月刊 きのこ人

【ゲッカン・キノコビト】キノコ栽培しながらキノコ撮影を趣味とする、きのこ人のキノコな日常

ぱんけーきいぐち

2019-09-27 21:07:19 | キノコ
カシ林に大きなイグチがボコボコと。実はこれも不明イグチ。

ただし、このイグチは三重のキノコ会の定例観察ポイントの常連なので、ずいぶん前から存在は把握されている。osoさんのキノコ図鑑に詳しい。

大型のキノコで、傘の直径は10~15センチ、ときにはそれ以上。常緑樹主体の広葉樹林にて。
この林道沿いには広範囲に発生しているが、県外はもちろん、県内の他の場所でも見たことがない。ここオンリー。


傘の質感がかなり特徴的。
傘はややくすんだ明褐色でフェルト状、表面はけばけばした鱗片に覆われている。この鱗片、ほぼ全面に均一に広がっているのが印象的。他のキノコだと、中央が厚めとか傘のフチにはついていないとか、かならず偏りがあるものだけど。
管孔は淡黄色で、成熟するとわずかに緑色を帯びる。肉は白色、青変性はなし。空気に触れると時間をかけて赤みを帯びる。肉質はやわらかめ、特別な味は無い。不快ではない独特の臭気がある。

柄は傘と同色、頂部のみ黄色。上部に縦長の不明瞭な網目模様があるものもある。表面は繊維方向に沿った不明瞭な凹凸あり。


管孔は細かい。やや形や大きさが不ぞろいな印象を受ける。変色性はないが、傷ついた部分は時間をかけて褐色に変色するようだ。柄の周囲で少しくぼむ。


さてさて、何ともつかないイグチで、大まかな分類もしぼりづらい。
管孔がこころもち不ぞろいの角形で、柄に垂生ぎみに残る特徴からアワタケ系?との声があるが・・・。

この管孔、どこかで見たのと似てることに最近気づいた。シワチャヤマイグチの管孔だ。

はじめ淡黄色で古くなると緑色を帯びる、管孔は細かめで傷つくと時間をかけて褐色のシミができる、柄の周囲でくぼむ、など。全体的な印象もよく似ている。

もしシワチャヤマイグチに近縁ということになれば、このキノコもシワチャとともに新分類・Hemileccinum属に所属することになるのかもしれない。(スタンプイグチもw)


三重メンバー内での愛称「パンケーキイグチ」をとりあえずの呼び名にしておく。(個人的にはちょっと焼き過ぎだと思う)







小学館の図鑑NEO きのこ

2019-09-24 23:49:45 | キノコ本
『小学館の図鑑NEO きのこ』

学校の図書館でもおなじみ小学館の図鑑NEOシリーズから2017年に『きのこ』が登場!

昆虫、動物、鳥、魚、恐竜・・・これら定番中の定番に比べると、マイナーな上に扱いが難しいキノコは子供向け図鑑からながらく避けられ続けていた。だが今回、NEOシリーズのリニューアルを機にとうとう出版。祝!\(^_^)/

しかし、子供向けと言いつつその作りこみがハンパじゃない。

掲載種数は今まで出版されている平均的な図鑑をかるく凌駕する約700種!
キノコ撮影の第一人者・大作晃一さんの白バック写真をメインに、色鮮やかな生態写真もてんこ盛り!
近年の分子生物学的な分析を用いた最新分類にも対応していて!
しかも他の図鑑に載ってないような新種の珍しいキノコがしれっと載っていたりする!

・・・たしか『三歳から高学年まで』が売り文句だったと思うんだが。


バカモノー!!

オトナでも十分使えるわい!いやむしろ子供にはもったいない!横取りしてでもワシが使うわい!

ハァハァ、ちと大人げなかったか。え?なに?それだけじゃないだと!?


キター!!
ドラえもんのきのこDVDがついとるやないかい!!


みんながおなじみ、ドラえもんとのび太が、さまざまな林ごとに生えるキノコを探索する形式で数十種を紹介。キノコの生長の微速度撮影や、胞子を飛ばす映像など、これまた盛りだくさんの40分!

