けろっぴぃの日記

最近、政治のことをはじめとして目を覆いたくなるような現状が多々あります。小さな力ですが、意見を発信しようと思います。

勝負は72時間後ではない!

2015-01-22 23:58:07 | 政治
最近では、イスラム国による日本人人質の殺害予告のニュースが大変注目を集めている。

まず当初、人質が二人と聞いたとき、湯川遥菜氏についてはすぐ思いついたが、一体もう一人は誰なのだろうと思った。その後、そのもう一人が後藤健二氏と聞いて絶句した。彼は多くのテレビにも出演していた中東などの紛争を熟知したジャーナリストで、様々なリスクを考慮して思慮深い行動をしていたはずである。様々な仲介者などを探し、ある程度の身の安全を確保して取材のためにイスラム国にアクセスしたのだろう。また、途中まで同行したガイドからの要請ではあるが、別れ際のビデオ映像でこの様な事態をも予測した覚悟の映像も残されている。このビデオを求めたガイドはシリアへの潜入の危険を強調し、自らは同行を拒否すると共に後藤氏にも思いとどまる様に説得したが、別のガイドを探して後藤氏はシリアに行くことになった。報道ステーションによれば、さらにその先に頼った3人目のガイドがイスラム国の兵士だったようで、そこでイスラム国に拘束されたらしい。ここから先の情報は若干錯綜しているが、後藤氏からは最初のガイドに「(別の)ガイドに騙されてイスラム国に拘束された」と連絡し、その後に連絡が取れなくなったようだ。この状況の詳細は不明だが、その拘束された旨の連絡を入れることができたことが驚きである。湯川遥菜氏が捕まった時の状況は身ぐるみはがれてボコボコにされた感があり、とても連絡を入れれる余裕があるとは思えない。湯川氏は銃を携帯していたり軍事コンサルタントを目指していたり、日本人からしても怪しい存在ではあり、完全にスパイ(と言うよりも敵対勢力側の人間)と誤解されていたので下手に仲間に連絡をされては困るという背景もあるのだろう。しかし後藤氏の場合には、拉致した相手も後藤氏の素性をある程度知った上で、お金のなる木(身代金のネタ)としてそれなりに丁重に扱っていた可能性が高い。

ちなみに、私の好きな「ぼやきくっくり」さんのページでは、青山繁治氏の解説の紹介がされている。

ぼやきくっくり2015年1月21日「1/21放送 関西テレビ『アンカー』青山繁晴の“ニュースDEズバリ”

ニュースなどでは今回の事件は安倍総理の中東歴訪のタイミングで降って湧いた様な事件の扱いだが、実際には昨年11月の段階から後藤氏の家族の元には身代金の要求があり、首相官邸でも中東歴訪の最中にぶつけてこの様な要求がぶつけられる可能性をシミュレーションしていたという。それを意識して、このタイミングでの中東歴訪を見送る意見もあったそうだが、テロ組織には如何なる要求にも屈しないとの宣言の意味も込めて、敢えて予定通りに振る舞ったようである。そして、青山氏のご指摘の様に、安倍総理がテロ組織に身代金を払う可能性は小さい。それは、身代金を払うと「日本は身代金を払う国」との評判が世界中に広まり、イスラム国に限らず色々なところで身代金要求をされるリスクが高まるからである。目先の二人の命と、その先の何百人もの命とを天秤にかけるような判断である。この辺は下記の記事にも記されている。

On Off and Beyond(渡辺千賀)2015年1月20日「誘拐される→身代金払う→もっと誘拐される(New York Times記事要約)

これは半年ほど前にニューヨークタイムズに記載された記事を渡辺千賀氏が紹介したものだが、フランス、スイス、スペイン、オーストリアなどの国は身代金を払い、アメリカ、イギリスなどは払わないという。先にも説明した通り、明らかに身代金の支払いは次の誘拐を誘発する原因になるから、長期的な視点では払わないのが正解であるということである。

ちなみに、現在の相場では、身代金額の平均は一人当たり10億円だという。また、身代金を払う国にしても、身代金の支払い理由が「テロに屈して止む無く・・・」という名目は常識的にあり得ず、したがって実際には民間企業を通じて支払われたり、途上国支援金名目であったりするという。先の青山氏の解説に話を戻せば、イスラム国側の内部事情として、原油価格の暴落が石油に依存するイスラム国にとっても致命的で、身代金は今まで以上に重要な資金源になっているという。だから、かなり本気で身代金を得ることを考えているのではないかと予想される。

ところで、この身代金の額は2億ドル(約240億円)だが、どうもアラブ諸国での身代金誘拐では、最初に吹っかけて徐々にディスカウントするのは当たり前なようで、本気でこの金額を要求しているかは怪しい。一方で、お金が無くて困っているのは本当の様で、日本政府が欧米の味方であるかどうかよりも、取りあえずお金を払って欲しいというのが本音の様である。その意味では、イスラム国側も日本政府とのパイプ役を求めているのかも知れない。

