けろっぴぃの日記

最近、政治のことをはじめとして目を覆いたくなるような現状が多々あります。小さな力ですが、意見を発信しようと思います。

選挙制度改革の政策議論の前にするべきこと

2013-03-31 23:34:34 | 政治
半月ほど前のブログ「一票の格差とは何か?」にて、選挙制度改革についてのコメントを書いた。その後、高裁レベルでの選挙無効の判決が2件出て、いよいよ選挙制度改革が待ったなしの状態になった。

言うまでもないが、この選挙制度改革は現在、暗礁に乗り上げた状態である。各党の思惑が異なり、報道の中での有識者の意見も人によっててんで異なっている。抜本的な改革を謳う中では、憲法改正を必要とする案もあるくらいだから、この手の議論が誰もが納得がいく形で落ち着く可能性は限りなく小さい。私は、先月のブログ「そろそろ、選挙制度についても考えてみたい」で個人的な考えを示したが、これにしても多分賛同して下さる方は少ないだろう。そもそも論的な意味での「何をもって最良の制度」と考えるかの基準についてのコンセンサスが得られない状況だから、そこに個人的な利害が絡むと収拾がつかない。第3者委員会での検討についても、菅官房長官などは「政治が責任もって決めるべき」と言っており、それが最良のゴールへの近道だとは思えないが、理想的には政治家が利害を捨てて正義を実現するのは理想だから、それにも一理あるとは納得するところである。

だから、民主党にしても日本維新の会、みんなの党にしても、自民党の案を批判するのであれば、せめてこの3党での合意できる対案を自民党に提示するのが筋である。一義的には責任政党である政権与党の責任ではあるが、野党第1党である民主党は昨年11月の時点で0増5減案について先行して成立させることを現与党と合意している以上、それと異なる落としどころを強硬に主張するのであれば、せめて民主党、日本維新の会、みんなの党の共同提案をまとめ上げる義務がある。これが出来なければ説得力は限りなく乏しい。

ところで、この様に考えながら国会議員はまず最初に何をすれば良いのだろうか?先走って抜本改革を叫ぶのは勝手だが、具体的な法案をいきなり議論してもそれは遠回りである。まず先にすべきことは、議論のための前提条件、すなわち制度の優劣を判断する評価基準作りを少なくとも自民、公明、民主、維新、みんなの党の5党でまとめ上げるべきである。

そこで、まず何よりも最初に、最優先課題は何かという点についての合意を目指さなければならない。広島高裁判決などの言う通り、昨年12月の選挙が無効であるとすると、そこで選ばれた国会議員の決めた法律に憲法上の妥当性が伴わないという解釈は当然のことながら起こりうる。であれば、格差是正のための法案を制定しても、それらは全て憲法上は無効となるかも知れない。何処まで行ってもこの状況は解消できないから、結局、何も解決できずに無限ループで空転する可能性が伴う。一部判決では無効を猶予する期間を設定しているが、これにしても時間的な余裕は余りないから、まずは最低限の要求条件をクリアすることを最優先とするのか、それともいきなり100点満点の制度を目指すことを最優先とするのか、この考え方をその根拠と共に示して議論するのが筋であろう。これらの判決の最高裁判決が正確には何時ごろになるのかは私は知らないが、原則は審理迅速化の「原則100日ルール」があるので、参議院選の直前に最高裁で判決がある可能性が高い。結論から言えば、私は最高裁判決の前に最低限の要求条件をクリアするのが最優先だと考える。それは、その要求条件がクリアできていれば、最高裁が政治の不作為にペナルティを与える究極の無効判決を下す可能性を低く抑えられるかも知れないからである。実際、前回の衆院選の直前に0増5減法案は成立していたが、区割り法案が成立していないから結果的に裁判所は格差是正の努力を認めなかった。つまり、区割り法案の成立まで辿り着いて初めて裁判所は政治の決断を評価するというのであれば、最高裁判決までの100日以内にゴールにたどり着くには0増5減の区割り法案を先行して成立させるより他に選択肢はない。少なくとも格差が2.3倍時点では最高裁で無効判決とはなっていない事態を考慮すれば、2010年度の国勢調査データで2倍を下回る格差を実現するのは最低条件としては妥当である。もし仮にいきなり100点満点を目指すべきというのであれば、その根拠と成立の勝算を示してもらいたい。