大盤振る舞いにもほどがある。完全なるオーバースペック!金魚を解体するのにエクスカリバー使う、的な!
これで税抜き2000円だから必携どころか、買ってから近所に配らないといけないレベルだな。



白い背景に美しいキノコ写真がずらりと並べられ、必要があるものは幼菌や傘の裏、断面などもわかるようになっている。また、そのすき間をう埋め尽くすようにキノコの生態写真や豆知識コラムが。かなりの情報量だ。


分類にはけっこうこだわって作ってある。最新の分類は複雑で、多少勉強した大人でも説明が難しいが、それでもできるかぎりかみ砕いて説明しようとする工夫が見てとれる。

なお、各キノコの解説は最低限なので、自分のような観察屋さんが実用で使うにはさすがに物足りない。当たり前か(^-^;
きのこ初心者が最初の一冊として使う分にはじゅうぶんに役立ってくれるだろう。観賞用とし眺めるだけでも満足できる仕上がりだしね。

ただ、子どもが使うにはいささか情報過多な気がしなくもない。まあ今どきの子供は情報処理能力が高そうだし、自分の気に入ったとこだけ見ればいいんだから、どうにでもなるか。

しろつるたけ

2019-09-23 00:53:32 | キノコ
おっと?破壊天使様か?と一瞬目を凝らすが、すぐに疑いが晴れる。柄にツバがないからシロツルタケのようだ。ごくごく普通種であるツルタケの白色変種という扱い。ツルタケより数がずっと少なくてなかなか見つからないんだけど、この日はツルタケ皆無なのにこのお方だけ。変なところに生えてるもんだな?

すたんぷいぐち

2019-09-19 22:58:19 | キノコ
なんじゃこりゃ(笑)

山道に一本だけ変な形のイグチが生えていた。
私も今までそれなりに場数を踏んでいるので、変な形のキノコにも見慣れているはずだったが、このカタチは・・・初めてだ。おもしろすぎる。

まるで誰かが定規を使って整形でもしたかのように管孔の面が角ばっていて、下面は真ったいら。逆さにすると美しい台形になる。プリンの型で型抜きしたみたいだ。


さてこのイグチ、よくよく調べてみると、私が初めて見るイグチである。それどころか手持ちの図鑑にも全く載っていない。おもしろいので少し詳しく調べてみた。

傘の直径は約10センチ。傘は暗褐色でフェルト状、傘のふちで多少ひび割れる。ヒノキ混じりの広葉樹林の地上にて。


柄は上部が黄色でそのすぐ下から紫褐色を帯びる。最上部を除くほぼ全面にこげ茶色の細粒点が広がる。


肉は白色、管孔は黄色。ともに弱い青変性あり。ただし傘の表皮のすぐ下や柄の下部はやや赤く変色するようだ。管孔は柄に対して直生、孔はかなり細かい。特別な味やにおいは無く、肉質はやわらかい。


このイグチの所属するグループを予測してみる。
一見するとヤマイグチの仲間の柄に似ているが、管孔が黄色で青変性を持つヤマイグチというのはほとんど思い当たらないので除外。

消去法でイグチ属かな、とも思うが、柄にこんな感じの細粒点を持つものは、このグループになかなか見当たらない。アワタケ系にしては管孔が細かすぎるしなぁ。

意外に近いのがキクバナイグチ属アヤメイグチ系のキノコ。柄や傘、管孔、肉の青変性などをそれぞれ見ても、ありうる特徴かな、と。
ただ、いかんせん、このグループとしてはキノコが大きすぎるか・・・。


試しに茹でてみると、とろんとろんのフニャフニャになってしまった。これはなかなか珍しい。ヤマイグチは茹でるとこんな風になったっけなぁ。
けっきょくおおまかなグループすら見当がつかず。顕微鏡案件ですわ。


さてさて、このキノコが標準的にこの形なのか、それともたまたまなのか、たった一本しか生えてなかったのでわからない。でもこの形の記憶は強烈なので、それをとっかかりにして覚えておこう。