そんな最中、下記の2件の記事の様に「我こそはパイプ役」と名乗り出るものが出てきている。

Blogos 2015年1月22日「【全文】「警察の捜査が、湯川さん後藤さんの危機的状況を引き起こした」〜ジャーナリスト・常岡浩介氏が会見
Blogos 2015年1月22日「【全文】「72時間は短すぎる。時間をもう少しいただきたい」〜イスラーム法学者・中田考氏がイスラム国の友人たちに呼びかけ

この二人の共通点は、先日の26歳の北大学生がイスラーム国で戦闘員になるために渡航を試みたとして、私戦予備・陰謀事件として阻止された案件で、その関係者として警視庁公安部によりマークされている人物である。二人とも、この事件以降、様々な活動の身動きが取れなくなったとして愚痴をこぼしているが、特に常岡浩介氏に関しては、日本政府が邪魔をしなければ湯川氏の解放も夢ではなかったとして、日本政府との信頼関係は崩壊していると語っている。彼らは口をそろえて、イスラム国とのパイプは自分たちを置いて他にはないとしており、仮に日本政府が彼らにお墨付きを与えたとしても、内々にイスラム国にアクセスしてもイスラム国側に「本当に日本政府側の交渉の窓口なのか?」と信じて貰えないので、何とかオフィシャルにお墨付きの公言をして欲しいということを期待している様に見える。

ここで話を少し戻せば、先のニューヨークタイムズの記事の紹介でもあったが、日本政府は身代金の支払いを前提とする交渉は全くするつもりがない。アメリカに至っては、家族の元に身代金要求があった際にこれをFBIに相談した際に、FBIはアドバイスは返してくれたが犯人側との交渉に関しては完全に放棄し、家族で勝手にやってくれ・・・という態度だったらしい。日本政府はここまでではないが、日本政府の立場を説明し、「決して、イスラム同胞にとっては日本の援助は悪い話ではない」と説得するのが基本路線である。したがって、仲介役に関してもこの様な説得を行える人が重要な訳で、上述の二人の様に日本政府に懐疑的な人物はあまり意味はなく、中東の何処かの部族の長や宗教指導者などがメインターゲとの様である。この辺に関しては、各国政府の協力の元、それなりのコネクションを活用しているようだ。

最後に、身代金について若干私の理解を書いておく。まず、後藤氏は過去にTBSの「ひるおび」に出演した際に、ジャーナリストの身代金に関する保険の話題に言及している。その保険は掛け金が1日10万円程度のものであるが、後藤氏は危険がある時にはこの保険に加入し、イザと言う場合に備えていたという。最初に後藤氏の家族に入った連絡では要求額が10億円で、先のニューヨークタイムズの記事の相場と一致している。したがって、これだけであれば身代金を支払って、早期に解放されていた可能性はあったはずである。しかし、あるところで身代金が約20億円の2倍に跳ね上がった。報道ステーションでは、原油価格の暴落などで資金源が不足しての身代金の釣り上げだと解説していたが、私の理解では湯川氏とのセットで2名分の金額に跳ね上がったのではないかと予想している。つまり、身代金の支払いの可能性の湯川氏の活用価値がないので、セット販売をしようとしたのだと思う。しかし、これだと身代金の保険会社が2名分を払ったりはしないので、交渉がとん挫したのではないかと思う。また、後藤氏も湯川氏を残して1名だけ先に10億の身代金で解放されることを望まなかったのかも知れない。結局、湯川氏の10億円分は日本政府に請求するしかなくなり、結局、今回の様な事態になったのではないだろうか?

この場合、少なくとも保険適用で10億円の価値のある後藤氏を殺すのは彼らにとっても損失なので、殺すことなく長期戦になる可能性は高い。菅官房長官はデッドラインを明日の午後2時50分頃と答えたそうだが、常識的にデッドラインを明確に切るのは定石的には有り得ない。しかし、最初から長期戦を見込むなら、ズルズルとデッドラインが後ろ倒しになるのを逆に回避する為、あっさりとデッドラインを越えてしまい、相手に長期戦を覚悟させるのも手のひとつである。裏目に出るリスクはあるので無謀な賭けではあるが、日本政府の立場としては身代金支払いに応じる短期戦は選択肢にないので、妥当な判断の様にも思える。

その後の展開次第ではあるが、後藤氏は期せずしてイスラム国の内情を長期間観察する機会を得た。何らかの形で解放されることになれば、色々な意味で有益な情報が得られる可能性は高いので、日本政府は粘り強く長期戦の覚悟で交渉に当たって欲しい。

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