さて、次なる重要な議論のための前提条件、ないしは評価基準とは何であるか?それは、「決められる政治を実現するための制度」なのか、それとも「限りなく国民の支持率に比例する議席の配分を実現する制度」なのか、これらの相反するふたつの基準からの選択である。もし、一生涯、野党に甘んじるつもりならば後者を選ぶこともあるだろう。しかし、いつの日か過半数の国民からの支持を受けて政権政党に登りつめようと考える人ならば、前者を前提とするのは当然である。であれば、少なくとも先の5党ではこの前提条件については合意ができるはずである。イタリアの選挙を見るまでもなく、多様な意見が多く存在する現代社会の中では、どの政党も似通った意見の政党と連立しても過半数に到達できない可能性が否定できない。仮に衆院で過半数を確保できても、タイミングを変えて行う参院でも同じ枠組みで過半数を取れるかは更に厳しい。あれほど世界経済を左右しかねない状況に置かれたイタリアで、国民が選んだ答えは「決められない政治」だった。それを議員一人一人がどう見るかをまずは問うてみるべきである。

そしてもうひとつ、0増5減の区割り法案を先行して成立させるという前提の下で、その後の100点満点の制度を目指す議論の仕方をどの様に考えるべきかも決めるべきだろう。具体的には、第3者委員会に委ねるのか、国会議員が自分たちで決めるのか?菅官房長官の言う「政治が責任をもって決めるべき」というのは理想論であるが、辿り着く結論が国民が求める答えとなる可能性は低いから、より短期間に理にかなった結論を得たいなら、第3者委員会に委ねるのが合理的である。多分、半年から1年を目途に答申を出させ、それをもとに政府案を作成し、与野党で協議を行えば1年半後ぐらいにはある程度の形にもって行ける可能性が見えて来る。「政治が責任をもって決める」場合、7月の参院選で捻じれが解消できれば与党の強硬採決で法案を成立させることは可能であろう。しかし、ことが選挙制度であるから、緊急避難でない限りその様な決着のつけ方は好ましくない。少なくとも民主党政権では何も議論が進まなかったことからも、1年半後に大きなゲインを得ている可能性は限りなく低い。これが私が第3者委員会に委ねるべきと考える根拠である。どうしても国会で決めるというのであれば、そのためのマイルストーンを合わせて示して頂きたい。

さて、ここまで書いてきて最後にひとつだけ忘れていることがある。昨年の野田前総理と安倍総理との党首討論では、参院選前に定数削減を実現するという約束をしている。この約束をどう考えるかである。誰もが認めるように、選挙制度改革は与党の強行採決は好ましくはない。参院選前に定数削減を伴う選挙制度改革に決着をつけるのであれば、まず確実に衆院での2/3ルールの利用は避けられないが、これは禁じ手であり現実的には選択肢にはない。しかし、先日のブログにも書いたように、この定数削減に相当する国会議員の歳費削減は選挙制度とは関係ないから、選挙制度改革を実現してその制度を適用した総選挙までの時限立法として強行採決をしたとしても、それは憲政の常道に反する禁じ手とはならない。約束の定数削減ではないが、実現可能な選択肢の中からの最大限の努力としては国民から支持されるのではないかと私は信じる。

だから、最終的な結論として、0増5減の区割り法案を先行(強硬?)採決、国会議員の歳費削減の時限立法、7月の参院選に合わせた衆参ダブル選挙の流れが常道なのだと私は考える。多分、現在の安倍政権を見れば衆参ダブル選挙が政権を揺るがす可能性は低い。TPP問題で調子の良いことを言っていた議員は落選するかも知れないが、堅実な議員は確実に這い上がって来るだろう。そして、最高裁判決の前に衆院解散を宣言すれば、まず確実に総選挙後の国会の正当性は担保できるだろう。違憲無効判決の時限爆弾を解消する意味でも、上述の流れが最良の方法だと私は信じる。如何だろうか?

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1 コメント

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史上最強の内閣 (駿太郎)
2013-04-01 00:06:29
けろっぴいさんの案が現実的でしょうね。
ところで、巷の本屋でベストセラーになっている本は御存知ですか?
現実離れした荒唐無稽なおとぎ話ですが、日本では珍しい政治に対する風刺とパロディが効いていて右翼でも左翼でもない普通の国民の考え方が分かります。下記の書評を是非ご覧下さい。面白いですよ。
http://i.bookmeter.com/b/4093862907
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