ともかく仮の名前をつけておく。
マドレーヌやカステラのような洋菓子の印象を受けるが、この形のインパクトを伝えるのには少し足りない。
そう、この形は・・・人工的な造形!あれだ!スタンプ!よく記念館とか駅とかに置いてあるヤツ!ペッタンコペッタンコ



とりあえず『スタンプイグチ』のデタラメ仮称を与える。



ちちたけ

2019-09-18 01:11:11 | キノコ
チチタケ。栃木県民が大好き。なぜそうなのかは全くのナゾ。

日本人がマツタケを好きだったり、フランス人がアミガサタケを好きだったりするのはまだ解るとして、栃木というごく限られた地域で特定のキノコが好かれるというのはどういうことだろうか。小さい頃からの刷り込み?おふくろの味へのノスタルジー??

どうも最近、『食事の嗜好は遺伝によって伝えられる』という研究成果が海外でちらほらとあがっているらしく、もしかしたらその一例なのかも……


ちなみに、料理するためにはチチタケの調理セオリーというものがあって、これを守らないとぜんぜんおいしくないそうな。
そのセオリーを守って作られてきた郷土料理の「ちだけそば」。自分で作ってでも食ってみたいが、残念なことに、三重じゃ食うほど採れないのよね。

てぃらみすてんぐたけ

2019-09-14 21:06:13 | キノコ
その粉がココアパウダーを連想させることから、つけられた名前はティラミステングタケ。
あくまでも非公式の仮名称だから、そういう名前で図鑑に載っているわけではないけれど、なかなかのハマり命名。
もうひとつマクツバコナカブリテングタケって言う、いかにもそれらしい名前があるんだけど、キノコの仲間うちではほぼティラミスで通っている。なしくずし的に正式登録されんやろか。

姿はコナカブリテングタケというキノコに似ている。ただ、こちらの傘に乗っている粉は、より粉っぽい。さらに白いわたわたが傘の周囲をフリル状に飾っている。


柄も傘のふちと同じような白いわたわたに覆われていて、さらに、薄すぎていささか心もとなさすぎる白いツバがついている。ちなみに、足元にツボに当たるものは見当たらない。

この写真のは山口県のものだが、東海地方でも珍しくはない。西日本に広く分布するようだ。

かえんたけ

2019-09-13 01:02:00 | キノコ
来たー!カエンタケ!!もう君らには会えん思うとったよ。

単純にフィールドに繰り出す回数が減ったからかもしれんけど、最近ナラ枯れに出くわす数が減ったように思う。カシノナガキクイムシに食い入られても枯れない木が多く、わりと耐えてる感じ。被害が一巡したのかなぁ。
で、つまるところ、カエンタケに出会う可能性も大幅に減っていたわけで。もっとこう、燃え盛るようなヤツの写真が撮りたいなぁと常々思ってたんだけど、半ばあきらめていた。

今回出会ったのは、燃え盛るのには程遠いチョロ火だけど、それでもまだまだ機会はあるということなのね。嬉しかった。


言わずと知れた猛毒キノコのカエンタケは、触るのもNGというアンタッチャブルである。が、素手で触っても何も起こらないので、実際のところはよくわからない。カエンタケの個体差、人の体質による?
ただ「顔を近づけたら顔の皮膚がひりついた」という証言をちらほらと聞くので、油断はならない。

ナラ枯れ病菌との関連が疑われているが、まったく関係のない場所(朽ち木がない)に発生した例もあるらしいので、その生態には謎が多い。


ふつう、ナラ枯れ病で枯れた木の根元に生える。木の分解が早く、同じ場所にカエンタケが生える期間もそう長くはない(2年くらい?)

おおしろからかさたけ

2019-09-09 23:21:19 | キノコ
職場の敷地に白いキノコが発生!ヒダがちょっとだけ緑ぃ!オオシロカラカサタケの出番だ!!

