けろっぴぃの日記

最近、政治のことをはじめとして目を覆いたくなるような現状が多々あります。小さな力ですが、意見を発信しようと思います。

AIJ破綻問題の背後の深い闇

2012-03-19 22:25:29 | 政治
先週の土曜日の朝、日テレの「ウェークアップ!ぷらす」にて興味深い話題を取り上げていた。ベースとなる話題はAIJの破綻問題であるが、その背景こそが問題であるという内容だった。竹中平蔵さんと片山善博さんの、ふたりの総務大臣経験者が出演していた。

もちろん、AIJの問題は詐欺そのものであるから、その手口や消えたお金の流れは当然追及すべきであるし、あれだけ被害が拡大した背景の一つには、厚労省を中心とした天下りネットワークが関係した話題などもマスコミを賑わせている。しかし、それ以上に深刻な問題があるということに気が付かせられた。私はこの関連の話は十分に理解できていない部分もあるので、間違っているところもあるかも知れないが、自分なりにポイントを整理してまとめてみた。

今回ここで注目するのは、厚生年金基金の運用実績である。多くの企業においては、目標とする運用利回りを定め、その利回りを前提として退職者に対して年金を支払っている状況である。しかし、信じ難いことであるがこの目標運用利回りをバブルの時代の負の遺産として5%以上に設定したままの企業が多いという。当然ながら運用は赤字が続き、本来であればこの状況を早期に改善しなければならないが、中小企業にとっては中々これをリセットできないでいるという。その際のキーワードが、「厚生年金の代行返上」である。

ご存知の方にとっては常識なのだろうが、順番に説明すると以下の通りである。まず、「厚生年金基金とは何ぞや?」というところから入るのであるが、Wikipediaを引くと「厚生年金保険法を根拠法とする、企業年金の一種の給付を行う基金とする組織の認可法人」とある。つまり、企業毎の年金である企業年金を運用し給付することが基本であるが、しかし、これ以外にも本来は国が行なうべき厚生年金の一部を運用する業務を代行することが可能であった。「バブル」の時代であれば、国に厚生年金として収めるべきお金を手元に残し、それを運用すれば厚生年金の想定運用利回りを超える利回りにより収益を得ることができた。だから、この「代行」業務は非常にうま味のある業務であった。しかし、バブルが崩壊し、当初の利回りを大幅に下回る状況が長く続いた。始めのうちは、いつか景気が回復してバブルが再来すれば、その赤字は埋められると思ったのであろうが、結果は周知の通り間逆となった。だから、当初の高い利率での運用を宿命付けられる「代行」業務は次第に企業では重荷になり、既に膨大な赤字となっていた年金の基金を補填してでも「代行返上」した方が企業としてもメリットが大きい。私の会社でも何年か前に「代行返上」に関連して承認を求められたことを覚えている。その当時は、「代行返上」にどういうメリットがあるのかに興味がなかったが、今思えば所謂「損切り」を早期に行なうことで傷口を最小に止める狙いがある。だから、赤字を補填できる体力のある大企業の多くは2002年から2004年にかけて一気に「代行返上」を行なった。

しかし、厚生年金基金数の推移を見ると、同業の中小企業が設立した厚生年金基金は一向に減る気配はない。これは別にその方が得だから「代行返上」を行なわないのではなく、「代行返上」するためには、それまで代行を行なって管理していた年金を国に返上する必要があるからだ。このお金が不足した場合、現金(厳密には株の現物支給で行なっても良い)で赤字を補填しなければ「代行返上」ができないことになる。当然ながら、業績の苦しい中小企業にその様なお金を捻出する余力は残されておらず、「代行」業務を嫌々ながらも続けざるを得なかった。もし、責任感のある良心的な方が企業の年金管理担当になれば、その赤字状況を白日のもとにさらし、年金給付額の切り下げなどの抜本的な改革を進言し、破綻する前に早期に根本的な改革を図ることを試みるであろう。しかし、どこの世界でも責任が問われるのは「問題を起こした人」ではなく、「問題が発覚したときの責任者」であることが常識化している。であれば、仮に自分達の首を絞めることになっても、積み上がった赤字に目を瞑り、自転車操業を継続して行けるところまで行くしかないと考えてしまう。

そんな中で目の前に「AIJ」の悪魔の誘惑が待ち受けていた訳である。

厚労省からの天下り官僚らは、多分、天下った会社の年金が破綻しても殆ど痛くも痒くもない人達である。天下った先には、そう長くは所属しない。とりあえず、自分達がその企業に所属している間だけ辻褄を合わせることができればそれでOKである。何度目かの退職金を貰ってしまえば「勝ち逃げ」なのだから、自分の経歴にケチがつくような根本的な解決をする訳がない。

AIJの謳い文句は「リーマンショックが起こった2008年でさえ利回り7%!勝率100%、過去10年間でマイナス運用だった年度は無い。累積収益率は、247%!」だったという。冷静になれば、世界的な不景気の中でそんな旨い話がある訳がないが、その旨い話に乗っかると得をする人は多かったことになる。自転車操業の現状を隠すためには、その旨い話に飛び付けば見かけ上は解決するのである。騙す側と騙される側の利益が旨くマッチしたのである。

「たられば」の議論をしても意味はないが、もし仮に、早期に「代行返上」出来ていれば多くの中小企業がAIJに走らなくても済んだはずだ。もし仮に、年金業務の担当者が天下り官僚ではなく、その会社の生え抜きの社員ならば、自分達の年金が破綻するようなリスクには近づかなかっただろう。仮に手を出しても、リスクを分散するために、ハイリスクの運用のウエイトを減らしていたであろう。そしてもし仮に、AIJの業務を管理監督する人達が、「王様は裸だ!」と叫んだ時に自分達の元上司が困るのではと思わなければ、もっと早く「王様は裸だ!」と叫べたのかも知れない。

結局、この「たられば」は実現せず、2000億もの損失を出してしまった。一義的な責任はAIJに、その次は各企業にも責任があることは明らかなのだが、本当はもう少し深刻なのである。そして、今回もその責任は誰も取らずに終わるのだろう。

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