けろっぴぃの日記

最近、政治のことをはじめとして目を覆いたくなるような現状が多々あります。小さな力ですが、意見を発信しようと思います。

第1次世界大戦の英独を引き合いに出すと何が問題か?

2014-01-25 00:00:57 | 政治
昨日のダボス会議の安倍総理の基調演説の後、英ファイナンシャル・タイムス紙の質問に答える形で現在の日本と中国の間の関係を第1次世界大戦当時のイギリスとドイツの関係に例えたことが話題になっている。

様々な新聞社から色々な記事があり、例えば下記の様なものがある。

ウォール・ストリート・ジャーナル2014年1月23日「安倍首相、日中関係を第1次大戦前の英独関係にたとえる
産経新聞2014年1月23日「『事実を書いて欲しい』 首相見解を『日中衝突』とみる英メディア報道に官房長官が反論
日本経済新聞2014年1月23日「日中関係『第1次大戦前の英独』首相発言がダボスで波紋
ハンギョレ新聞2014年1月23日「"第1次大戦直前の英-独と類似" 安倍、中-日戦争の可能性に言及 論難

基本的に、今回の記事は英ファイナンシャル・タイムス紙の記事を引用する形で世界に配信された。ウォール・ストリート・ジャーナルの記事では元々の質問が何であったのかすら書かれておらず、安倍総理があたかも自発的且つ挑発的に発言したかのように「日中関係について触れ」という言葉で解説されている。しかし、質問の内容は3つ目の日経新聞にも書かれているように、「日中が武力衝突に発展する可能性はないのか」であり、これに対して第1次世界大戦の当時の英独を引き合いに出し、「質問のようなことが起きると、日中双方に大きな損失であるのみならず、世界にとって大きな損失になる」と強調したという。実は、ウォール・ストリート・ジャーナルの中にはダボス会議の前に「対中領土問題めぐる安倍首相の言動、日中貿易が抑止力に」という記事も書かれており、日中の緊張関係にブレーキをかけるのは日中の経済依存度の高さであるともしていたが、安倍総理の発言は「第1次世界大戦では、貿易的に相互依存度が高かった英独すら戦争に突入した」ことを示唆したわけで、当然ながらその意図が重要なのである。記憶が定かではないが、どこかの外国の新聞記事で、ほんのごく最近、日本と中国の関係を第1次世界大戦当時のイギリスとドイツの関係に似ていると指摘した記事があったが、ひょっとしたら安倍総理はその様な捉え方があることを把握した上で、「そんな単純ではない。努力が必要だ。具体的な効果を伴うアクションを今起こさないといけない訳で、戦争が起きてから後悔しても遅い!」と言いたかったのかも知れない。具体的になんと言ったかは知らないが、途中に恣意的なフィルターが入ると、ウォール・ストリート・ジャーナルの記事が「英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)は『首相が武力衝突は論外だと明言しなかった』と報道」と紹介している通り、捻じ曲げられて報道されてしまうのかも知れない。

しかし、それだけ責めるのであれば、いったい何処が問題なのだろうか?

単純に考えて、私にはここで首相が「戦争などありえない」と答えるのと、「戦争になれば、双方にとって損失だ」と答えるので大きな差があるとは思えない。問題となり得る発言は、「仮に戦争が起きたら、それは相手の責任だ!」というもので、挑発に対しては受けて立つと言えば売り言葉に買い言葉になるからアウトである。しかし、実際の安倍総理の発言はそうでないから、それの何処が問題なのかが私には理解できない。

これを受けて、最後の産経新聞の記事では菅官房長官が「事実を書いて欲しい」と世界に発信したことを報じている。その時、菅官房長官は「首相発言の全文を読み上げた上で、『第一次大戦のようなことにしてはならないという意味で言っている。首相の発言は全くおかしくない。事実をちゃんと書いてほしい』と反論した。」という。この「首相発言全文」の引用は重要で、報道機関は様々な国からのロビー活動の影響を受けて、情報を恣意的に加工して報道するわけで、今回の件はその刺激的な報道を裏取りせずに垂れ流す報道記者の怠慢の結果、恣意的な誤った情報が一人歩きしたものを打ち消すためには、事実の提示しか他に手は無い。

また、最後に紹介したハンギョレ新聞は、韓国の報道であるにもかかわらず、比較的抑えた報道をしている。ファイナンシャル・タイムスやBBCのように曲解して報道しようという勢力がいる中で、発言そのものは「不適切」であるとは指摘してこそはいるが、安倍総理はこの一連の記者とのやり取りの中で、「中-日の軍事当局間に軍事ホットラインが必要だという主張を繰り返した」と発言したことをちゃんと紹介している。この様に、危機管理メカニズムと軍当局間のコミュニケーション・チャンネル整備は安倍総理が従来から繰り返しているものであり、短絡的な「大丈夫!」などという発言では事態を解決には導かず、具体的な効果を伴うアクションの有無が重要なのだという安倍総理の姿勢を象徴的に示す情報を隠さずに紹介しているのは好感が持てる。

以前の橋下大阪市長の慰安婦発言の時もそうだが、日本も含め世界各国の報道機関の中には悪意を持って恣意的な報道を狙っている存在があることを認識し、無用な誹謗中傷を受けないようにする自己防衛は責任ある立ち場の人にとっては必要だ。しかし、その様な悪意を自己防衛だけで防ぐことは不可能で、守りに入りすぎれば逆に何も得るものもなくなってしまう。こちらにとってのゲインがない中で、相手は達磨さんが転んだ的に少しづつ少しづつゲインを重ねるので、小平の時代の尖閣諸島に対する日本と中国の立場が現在では大幅に変わっているような事態は、今後も引き続くことは間違いない。何処かで「No!」と言わねば、何処まで行っても無限の譲歩を引き出されてしまう。

そんな中では、今回の安倍総理の発言と菅官房長官の連係プレーは評価に値する。攻めの外交を志向するのであれば、覚悟を持って、政権全体でフォローしながら連携してことにあたらねばならない。安倍総理を菅官房長官がサポートし、菅官房長官を岸田外相や小野寺防衛相がサポートする。更に彼らを世界中の日本の外交官・各国の大使がサポートし、更に彼らを菅官房長官がサポートする。All Japanの体制で臨むしか手はなく、これまで天下り先の心配しかしてこなかった官僚が国家存亡の危機と捉えれば、かっての様なタフネゴシエータぶりを発揮できるのではないかと期待している。その証拠に、アメリカはTPP交渉での日本のタフネゴシエータぶりに相当頭を悩ませているはずである。

昨日のブログでは、本の僅かではあるがウォール・ストリート・ジャーナルの紙面を引き合いに、僅かな変化の兆しを紹介した。この様な変化は、地道な活動を続ければ、きっとイギリスでも見られるようになるだろう。だからこそ、最大瞬間風速の逆風を恐れずに、正しいと信じることを続けて欲しい。

これから1年間の頑張りの通信簿を、多分、来年のダボス会議で見ることが出来る。どうなっているかが見ものである。

←人気ブログランキング応援クリックよろしくお願いいます


最新の画像もっと見る

コメントを投稿