有機物の豊富な場所に生えてくる夏のキノコ。今では街なかに生えるキノコとしては定番中の定番だ。もともと亜熱帯のキノコだったのが、日本で一気に広がり、今では関東地方より西の地域にごく普通にみられる。
一説に地球温暖化の影響と言われているが、いくらなんでも広がるのが早すぎる。もちろん温暖化のおかげで生存が容易になった面もあるが、帰化植物の多くがそうであるように、人為的な移送によって広がったのが最初だったんじゃないかと個人的に思っている。

特にオオシロカラカサタケの好む枯草や腐葉土は集めて積んでおくだけで発酵熱を出すので、冬でもあったかいんだよね。さらに、発酵したあとの堆肥は圃場にばらまかれたり、あるいは商品として輸送されることも多いから、分布を広げるのに好都合だったんじゃないかと考えられるんだけど、どうだろう。

ちなみに激しい中毒を起こす胃腸系の毒キノコで、最近は毎年のように中毒が発生している。でも心配ご無用、キノコはヘビと違って噛みつくわけじゃなし、食わなきゃ安全だから、だいじょうぶ。


やしゃいぐち

2019-09-09 00:40:59 | キノコ
この日、妙に多かったのがヤシャイグチ。ぽつぽつと一本ずつ、このイグチらしい奥ゆかしい生え方で、でもそれが至る所で見られた。

いつもならキノコ探しをしてて、たまに見つける感じ、一日キノコ探しをしてて一本、みたいな感じで生えてることが多いのに、この日のように何十本と見るのは初めてだ。

特徴的な柄の網目模様、すこし尖った傘、ピンク色っぽい管孔、傘のふちが少し垂れ下がるなど、なかなかオシャレで女子力が高い。でもつけられた名前は『夜叉(鬼のこと)』っていう……なんだか切ない。

イグチとしてはややマイナーなグループに属していて、かつてはオニイグチ科に含まれていた。もうなくなっちゃったけどね。

ばらいろあみあしいぐち近縁種

2019-09-07 01:32:48 | キノコ
そろそろ初秋。秋の走り、というより夏の残党がそろそろ出てるんじゃないかな~と、久しぶりにキノコ探し。

じめじめと蒸し暑い空気はまるで7月の梅雨がぶり返したよう。山に入ると数は多くないながらもぽつぽつとキノコが出始めていた。
特に目立つのはイグチ類。テングタケ類はちょびっと、そういえばベニタケ類は皆無に近かったな・・・

そんな中で、見たことのないイグチを発見!
傘が白、柄が鮮やかな赤!この配色は!まるで亜高山の猛毒イグチ・バライロウラベニイロガワリ!

いや、でもここ亜高山じゃないしなあ。とにかく見たことない種類なので、調べることにした。


まだ若い菌だが傘の直径は5センチほど。イグチとしては中型だろう。こころもち褐色がかった灰色でフェルト状、表面はこまかくつぶつぶと凸が見られ、見た感じごつごつとした表面。傘のふちは少し巻き込み、こすれた部分はゆっくりと紫褐色に変色するようだ。
柄の地色は頂部が黄色、上部から下部にかけては紅色、ほぼ全面に赤いこまかな網目模様がある。
管孔は直生、淡黄色、微細で、傷つけてもまったく変色しない。
肉も淡黄色、緻密でこちらも管孔と同様、変色しない。苦味など、特別な味はないが、においは特徴的で、なにかしら焦げたような強い臭気がある。

見た目では『北陸のきのこ図鑑』に掲載されている「バライロアミアシイグチ」に近いが、青変性がまったくない点がはっきり異なる。
ネット上で調べてみると、よく似たキノコがいくつかヒットした。

『今日もきのこ 観察日記』
『oso的キノコ写真図鑑』
『キノコと休日』
『きのこ なら』

多少青変性があるみたいだけど、これも同じだろうか
『吉敷川だより』


ゆでて味見をしてみた。コリコリとした歯ごたえと旨みの強さが一級品だが、いかんせん火薬が焦げたようなにおいが鼻につき、さらに食べたあと喉に不快ないがらっぽさが残る。毒の有無はともかくとして、食用不適ということで問題なさそうである。