンクリで固めるのが主流だったが、今では草や木などで表面を覆い、より自然に見せる緑化工法が普通だという。ところが、それにもいくつか問題があって、より強度を高めようとか、より在来種を生かすような工夫をしようとか、そういう方法がいくつも研究されているそうだ。
中でも、シカ対策には涙ぐましいものがあり、「緑化工法にとってシカは不倶戴天の敵」という話はかなり面白く聞けた。
他にもいくつか回り、それなりに面白い話が聞けたが、そこそこにして引きあげた。来るのがもう少し早ければもうちょっと回れた気がする。

この日は風が強く、この秋一番の涼しさであった。